9人に1人が罹患する乳がん。その労働損失は約2300億円 ─ データで見る乳がん ─ 9人に1人が罹患する乳がん。その労働損失は約2300億円 ─ データで見る乳がん ─
増加傾向の乳がんは身近な病気に 増加傾向の乳がんは身近な病気に

 おそらく多くの人が耳にしたことがある「2人に1人はがんになる時代」という言葉。がん罹患数は増え続け、いまでは誰もがその可能性を抱えた身近な病気といえます。また、日本人女性が罹患するがんの中で一番多いのは乳がんというデータも。乳がんとは、乳房の乳腺組織にできるがん。かつては欧米に比べて少なかった日本人女性の乳がん罹患者数は、食生活や生活環境の変化などさまざまな理由から年々増加。現在では女性の9人に1人に罹患するリスクがあるといわれています。

 がんは長年にわたり日本人の死因の第1位。死亡者数も右肩上がりです。乳がんによって死亡する女性の数も年々増加傾向にあり、2023年の時点で年間1万5000人余りが乳がんで亡くなっています。

乳がん死亡数の推移(女性)

 年代別にみると、20代以下で乳がんになる女性は非常に少数ですが、40代から70代の間に多く発生し、30代後半以降から罹患者数が急増します。

 がんの多くは高齢になるほど発症リスクが高まるため、「自分にはあまり関係ない」と思いがちです。しかしながら、乳がんに関しては30代から罹患する可能性が高くなるため、仕事に育児にと慌ただしい毎日を送る世代の女性にとって決して他人事ではありません。実際に、身近で乳がんになった人の話を聞くことも多いのではないでしょうか。

年齢別 乳がん罹患者数の推移(女性)

 がんによる経済的損失も、無視できない社会的な課題です。2023年、国立がん研究センターと国立国際医療研究センターの研究チームは、2015年時点での国内のがん治療患者を対象としたがんによる直接医療費と死亡や罹患による労働損失を推計し、総経済的負担を算出したデータを発表しました。それによると、経済的損失は約2兆8597億円(男性:約1兆4946億円、女性:約1兆3651億円)で、経済的負担は男女間で大きな差がないことが分かっています。しかし、乳がんは働き盛りの年代での罹患が多いため、直接医療費だけでなく、労働損失が大きいことが特徴です。男性で労働損失が最も大きいのは肺がんであるのに対して、女性は乳がんが最も大きく、約2326億円にものぼります。

乳がんの正しい知識をアップデートすることが肝心 乳がんの正しい知識をアップデートすることが肝心

 仕事をしている人が、万が一、乳がんと診断されたときにも、まずは治療の方針を決めることが最優先となります。しかし同時に「現在の仕事はどうしたらいいのだろう」と不安に駆られる人も多いでしょう。実際に、それまでに築き上げてきたキャリアや、今後のキャリア設計を見直す必要に迫られたり、治療と仕事を両立できる環境を新たに整える必要が出てくる場合もあるでしょう。子育て中や介護中の人であれば、さらに不安に感じる要素が増えてくるはずです。

 しかし、日ごろから正しい知識をアップデートし、早期発見を心がけることで、万が一の場合にも冷静に対処でき、早い寛解(症状が軽減して安定し、おおむね元の生活に戻れる状態)を迎えられる可能性が高まります。そうすることで、仕事を含め、日常生活全般においてQOL(生活の質)の維持も可能になるでしょう。

乳がんの5年相対生存率は増加傾向。カギは早期発見 乳がんの5年相対生存率は増加傾向。カギは早期発見

 年々、罹患率と死亡率が増加する一方で、がんについて希望の持てるデータもあります。がんと診断された日から5年後に生存している人の割合を「5年相対生存率」と呼び、がん治療の進歩を評価する上で重要な指標の1つとされています。例えば、乳がんと診断を受けた女性の5年相対生存率の推移を見ると、下記の通り増加傾向にあります。また、乳がんの場合は、進行がゆっくりで10年経過して再発する場合もあることから、「10年相対生存率」も評価しますが、この10年相対生存率も増加傾向です。

5年相対生存率の推移 乳房(女性)

 そこから読み取れるのは、医学の進歩とともに、検診による早期発見の増加などにより、日本において乳がん患者の治療環境レベルと生存率は、着実に向上しているということです。可能な限り意識的に早期に発見を心がけ、適切な治療を行うことで命を守ることができるのです。ですから、「私にはまだまだ関係ない」という思い込みをなくして、今日から乳がんの正しい知識を身につけておきましょう。