5Gを代表する
5個のアプリケーション

代表的な5個の利用例から
5Gの新たな活用を想像する

 5G(第5世代移動通信システム)が普及する2020年代、インターネットの接続対象はますます広がる。モノのインターネット、いわゆるIoT(Internet of Things)の流れは加速するだろう。IoTの時代には、身の回りにセンサーが設置され、これまでデータ化されていなかったものが数値として見えるようになる。そのデータは意味を持つ情報として分析され、その分析結果をフィードバックすることで、サービスが有用なものへと改善されていく。しかも、このサイクルは極めて短時間で行われる。今後、それこそ数え切れないほどの新しいシステムが登場することが見込まれるが、ここでは代表的な5個の活用例を通じて、新しい活用方法を想像してみよう。

アプリ1
「観る」:スポーツ観戦

 2019年に開催される「ラグビーワールドカップ(W杯)」を皮切りに、「東京オリンピック・パラリンピック」「ワールドマスターズゲームズ」と、今後3年続けて国際的なスポーツイベントが日本で開催される。

 これまでも、スポーツイベントが開催されるごとに、新しいメディアや視聴方法が生まれてきた。今後も新しい視聴体験の登場が期待されるが、期待の一つはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)の活用だろう。

 VRについては、競技場外からの観戦が大きく変わる期待がある。VR技術は、通信時の遅延時間が極めて短い5Gと馴染みが良い。視聴者が希望する視点で競技を見ることができるなど、これまでにはない視聴体験が生まれるだろう。2002年のサッカーワールドカップ以降、遠隔地の競技場やイベントスペースなどで映像を「有料で」観ながら応援する「パブリックビューイング」という新しい観戦スタイルが広がり、定着した。今後はVR視聴を活用した、新しいビジネスが生まれることだろう。

 ARについては、競技場内の観戦の進化が期待できる。現在、テレビによるスポーツ中継には、CG(コンピューター・グラフィックス)が多用されている。例えば、水泳や陸上競技では世界記録ペースを実映像に重ねることで、応援に一段と熱が入る。ゴルフでは、ティーからの飛距離、ピンやグリーンまでの距離が分かり、どれだけ飛ばしたのか、どれだけの距離が残っているのかが一目瞭然になる。

 今後は、競技場にいてもこうした情報を見ることができる期待がある。表示デバイスについては、スマートフォン上かもしれないし、メガネタイプのデバイスかもしれないが、付加情報が得られることで競技場での「ワクワク感」は、一段と増すことになるだろう。

アプリ2
「診る」:オンライン診療

 オンライン診療は、医師の不足や偏在を解決する手段として長く期待がかかってきた用途である。5G時代には、通信だけでなく高精細映像やAIなど関連技術が一段と成熟し、使い勝手がさらに良くなる。病院内では画像通信を使った診断や医師間で画像を共有することによるオンライン診療は一般化しており、制度が整えば、医師と患者間でも広く使われる期待がある。

 実際、以前のオンライン診療は、医師が不在の「離島、へき地の場合」に限定された形で例外的に認められていたものの、2015年に厚生労働省が「離島、へき地はあくまで例示」と示した経緯があった。さらに2018年になるとオンライン診療が初めて保険診療化され、診療報酬が付くようになった。今後の規制緩和によって、オンライン診療の利用や市場は一気に広がる可能性がある。

 オンライン診療には、常に懐疑的な声がある。様々な疑念や心配に対して、技術の進歩が一つひとつ応えていくことで、オンライン診療の利用は広がっていくだろう。例えば、「患者の身体を診たり触ったり声を聞いたりといった行為を抜きに、正しい診断ができるのか」という心配の声は少なからずある。その一方で、最新のテレビ会議システムでは4K画像を送ることができるようになっている。4K画像では患者の肌の質感も分かることから、前述のような声は減る可能性がある。

 5G関連の展示会では、遠隔地からの手術も将来的な用途として紹介されている。市販済みの手術支援ロボットシステム「ダ・ヴィンチ」は、内視鏡とロボットアームで構成されており、医師はディスプレイの画像を見ながらロボットアームを制御することで手術を行っている。遠隔手術のイメージの一つは、この仕組みを遠隔地との間でやり取りするようなものだろう。5Gには、遠隔地とのやり取りにおいて遅延時間を短くすることへの期待がある。今後、遠隔地の振動や動きなどをユーザーに伝えることで触感フィードバックを得る「ハプティクス(触力覚)」技術も発達すれば、遠隔手術はより成熟したものとなるだろう。