専門記者が
5G序盤戦を振り返る

「5G中心」では見誤る
モバイルへの真の期待を探せ

 モバイル業界を長い間見てきた記者たちは、5G(第5世代移動通信システム)の登場をどう見ているのか。初期の端末の評価や今後期待するキラーアプリなど、同じ質問に対して2人の専門記者に回答してもらい、その内容を再構成した「バーチャル座談会」という形で、記者が見る5Gの現時点での姿を紹介する。

記者も驚く5Gへの
関心の高さ

 「5G」を冠したイベントや記者会見は、いずれも多くの参加者を集めています。過去の3Gや4Gと比べて、5Gへの関心の違いをご自身あるいは周囲の反応として感じる場面はありますか?


 記者A 関心の高さは、3Gや4Gのとき以上に感じています。経済系メディアやIT系メディアだけでなく幅広いメディアに注目されている印象があり、報道機関向け発表会などでも記者やカメラマンが多く、報道の量もこちらが驚くほどの多さです。


 記者B 私も、モバイル業界だけでなく、社会全体として5Gへの期待感は過剰と言えるほどに高まっていると感じています


 その違いの理由についてはどのようにお考えでしょうか?


 記者B スマートフォンが、ガジェット好きな人向けのおもちゃから国民的な必需品になりつつあり、「Society 5.0」のように、スマートフォンの普及を前提に社会全体をデジタル化していこうという風潮が追い風になっているのでしょう。


 さらに、日常的なスマートフォン利用に不満が多いことも理由としてあると思っています。通信事業者の料金プランはデータ容量に制限があるものが主流なので、動画の視聴やアプリのダウンロードはWi-Fiにつながるまで我慢する人も多いのではないでしょうか。スマートフォンユーザーが増えすぎて都心のラッシュ時には混雑でつながらないなど、理想とのギャップがまだまだ大きいのが現実です。


 このように多くの人が日常的にスマートフォンを使っているからこそ、5Gが描く未来像やそこから得られるであろう便益を「自分ごと」として理解する人が増えているというのが、3Gや4Gとの大きな違いではないでしょうか。


 記者A 私としては、産業界への波及効果が大きいことが一因ではないかと思います。さらに、主要先進国が国策としてプッシュしていることも、注目度が高くなっている理由の一つではないかと推察しています。


 通信の新規格ということで、自分自身ももちろん関心はあります。ただ、当初の実装方式として考えられているNSA(ノンスタンドアローン)に関しては、あくまで4Gの延長であり、実際には4Gも併用しなければならないので、一般的に語られているほどの劇的な変化はないのではないかと見ています。また、キラーコンテンツが現状では不在で、4Gの普及の立役者になったスマートフォンのような存在が本当に出てくるのかというところも、気にかかるところです。


 2020年の日本での本格サービス開始を前に、世界各地で5Gサービスが始まっています。やはり話題を集めるのは5G対応スマートフォンです。現時点で登場している5G対応スマートフォンについて、どのような感想をお持ちでしょうか?


 記者A 現時点での5G対応スマートフォンについては、あくまでハイエンドモデルのより上位版といった位置づけで、正直なところ、ユーザーの体感については大きく変わることはないと思います。端的に言えば、5Gの特徴を生かした端末ではないからです。また、価格も一般的なハイエンド機よりさらに高くなってしまうため、当初の利用は限定的になりそうです。


 一方で、韓国Samsung Electronicsの「Galaxy Fold」や中国Huawei Technologiesの「Mate X」のようなフォルダブル(折りたたみ)機が登場するなど、5Gの高速・大容量性を生かそうとする端末もあり、そういったものについてはどこまで普及するのか注目しています。

 折りたたみ機については、複数のアプリの同時利用が可能で、パソコンと同じような使い方ができると言われていますね。Webブラウザを見ながらテレビ電話を利用する用途などでは、5Gの特性が生かせそうです。初期の5Gスマートフォンについて、B記者はどうでしょう。


 記者B 当初、5Gスマートフォンは5Gモデムチップやアンテナの搭載、消費電力の増加によるバッテリーの大型化などにより、重く分厚いものになると予想されていました。ですが、実際に出てきたSamsungの「Galaxy S10 5G」や中国Xiaomiの「Mi Mix 3 5G」を見てみると、5Gスマートフォンは4Gモデルと比べて大きな差はないようです。


 Huaweiの「Mate 30」シリーズの5Gモデルは「第2世代の5Gスマートフォン」をうたっており、第1世代と違ってSoC(システム・オン・チップ)の「Kirin 990」に5Gモデムを統合しています。ミュンヘンの発表会では「Mate 30 5G」「Mate 30 Pro 5G」といった5Gモデルが展示されましたが、手で持っただけでは4Gモデルとの違いは分かりませんでした。


 とはいえ、5Gでの通信による発熱は大きいようで、スマートフォンの放熱設計は難しくなり、使っているうちに熱くなるスマートフォンは再び増えるかもしれません。5Gで使われる周波数帯にはSub6(6GHz未満)とミリ波(30GHz以上)がありますが、Sub6に比べてミリ波対応のアンテナは薄型化が難しいとされています。Sub6とミリ波に両対応した5Gスマートフォンがどういうサイズ感になるのか注目しています。


 A記者から先ほど話があった「折りたたみ」機が、特徴的な端末として話題を集めています。どのように評価されていますか?

Samsungの折りたたみ型スマートフォン「Galaxy Fold」
出所:Samsung Electronics

 記者A 現時点では、あくまで「持ち運びやすいタブレット端末」といった位置づけで、折りたたみならではのアプリはそれほどないという認識です。ただし、同時に3アプリを起動できるなど、単一のアプリが画面の全てを占有するスマートフォンとは、使われ方が変わってくる可能性もあると予想しています。


 記者B スマートフォンの世界シェア1位のSamsungが「Galaxy Fold」の出荷を技術的な問題で延期したことで、折りたたみは物理的に無理があるのではないか、との印象が広まった感はあります。ただ、実際に端末に触れてみると完成度は高く、値段を抜きにしても物欲を刺激するガジェットに仕上がっています。


実際に触ってみたということですが、使い勝手はいかがでしたか?


 記者B 折りたたむと分厚くなり、スマートフォンとしてあまり使い勝手が良いとはいえません。やはり魅力は開いた状態での大画面にあるので、タブレットをコンパクトに持ち歩ける「折りたたみタブレット」と考えてよいでしょう。ただ、タブレット用のAndroidアプリはiPadほど充実していません。広い画面を2分割、3分割する機能を使ってスマートフォンアプリを同時利用するなど、ユーザー側で使い方を工夫する必要がありそうです。


 記者A 私としては、ブラウジングなどを大画面で見られるだけでも、価値はあると思いました。パソコン版のWebサイトを閲覧する「PCビュー」で見ても違和感なく閲覧できるので、コンテンツのUI(ユーザー・インターフェース)を変える可能性を秘めています。ただし、今はまだ価格が高く、なかなか一般のユーザーが手を出しにくいと思います。普及させるには、最低限、今の半額程度までコストダウンする必要がありそうだと感じました。