Tomorrow, Together
~5G時代の共創と変革のVision~

未来のビジネスの
カギは共創にあり

 あらゆる産業分野において、企業のデジタルトランスフォーメーションが加速している。そこに5Gが加わることによって、今後のビジネスや社会はどのように変わっていくのだろうか。基調講演では、KDDI 代表取締役社長の髙橋 誠氏が登壇。あらゆるモノに通信が溶け込んでいく5Gによる大変革がもたらす未来像や新しいビジネスモデルの可能性、顧客企業やパートナーと共に進める5G時代の共創と変革のビジョンが語られた。

KDDI株式会社
代表取締役社長
髙橋 誠

LG Uplus Corporation
Executive Vice President / Business Solution Division
崔 周植(チェ・ジュシク)氏

NVIDIA
日本代表 兼 米国本社副社長
大崎 真孝氏

日本航空株式会社
常務執行役員 イノベーション推進本部長
西畑 智博氏

5Gにより、あらゆるモノに
通信が溶け込んでいく時代に

 令和元年、いよいよ5G時代が始まる。これからは情報通信ネットワークがスマート社会全体に拡大し、新たなユーザー接点やサービスが多数登場してくるだろう。

 例えば一般消費者向け(BtoC)では動画ストリーミングやクラウドゲームなど、高精細な動画を使った新たなサービスが考えられる。一方で法人向け(BtoB)では、スマート工場、自動運転、遠隔医療、遠隔操作など、これまで夢物語だったものが次々と現実のものになっていく可能性が高まっていくだろう。

 「5Gが加速させるデジタルトランスフォーメーションは、消費者、産業、行政を問わず、社会のあり方を変えていきます。このように、あらゆるモノに通信が溶け込んでいく時代に重要なのは『最新技術を活用して、どのようなビジネスを創っていけるのか』です。まさに想像力と創造力という2つの“ソウゾウ”の力が必要になってくるはずです」と髙橋氏は指摘する。

 近未来のビジネスは、一体どうなっていくのか。それを占う上で、1つのモデルケースとなるのが、日本より1年先行して5Gサービスを世界で初めて提供し始めた韓国だ。

 「5Gの商用化が世界の中で一番早かったのが韓国です。その中でも当社では2017年から5Gの準備を開始し、他社に先駆けて5Gのネットワーク構築を進めてきました」とLG Uplus Executive Vice President(副社長)の崔 周植(チェ・ジュシク)氏は語る。

 韓国の通信事業者LG Uplusは2018年10月から5G商用ネットワークの構築を開始。提供開始から2カ月で回線契約者数が100万人を超え、19年末には400万~500万人に上ると予想している。

 「BtoCのサービスとしては、VR/R、クラウドゲーム、スポーツ観戦、アイドルLIVEなどのコンテンツを提供しています。一方、法人向けにはコネクテッドカー、スマートファクトリー、スマートドローン、遠隔操作、スマートスクールなどの5分野を重点的テーマに据えて、様々な取り組みを展開しています」と崔氏は紹介する。

 既に「コネクテッドカー」では、道路の状況をリアルタイムで精密地図上に反映するダイナミックマップを実現したり、「遠隔操作」の分野ではドイツから韓国の工事現場の重機の操作を成功させたりしている。法人向けの5G通信モジュールは19年末ごろに開発完了が予定されており、ビジネス活用の本格的なスタートは2020年となる見込みだ。

サブスクリプションモデルから
リカーリングモデルへ

 日本の動きも加速している。総務省は2019年4月、5Gで使う周波数を携帯電話事業各社に割り当てた。2020年3月からは一部地域で5Gの通信サービスをスタートさせ、2022年春ごろには5Gの超高速・超低遅延・多数同時接続といった特長を生かしたBtoBサービスの本格展開を予定している。

 「先行する韓国の状況を見ても分かるように、通信が溶け込む時代にはビジネスモデルが大きく変わります。通信とセンシングの進化によって、顧客との関係性が再構築されるからです。現在では売り切りモデルからサブスクリプションへの移行が進んでいますが、これからは『リカーリング』へと進化していきます。リカーリングとはデータと価値提供が循環するビジネスモデル。センシングと通信で得たデータをAIやパーソナライゼーションで活用することで、より良いサービスを継続的に提供することが可能になり、エンゲージメントも深化していくはずです」(髙橋氏)。

 リカーリングモデルでは、IoTをはじめとしたセンサーを通じて集まったビッグデータが5G経由でAIによって分析され、そのデータの循環が新しい価値を創出していくことになる。KDDIは「センシングデバイス/IoT」「5G」「AI/パーソナライゼーション」という「5G 3階層モデル」によって、顧客の状態・行動・感情をデータとして循環させ、エンゲージメントを深化させるビジネスモデルを構築していくという(図1)。

図1 リカーリングを加速する3階層モデル

5Gが普及すれば、データと価値提供が循環する「リカーリングモデル」が実現する。KDDIは独自の3階層モデルで、顧客の状態・行動・感情をデータとして循環させ、新たな価値創出に取り組んでいく

リカーリングのキーワードは、
トラステッド&イノベーティブ

 データを駆使して顧客との関係性を再構築するリカーリングモデルは、実は日本企業にこそマッチすると髙橋氏は指摘する。「日本には100年以上続く歴史ある企業が世界各国と比べて圧倒的に多い。つまり、これまでもお客様とリカーリングしながら持続的に成長してきたのです。その志向を持つ日本企業が5Gプラットフォームをベースに、フローからリカーリングモデルに切り替えていくこと。これこそが日本のデジタルトランスフォーメーションではないかと私は思います」。

 それでは日本でリカーリングモデルを実現するためにはどうすべきか。「そのキーワードはトラステッド(信頼性)&イノベーティブ(革新的)です」と髙橋氏は強調する。

 トラステッドに関してKDDIは、信頼性の高いIoT通信サービスを約20年提供してきた実績がある。その一例が、2002年からトヨタ自動車と進めている「つながるクルマ」への取り組みだ。同サービスでは、車両データや走行データを分析・活用し、24時間365日の安心を届けている。また日本トーカンパッケージと取り組んでいる「スマート工場」で故障の予兆を検知しているケースもある。これらはいずれも信頼性の高いネットワークが存在するからこそ、可能になったサービスだ。

 一方「イノベーティブ」に関しては、KDDIグループの一社である、ソラコムのIoT向けネットワークの例がある。既にそのネットワーク上でAI通訳機「POCKETALK(ポケトーク)」などの新しいサービスが、次々と実現されているという。