5G時代における
お客様との
エンゲージメント深化

〜「リアル」と「デジタル」の
垣根を超えた顧客体験〜

ソウゾウリョクで
様々な場所や体験を
アップデートしたい

KDDI株式会社
ライフデザイン事業企画本部
ビジネス統括部 部長

繁田 光平氏

 リアルの世界にデジタルのコンテンツを反映する──。スマートグラスやVR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術などを駆使して、リアルとデジタルがマージされる5G 時代には、インターネット上だけでなく、現実世界に、これまでにない新しい顧客体験が数多く生まれる。「ソウゾウリョク」次第で可能性は無限だ。しかし、それらを存分に楽しむには、データ量を気にすることなく、高速ネットワークを使い倒せる環境など、いくつか条件がある。5G時代の深化した顧客体験創出の条件を探る。

5G時代を迎えて大きく変貌する
リアル世界の顧客体験

 5G時代には、顧客体験が大きく変わる。例えば、インターネットの世界では、5Gを生かした動画視聴がさらに普及。テレビやスマホといったデバイスの境目はなくなり、配信される広告モデルも一段と多様化していくだろう。バーチャルな空間を利用したユーザー間のコミュニケーション、クラウドゲームのSNS化なども進んでいくと考えられる。

 リアルな世界では、さらに大きな変化が起こる。

 「インターネットの世界で起こる変化は、3G/4G時代の延長に近く、比較的想像もつきやすいでしょう。しかし、5G時代には『リアル』に『デジタル』がマージ(融合)される。多種多様なデバイスから収集された画像をはじめとする無数のデータがクラウド上で解析され、その結果が素早くリアルな世界の体験に反映されるのです。これによりリアルな世界の顧客体験は劇的に変わります」とKDDIの繁田 光平氏は話す。

 このリアルとデジタルの融合による顧客体験を象徴するデバイスが「スマートグラス」だ。メガネ型のデバイスを装着するだけで、リアルな部屋の中を3Dモデルのキャラクターが躍動するなど、視界には現実空間とバーチャル空間を組み合わせた新しい世界が広がる。「KDDIは中国nreal(エンリアル)との戦略的パートナーシップを締結。同社が開発した軽量スマートグラス『nreal light』を活用し、AR技術による新たな顧客体験の創出を目指す実証実験を進めています」と繁田氏は紹介する。

 AR技術をさらに進化させた取り組みもある。KDDIと米国Sturfee(スターフィー)の取り組みだ。

 両社は戦略的パートナーシップを締結し、Sturfeeの持つVPS(Visual Positioning Service)技術の実証実験を進めている。具体的には、衛星写真から作成された3Dマップとスマホ/スマートグラスが映し出す現実世界のカメラ映像を照合し、向きや方位を含めた高精度な位置情報を特定。その上で、実際のビルなどの構造物に合わせたAR表現を実現しようというものだ。

 「スマートグラスを掛けて外を歩くだけで、位置情報にひもづいたデジタルサイネージや広告配信、ナビゲーションなどが表示されます。応用していけば、実際の街を舞台にして対戦型のアクションゲームを行うなど、現実世界をデジタルコンテンツとして楽しめるようになります」と繁田氏は言う。

目指すのはあらゆる場所や体験を
アップデートすること

 このような顧客体験の変化、および深化を通じてKDDIが目指しているのは「テクノロジーの力で、世の中のあらゆる場所や体験をアップデートすること」だ。

 「KDDIには、エンターテインメントを大事にしてきた歴史があります。だからこそ、お客様のあらゆる感情を5Gによって増幅していきたい」と繁田氏。5Gには、利便性や効率性を追求し、社会や産業のスマート化に貢献するといった側面もあるが、そうした取り組みにとどまらず「楽しい」「うれしい」「応援したい」といった人のエモーションに関わる領域にも積極的に関わっていこうとしているのだ。

 もちろんリアルな場所や体験のアップデートを図ることには、ビジネス的な価値の向上にもつながる。実際にKDDIは、これまでも数多くのチャレンジを行っている。スポーツ分野を例に取ると、VRやAR技術を用いて野球観戦などを自宅や会場において自由視点で楽しんだり、かつそれをリアルタイムで配信したりするなど、ファンの熱量を高めマネタイズにもつながるような様々な施策がある。「リアルな体験の価値を高めると同時に、離れた場所でデジタルコンテンツとしても提供し、その楽しさを知ってもらうことで、より多くの人に現地に足を運んでもらう。そんな好循環を作りたいと考えています」と繁田氏は話す(図1)。

図1 豊かな体験価値をビジネスの循環へ

5G時代には、離れた場所の映像を臨場感豊かに楽しめるだけでなく、現地での実際の体験をアップデートすることもできる。これをビジネスに取り入れることで、新たな収益源を確保することも可能になる