5G時代における
オープン
イノベーションとは

コネクテッドカーから
VRまで、
可能性は∞

 モバイル通信が本格的な5G時代に突入する2020年は、日本社会にとって大きなターニングポイントになるだろう。「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」といった特徴を備える5Gは、人の生活やビジネスにどのようなメリットをもたらし、社会をどう変えていくのか。様々な業界のキーパーソンが、その可能性と見えてくる未来の姿について語り合った。

Telexistence株式会社
代表取締役CEO
富岡 仁氏

MASHING UP
プロデューサー / MASHER
中村 寛子氏

株式会社小学館
DIME編集長
安田 典人氏

日産自動車株式会社
コネクティドカー&サービス技術開発本部 ソフトウェア&ユーザーエクスペリエンス開発部 部長
宮澤 秀右氏

KDDI株式会社
KDDI ∞ Labo
Labo長
中馬 和彦氏

「体験」を軸に、
ビジネスモデルが大きく変わる

中馬 5Gによって日本の通信環境は劇的に変わります。ここでは、5Gが広く普及した10年先の未来を見据えて、社会や暮らしはどう変わっていくのか。また、そこにはどんな新しい可能性が広がっているのかについて考えてみたいと思います。では、まず日産の宮澤さん、お願いします。

宮澤 私は「移動体験のパラダイムシフト」が起こると考えています。これは、自動車の世界におけるガソリン自動車からEV(電気自動車)への変化以上に、大きなインパクトをもたらすものだと思います。
 例えば、超低遅延な通信環境によってコネクティドカーが進化すれば、人は運転しなくても目的地に移動できるようになります。そうなると、車内は運転するための空間ではなく、仕事をしたり映像や音楽などのエンターテイメントを楽しんだりするための空間に変わる可能性があります。車の概念が全く違うものになり、長年「ハードウエア・オリエンテッド」だった自動車業界のビジネスモデルは、「体験」を軸にしたものへ大きく転換すると思います。

中馬 ありがとうございます。次に富岡さん、いかがですか。ご自身は、遠隔地にあるロボットをネットワーク経由で自分の分身のように操る「テレイグジスタンス」を研究・開発されていますね。

富岡 私は、5G時代は「超・機械」な時代になると予想しています。人間という有機物とロボットを含めた機械などの無機物の相対的な価値が劇的に変化し、ネットワークでつながった無機的な部分は年々倍々になるという非線形的な成長を続けるのに対し、有機的な部分はちっとも変化しない、そんな時代になると思っています。テレイグジスタンスもそんな無機物の一つですが、場内の産業用ロボットとは異なり、より人の暮らしの中に入ってきて、多様な人の作業や行動など社会の有機的部分について完全に内容を把握し、モデルにしてシミュレートできるようになります。
 また、宮澤さんも指摘したように、そうした世の中では人の体験も大きく変わります。人は人にしかできないことにフォーカスできるようになり、今までよりも「人らしい生き方」ができるようになる。「超・機械」な時代は、人が本来の姿を取り戻す時代と言うこともできると思います。

VRを使って世界中の様々な人々と
一緒に働くことも

中馬 機械が進歩すると、人らしい暮らしが可能になるというのは面白いですね。女性活躍、ダイバーシティー推進を軸とした活動をされている中村さんからも、このあたりについてご意見いただけますか。

中村 AIやロボットが進化すると、ホワイトカラーの仕事がなくなるという指摘があります。実際、働いている女性からも、「私の仕事はどうなってしまうんですか」といった不安の声を聞くことがあります。でも、仮にそれが本当だとしても、私はポジティブに考えるべきだと思います。なぜなら、定型作業から手離れできれば、それ以外のことにチャレンジできる時間が増えるからです。これからは、既存の枠組みにとらわれず、多様な価値観でライフスタイルを考えることがより大切になると思います。
 例えば、5Gがスタートすれば、VR(仮想現実)の世界に「もう1人の自分」を作って働くことも可能になるかもしれません。そこでは性別はもちろん、国籍も人種も関係なく、あらゆる人やロボットが共に働くことが前提になります。もはやダイバーシティーという言葉自体が不要になるような、多様性あふれる時代が5Gによってもたらされるといいなと思います。

中馬 VRは、5Gで大きく進化する領域の一つと言われます。仕事をするだけでなく、バーチャルな世界でコンサートや旅行などに行けるようになれば、人の価値観も大きく変わりそうですね。では、DIME編集長の安田さん、お願いします。

安田 雑誌で紹介している関係上、私は新しいモノやサービスにいつも興味津々です。5Gにより、皆さんが紹介したような世の中が実現されれば、企業にとってはこれまでにないビジネスチャンスが生まれます。高速・快適な通信環境を起爆剤として、見たこともないようなヒット商品が次々と生まれることに期待しています。