5Gで広がる
MaaSの世界

5G、経路探索、
ビッグデータでMaaSを加速
快適な移動と社会への
貢献を目指す

株式会社ナビタイムジャパン
代表取締役社長

大西 啓介氏

 マイカー以外の交通手段を1つのサービスとして捉え、より快適な移動を可能にする考え方として「MaaS(Mobility as a Service)」に注目が集まっている。経路探索のエキスパート企業として知られるナビタイムジャパンも、快適な移動を支援する多彩なアプリ/サービスを展開中だ。同社はこの取り組みを5Gでさらに加速させると同時に、様々な社会課題の解決にも貢献していく。

ITの進化と価値観の変化が
MaaS普及の追い風

 鉄道、飛行機、自動車、徒歩など、多様な移動手段を組み合わせたナビゲーション技術を世界に先駆けて開発したナビタイムジャパン。「経路探索エンジンの技術で世界の産業に奉仕する」を経営理念に掲げ世界中の人々が安心して移動するためのサービスを提供している。「当社のコンシューマー向けサービスを利用されるユニークユーザーは月間約5100万人。有料サービスのユーザー数も約480万人に上ります」と同社の大西 啓介氏は説明する。

 同社のビジネスにおける最も大きな環境変化として、大西氏は「MaaS」への関心の高まりを挙げる。MaaSとはMobility as a Serviceのこと。マイカー以外のすべての交通手段による移動を1つのサービスと捉え、シームレスにつなぐ考え方である。「そうした意味では、ナビタイムは、立ち上げ当時からMaaSをやってきたと言えます」(大西氏)。

 MaaSの実用化が進んできた背景には「ITの発達による効率的な資産共有」「所有中心の購買価値観の変化」の2つの条件がそろったことが挙げられる。UberやAirbnbなどを見ても分かる通り、最近では様々なシェアリングサービスが普及し、「所有から利用へ」のシフトが着実に進んでいる。さらにMaaSの普及が進めば、公共交通機関の収入増加、過疎地域における交通手段の維持、自動車関連の家計負担が減ることによる可処分所得の増加など、生活者には様々な恩恵が期待できる。

 実際、社会課題に貢献した事例も既にある。フィンランド ヘルシンキ市にてMaaS Globalが提供する「Whim」だ。

 インターフェースとなるモバイルアプリを通じて、各種交通機関のチケットを買ったり、月額料金を支払うプランなら公共交通機関を無制限に利用したり、タクシーやレンタカーを割安で利用したりすることが可能。電車、バス、タクシー、バイクシェアなど様々な移動手段を統合的に利用できる。「公共交通機関を有効に活用させ、渋滞を減らそうというのがWhimの狙いです」と大西氏は紹介する。厳密には無料版と有料プランの種類に応じて、利用できるサービスに違いがあるが、その利便性はヘルシンキ市民に高く評価され、実際に渋滞緩和にも貢献しているという。

MaaSの各段階に応じて
先進的な取り組みを推進

 ナビタイムジャパンも、既に幅広い取り組みを進めている。大西氏は、それらをMaaSレベル0からレベル4の5段階に当てはめて紹介した。

・レベル0
 まず、個別の移動手段の最適化を目指すレベル0では、自動車、電車など、移動手段ごとのアプリを提供している。「単機能アプリにおいては、鉄道、バス、自動車、トラック、自転車、バイクなど、移動手段別に最適化し、移動の幅を広げる取り組みを続けています」と大西氏は言う。

 非常に簡単に思えるが、実はそう単純な話ではない。例えば、バスなどは全国に数多くの事業者が存在するため、その運行情報をまとめるだけでも大きな壁に直面する。同社は、この難題に敢然と挑み、全国のバス会社515社を対象とした時刻表やバス停位置などの調査/データ整備を2018年に完了させた。さらに自転車向け、トラック向けのナビアプリでも、自転車やトラックが通れる道だけを案内するなど、専用アプリならではの配慮が盛り込まれている。

・レベル1~2
 続いて、異なる移動手段の統合と最適化を実現するレベル1、さらに、それらの決済までを統合するレベル2においては、トータルナビサービスで対応。そもそも、同社は1998年にレベル1に相当する「トータルナビ」を開発済みだが、その進化は現在も続いており、すべての移動手段に対しリアルタイムな情報を考慮した上で、その日・その時刻・その場所で、その人にとって最適なルートを提供できるようになっている。

 「鉄道、バス、タクシー、徒歩、シェアサイクルなど、様々な移動手段を自在に組み合わせた最適な経路検索が行えます。加えて、タクシーをアプリからそのまま呼ぶこともできる上に、手前と向こう、どちらの車線から乗車した方が良いかも分かります」と大西氏。シェアサイクルについても移動にかかる時間だけでなく、サイクルポートがどこにあるか、現在の貸出可能台数は何台かといった情報まで把握可能だ。

 さらに、レベル2に相当する予約・決算の統合についても、飛行機やタクシー、私鉄特急など一部の交通機関と既に連携済み。わざわざ別々のアプリを立ち上げなくとも、経路検索画面からそのまま空席照会や予約・決算などのプロセスを完結させることが可能だ。

 「大容量・低遅延の5G通信が利用できるようになれば、このナビゲーションサービスもさらに進化します。例えば、従来は端末側にもデータを保持して処理を行っていましたが、今後はサーバー側ですべての処理を行っても十分実用に耐えられます。将来的には、端末側にGPSとブラウザーだけを搭載し、ストリーミングでナビゲーションするような形も考えられます」と大西氏は話す(図1)。

図1 5G時代のナビゲーション

5G通信を利用すれば、リアルタイムなストリーミングナビゲーションが実現可能。端末内にプログラムやデータを保持しなくとも、高速かつ高精細なナビゲーションが行えるようになる