5Gが世界、産業界に与える
インパクト

先行する世界の
ユースケースを基に
知見を提供

エリクソン・ジャパン株式会社
チーフ・テクノロジー・オフィサー
工学博士

藤岡 雅宣氏

 5G実現に欠かせない基地局設備などを提供する世界トップクラスのベンダー、エリクソン。世界の通信会社や業界団体と共に、5Gの価値向上を図る技術・サービスを数多く開発してきた。日本ではKDDIと共同で、5Gの商用化に向けた先進的な技術の開発を進めている。

モバイルインフラベンダーとして世界の
5G商用化をサポート

 2018年10月の米ベライゾン・コミュニケーションズのサービスを皮切りに、世界各国で5G商用サービスがスタートしている。また、この流れと並行して、一部の国では5Gの産業用専用周波数の割り当ても進んでいる。これにより、工場などの一部のエリアに限定した「ローカル5G」の運用が可能になるため、産業界の期待は大きい。

 エリクソンは、こうした一連の流れをインフラ面から支える大手ベンダーだ。無線基地局をはじめとする多様な通信インフラ向けの設備を提供する。その技術はグローバル180カ国、1000以上のネットワークで利用され、世界のモバイルトラフィックの実に40%以上が利用しているという(※)。「グローバルで先行する米国および韓国の5G商用サービスにもエリクソンの設備が採用されています。長年培った技術と経験を基に、世界の通信キャリアが進めるモバイル通信の5G化を強力に支援しています」とエリクソン・ジャパンの藤岡 雅宣氏は語る。

※エリクソン調べ

5Gの価値を高める技術開発、実証実験を多数展開

 5Gサービスは段階的な発展・拡大が予定されている。具体的には、商用化された初期段階は、超高速・大容量のモバイルブロードバンドサービスが市場をけん引。その後、産業分野での実用化、ローカル5Gの拡大が進む。さらに固定網と無線5Gの融合により、ネットワークの一体化が加速し、産業応用やローカル5Gの利用が本格期を迎える。エリクソンによれば、こうした動きと関連して、ワールドワイドでの通信キャリアの売り上げは、2016年からの10年間で30%以上増加するという試算があるという。

 「こうした時代を見据え、エリクソンでは標準化団体や業界団体と共に具体的なユースケースを想定した標準化や仕組み作りを支援しています」と藤岡氏。例えば、ドイツ主導の製造業界団体「5G-ACIA(5G-Alliance for Connected Industries and Automation)」では工場などでの要求条件を整理し、モバイル通信の国際標準化団体「3GPP(3rd Generation Partnership Project)」に提案して標準仕様の中に必要な事項を盛り込んでいる。通信キャリアのネットワークの下に、独立したプライベートネットワーク環境を構築するなど、工場などの特定エリアでの5G利用ニーズに応える。

 また別の領域では、自動車のモバイルアクセス利用促進、遠隔運転評価プロジェクトにも参画。テレコム/自動車業界のグローバルな共同団体「5GAA(5G Automotive Association)」、自動車向けのデータ活用基盤を構築する「AECC(Automotive Edge Computing Consortium)」と共に、車両制御、クラウド経由の運転支援といった新しいユースケースの開発などに取り組んでいる。

 さらに自動車の領域では、パートナーとの協業による実証実験も進めている。ベライゾン・コミュニケーションズと実施したスピードウェイでの車両走行テストがその1つだ。具体的には、黒いラップで視界を遮った車の上に、カメラを設置。そのカメラで捉えた映像をいったんネットワーク内のエッジサーバーに送信し、その後ドライバーが装着するVRグラスに折り返し送信する。このVR映像のみを頼りにして、高速走行ができるかというものである。

 「VR映像が少しでも遅延すれば、ドライバーの運転は困難になります。しかし、28GHz帯を利用して、基地局と端末(車)の間の指向性のある電波を安定して形成するビームフォーミングを採用することで、高速移動時の下り通信で6Gbps以上のスループットを実現。VRコンテンツの符号化・複合化を含めて、映像の遅延を約50ミリ秒にとどめることができ、支障なく運転が可能なことが確認できました」と藤岡氏は解説する。高速走行時の車両に向けたデータ/コンテンツ配信の可能性を見いだせた実験と言えるだろう。