5GがもたらすIoTと
テクノロジーの民主化

新しいものを作り出して
いる限り“創業”は続く

株式会社ソラコム
代表取締役社長

玉川 憲氏

 日本を代表するスタートアップ企業として注目を集めているソラコム。同社はIoT(Internet of Things)サービス向けのミッションクリティカルなプラットフォームやデバイスを、クラウドネイティブな(クラウドに特化した)形で開発・提供し、幅広い企業のビジネスイノベーションを支援してきた。ロールモデルのない革新的な発想とビジネスは、どのように生まれ、どう進化し続けているのか。代表取締役社長の玉川 憲氏が自ら語った。

ソラコムの創業理念
それはIoTテクノロジーの民主化

 ソラコムが提供する「SORACOM Air」は、IoT向けのデータ通信SIMを提供するサービスである。2015年9月にスタートしたこのサービスの契約数が、3年半で100万回線を突破した。まさに驚異的な数字と伸び率と言っていい。

 同社は現在、グローバルで利用できる6種類の通信と13種類のサービスを提供し、1万5000以上の顧客と500社以上のパートナー企業を擁しているという。その躍進を支えてきたパッションとモチベーションの源泉は、創業以来のビジョンとして掲げた「IoTテクノロジーの民主化」だと玉川氏は言う。

 「IoT向け通信は非常に重要なテクノロジーです。これを一部の企業が独占するのは良くない。上場企業だけでなく、中堅・中小企業、スタートアップ、様々なお客様に簡単に使えるようにしたいという想いを込めて、われわれは“IoTテクノロジーの民主化”を掲げ、ソラコムのサービスを開発してきました。誰もが簡単に活用できる仕組みを作り、世界中のヒトとモノをつなげ、共鳴する社会を実現すること――それがわれわれの使命です」

 IoTは、様々なモノがネットワークにつながることで新たな価値やサービスを生み出す。だがソラコムの登場前までは、ベンチャーがIoTサービスを始めようとしても、通信事業者に数百~千枚単位のSIM契約を求められ、システム構築にも莫大なコストがかかるなど、スモールスタートが難しい状況が続いていた。

 そこに切り込んだのがソラコムだ。2015年9月に発表されたSORACOM Airは1枚のSIMから購入が可能。IoT向け通信インフラをパブリッククラウドのAWS上に構築し、顧客はWebコンソール上からSIMの回線管理、速度変更、利用料の把握、監視などが行える。特別なシステムを用意しなくても、誰でも低コストにIoTサービスが始められる、まさに「民主的な世界」が用意されたのである。

IoTはテクノロジーの総合格闘技

 「IoTビジネスは、センサーや通信、データ収集、可視化、デバイス管理、省電力化、セキュリティ、クラウド連携、遠隔管理など、すべてをやらなければ成り立たちません。これを1社で担える会社はほとんど無いのが実情です。全てを網羅的に扱う必要がある事から我々はIoTを“テクノロジーの総合格闘技”と呼んでいます」と玉川氏は語る。だからこそ同社は顧客に、様々な形でソリューションを拡充してきた。それは玉川氏が説明するソラコムの沿革をたどる歴史の中でも明らかだ(図1)。

図1 ソラコムの沿革

ソラコムはモバイル通信のコアネットワーク(パケット交換、回線管理、帯域制御など)とサポートシステム(顧客管理、課金)をAWSのクラウド上に構築し、顧客の幅広いニーズに応えるサービスを次々と発表してきた

 2016年に、IoTクラウドアダプター経由で好きなクラウドサービスとつながる「クラウド連携」と接続時のセキュリティを強化する「閉域対応」をリリース。2017年にはグローバルビジネスへの対応に向け、1枚のSIMで世界130カ国以上の国と地域でつながる「IoT SIM(旧グローバルSIM)」を発表。さらにSORACOM Airでは、それまでのセルラー通信だけでなく、低消費電力で広域通信が可能なLPWA(Low Power Wide Area)方式の「LoRaWAN」と「Sigfox」にも対応。規格の異なる複数のIoT通信を組み合わせたシステム構築も可能にした。

 「そして同じく2017年の大きな出来事となったのが、KDDIグループに入ったことです。ソラコムが提供する価値をスピーディーに最大化していくため、KDDIの中でさらなるイノベーションを起こそうと取り組んでいます」(玉川氏)

 また2018年には“IoTシステム全体を簡単に作るための民主化”として、集めたデータを複数のグラフやテーブル、地図などに可視化して共有できる「IoTダッシュボード(SORACOM Lagoon)」とeSIM搭載で通信が組み込まれた「IoTネイティブデバイス」を発表した。

 「こうしたソラコムのサービスは、お客様からのフィードバックに基づいて、2週間周期の開発サイクルで改善し続けています。現在までに13個のサービスで、延べ120の新機能をリリースしています」(玉川氏)