日経ビジネス電子版Special
サプライチェーン改革に挑む。
日本通運とアクセンチュアのチャレンジ
日本通運株式会社
代表取締役副社長
石井孝明
アクセンチュア株式会社
マネジング・ディレクター
製造・流通本部
北川寛樹

医薬品物流の
共同プラットフォーム構築で
品質管理・効率化を実現

医薬品の品質管理や適正流通をめぐるグローバルな変革の波が、物流システムや物流業界のあり方を大きく変えつつある。2021年1月までに医薬品物流への本格参入を表明した総合物流大手の日本通運と、共に物流業界の変革に挑むグローバルコンサルティングファーム・アクセンチュアの新たな取り組みについて紹介する。

日本版GDP導入により、
品質管理が厳格化

──約500億円を投じ、2021年からの医薬品物流への本格参入、そのための新たな医薬品サプライネットワークの構築を発表されました。その狙い、背景についてお聞かせください。

石井 氏

石井:人命に関わる医薬品は、その輸送・保管においても品質を左右する温度帯管理をはじめ、厳重な管理体制が求められます。当社ではこれまでも医薬品業界のお客様のニーズにお応えし、安心・安全な物流の最適化に取り組んでまいりましたが、今回のチャレンジは業種業界の枠を超えた、より包括的な取り組みとなります。

 直接的な契機となったのが、18年末に発出された日本版GDPガイドラインです。GDPとは医薬品の出荷から納品に至るまでの適正な流通基準に関して定めたもので、欧州・米国などでは既に先行して法制化が進んでいます。

 新たに構築する医薬品サプライネットワークでは、グローバルな動きも見据えたGDPに基づく品質管理に加え、医薬品供給のBCP(事業継続計画)にも対応します。従来、お客様ごとに実施されてきた倉庫での保管や輸送を共同化し、業務効率向上も実現可能なプラットフォームを構築していく計画です。

北川:おっしゃるように品質担保に加え、業務効率化、生産性向上も医薬品業界が抱える大きな課題の一つです。当社でも多くの製薬企業様の事業をサポートさせていただいていますが、近年の薬価制度改革による価格引き下げの影響もあり、物流コストをシビアに検討されるケースが増えています。

 その観点では、今回のプロジェクトはガイドラインに則った品質確保に留まらず、コスト削減やお客様によっても異なる“荷主ニーズ”に応えていくということが重要となります。そこでカギを握るのが石井副社長も言及された業種業界を超えた連携とテクノロジーの活用です。各お客様とのインターフェースの標準化と柔軟性を担保するアーキテクチャ、デジタルと言われるNew IT領域、また物流というハブ機能を拡張させた新たなビジネスサービスなど、多くの業界で企業・組織変革などに一気通貫でグローバルに取り組んできた経験・知見を生かしながら、最終的な成果を出すところまでサポートしていく所存です。

テクノロジー企業とも連携し、
高度なトレーサビリティを実現

北川 氏

──具体的な取り組み内容とロードマップについて教えてください。

石井:日本版GDPガイドラインでは、輸送・保管エリアの温度管理やモニタリング、温度逸脱リスクへの対応、温度記録など出荷までのデータ履歴の作成・保存といった要件が挙げられます。

 当社では従来からの原材料・製品の輸出入拠点である、いわゆる“メディカルハブ”の成田国際空港、関西国際空港に加え、新たに4倉庫を関東、関西、富山、九州に設置。様々な医薬品メーカー様の共同倉庫として活用いただけるよう、GDPに準拠した最新設備を備えます。BCP対応としては免震構造(一部除く)を採用し、21年1月までに順次稼働していく計画です。

 温度逸脱リスクに対応するテクノロジーとしては、倉庫内の保管温度を集中管理、同時に輸送中をはじめとするサプライチェーンの各工程でも温度データを常時記録。これらを総合監視する仕組みを構築し、各情報を医薬品メーカー様がクラウド上でリアルタイムに把握できる体制となります。

 現在、半導体メーカーのインテル様と組み、製薬業界に適用できるデバイスおよびトレーサビリティの開発を進めており、グローバルな事業展開をも見据えた最適化に取り組んでいます。

北川:海外を含めたEnd to Endの物流品質を担保するには製薬、ホールセラーの連携が重要になります。それぞれのプレーヤー独自の戦略や技術を、サプライチェーンのハブとなる日本通運様が取りまとめを行いながら、IoT技術、ブロックチェーン技術といったデジタルソリューションを活用し、他のプレーヤーではなし得なかったプラットフォームを構築していくことをサポートいたします。日本通運様としっかりとタッグを組み、迅速に実証実験で成果を上げ、早期の完成を目指していきます。

石井:業務効率化については輸出入時の業務手続き、受発注業務なども視野に入れ、各団体、航空会社、空港、さらにフォワーダーと呼ばれる運送会社とも連携し進めていく計画です。

 物流リソースのデジタル管理と並行し、申告データのデジタル化、自動化の情報漏えいリスクへの対応なども踏まえながらのチャレンジとなりますが、物流に伴う周辺業務に関しても品質・効率を追求したスタンダードをつくっていくことが物流企業としてのミッションと捉えています。