徹底した現場主義“臨床経済学”で勝ち抜く 徹底した現場主義“臨床経済学”で勝ち抜く

  • 株式会社アクティオ
  • 代表取締役会長 CEO
  • 小沼 光雄

profile

1967年にアクティオの前身となる機械修理会社を設立。やがて建機レンタルビジネスを本格化させ、91年に社名をアクティオに変更。レンタル+コンサルの “ レンサルティング®” を競争力に、飛躍的な成長を遂げる。

建設業界において現在、急激に存在感を増す建機レンタル。一般的に、建機は購入すれば非常に高額だ。メンテナンスや移動のコストもついて回る。現在のように、所有から利用へのシフトが取りざたされるかなり前から、ゼネコンは自社ですべての建機を購入・保有せず、工事期間のみにレンタルする形態が成立していた。このレンタルのニーズは近年、特に高まり、現在では建設現場で使われる建機の大半がレンタルといわれるまでに成長した。この10年で建機レンタル業界の売り上げは倍増し、市場規模は1兆3000億円を突破した。近年は東京オリンピック・パラリンピック関連工事、大規模都市再開発が目白押しで、業界は活況に沸いている。

この建機レンタルのパイオニアとして成長と進化を続け、業界をけん引してきたのがアクティオだ。同社は1967年に、機械修理会社(当時の社名は「新電気」)として設立した。その後、事業を機械レンタルに転換して急成長する。設立から約50年を経た現在、同社のグループ全体の今期売り上げ目標は3000億円を見据える。従業員は全国で9000人超だ。アクティオ創業者であり、その経営を担ってきた現会長・小沼光雄氏は、成長の原動力を次のように語る。

「水中ポンプの修理をしていた時代から、現場で顧客のニーズに応えるのを最優先してきました。レンタルというビジネスのアイデアも、懇意にしていた顧客が機械の故障で工事が完全にストップして困っていたところから生まれました。当時、建機レンタルは、ビジネスとして一般的ではありませんでした。しかし、将来的に大きな成長が見込めると考え、本格的に建機レンタル事業に乗り出しました。とりわけ重視したのが、単なるモノ貸しで終わらないところ。修理・メンテナンスの徹底に力を注ぎました。新品同様に直して長く使える技術力があるからこそ、顧客の相談に乗りながらニーズに応えられます。それが、“レンサルティング®”というアクティオ独自の提案・コンサルティング型のレンタルビジネスに結実したのです」

アクティオは、“レンタル”と“コンサルティング”を組み合わせた“レンサルティング®”を企業理念として標榜。建機レンタルという新しい市場を自ら開拓した。顧客が真に必要とする最適な機械・建機を提供し、ケースによっては複雑な建機の機能をどのように使えば効率よく工事が進められるかのアドバイスも行った。このような高付加価値の新たなサービス提案は、新たに参入してきた競合他社との過当な値下げ競争からも一線を画すことにつながる。こうしてアクティオは、建機レンタル業界で確固たる地位確立に成功する。ゼネコンが「持たざる経営」へシフトし、建機レンタルへの依存度が高まる現在に至るまで、現場の顧客のニーズに真正面から応える“レンサルティング®”が果たした役割は大きい。

株式会社アクティオ 売り上げ推移

右肩上がりの成長を遂げるアクティオの売り上げ推移。
2019年はグループ全体で3000億円を見込む

現場を重視する的確な市況判断現場を重視する的確な市況判断

この変革期にトップを走り続ける同社の強みは、小沼氏の市況を読み取る力とその読みに基づく大胆な決断にある。

「とにかく“現場”を常に見てきた自負が私にはあります。自ら率先してドブの中に入って水中ポンプを修理していた頃と気持ちは変わりません。経営のすべては“現場”にあります。現場から世の中がどうなっているかを見定めます。本質を見極めるために、気を緩めず現場の緊張感を持ち続けると、景気の気配が見えてくる」

小沼氏はこうした“現場”重視の市況判断を、“臨床経済学”と独自の言葉で呼ぶ。アクティオはオイルショック、リーマンショックなどの経済・金融危機や、阪神・淡路大震災、東日本大震災といった自然災害、数多くの危機的状況を乗り越えた。いや、むしろそのたびに大きく成長を遂げてきた。

「危機が訪れてから動くのではなく、どんなことが起きても対応できるような体制を作り上げる投資を、事前にやっていくことが肝要です。失敗を恐れ、安全策のつもりで先行投資をしない。そういう判断は、むしろピンチを招きます。そうではなく、リスクとコストをしっかり計算したうえで、“前向きな準備”をしないといけません。建設・土木業界には景気の乱高下が直接的に影響します。適切な準備運動をしておけばリスクヘッジとなりつつ、いざというときの瞬発力につながる。結果、企業としての持久力になるのです」

この“前向きな準備”は、アクティオならではの、未来に向けた創意工夫と投資を生み出す。レンサルティング®発展の技術拠点として開設・稼働させてきたのがテクノパークだ。2015年4月には、その中でも最大規模となる「三重いなべテクノパーク統括工場」を設立。整備工場・研究開発拠点としての役割のほか、人材教育研修施設や災害時の機械・機材供給基地として機能する。2016年には、レンサルティング®と研究開発の最新拠点「東京DLセンター」が完成。24時間体制で工事現場での不測の事態や災害などに対応するだけでなく、最先端技術の開発拠点としての役割も担う。こうした全国展開への加速推進、技術開発力の強化に対する大胆な投資が、アクティオの右肩上がりの成長発展を支える背骨となる。

株式会社アクティオ「東京DLセンター」

レンサルティング®と研究開発の最新拠点「東京DLセンター」。迅速に対応できるデリバリー拠点であることに加え、あらゆるニーズに応えるための研究開発拠点としての機能を備えたのが最大の特徴

全国規模の投資拡大で大量の建機をフル稼働全国規模の投資拡大で大量の建機をフル稼働

「私の言う臨床経済学は方程式なんです。“商品単価(X)”“販売量・稼働数(Y)”に実際の数値を代入し、先読みした未来の“市況(Z)”を仮置きすることで、どれだけの先行投資が必要か判断します。近年ではオリンピック特需とその後の市場縮小が、どのぐらいの規模になるかを計算したうえで、2016年の約183億円をかけた東京DLセンター設立や、その後の2年間で例年の約4倍規模となる約600億円の建機購入を行いました。一見すると過剰な投資と思われたかもしれません。ですが、根拠となる数字があってのこと。実際、予測はほとんど当たりました。建機レンタルというビジネスは、建機の保有台数とそれを運用するための設備がものをいう世界です。根拠のある強気の投資の結果、圧倒的台数の建機の保有とそれらの理想的な稼働が実現できたことは、非常に大きなことでした」

アクティオの投資拡大は都心部だけではない。全国規模で行われている。戦略的なM&A、地場の企業との連携を積極的に推進する。機会損失を防ぎながら、需要の地域差のバランス調整も堅実に進める。

「通常、春夏は公共工事が少なくて需要が落ち込みます。日本全国での積極的な事業展開によって売り上げのバラつきをうまく平準化する狙いが功を奏し、現在111カ月連続の黒字を達成しています。また昨年、大きな被害を出した西日本豪雨のように、近年、各地で自然災害が頻発しています。こうした自然災害の復旧・復興工事は、被災地の安全・安心の確保のため、スピード感のある対応が求められます。私たちは各地のテクノパークと地域企業との連携で必要な建機をフル稼働させ、被災地の復旧・復興にも大きな役割を果たしています」

建機レンタル業界において圧倒的な建機保有数を誇る。
“赤”が同社のコーポレートカラーだ

株式会社アクティオ「三重いなべテクノパーク統括工場」

工場・センターの中で最大規模の「三重いなべテクノパーク統括工場」。整備工場の役割のほか、人材教育研修施設や災害時の機械・機材供給基地として機能する

IoT活用サービスが生むイノベーションIoT活用サービスが生むイノベーション

さまざまな要因で活況を呈する建機レンタル市場だが、大手企業の寡占化も進む。業界全体の売り上げの約35パーセントを、アクティオを筆頭とする広域大手企業4社が占める。受注争奪、価格競争は今後さらに厳しいものになると予想される。東京オリンピック・パラリンピック特需も間もなく終わる。その後は市場の反動減が続く可能性もあるだろう。

それでも小沼氏はアクティオのさらなる成長に自信をのぞかせる。鍵となるのは、これまでと同様に“レンサルティング®”に基づく“イノベーション”だ。その中でも未来の発展の可能性として、小沼氏が大きな期待を寄せるのが、“IoT”や“AI”を活用した“i-Rensulting®”だ。

「アクティオは早い段階からICTへの取り組みを積極的に推進し、加速度的に発展させています。このビジネスが秘める可能性はとても大きいと感じます。業界自体をも変える力を持っています。私たちには50年にわたって蓄積してきた技術やノウハウがあります。これをICTと組み合わせれば、これまでなかった新しい商材、サービスがどんどん生まれてくるでしょう。事業としても拡大していくのは間違いありません。価格競争による消耗戦ではなく、イノベーションによって新しいビジネスモデルを展開し、自分たちで市場を創り出すのです」

小沼氏の言葉の通り、アクティオはICTやIoTを活用したビジネスモデルを構築し、商材やサービスを多角化させている。IoTデバイスを設置し、燃料の残量低下を把握して適切なタイミングで燃料配送車を派遣する“アクティオ燃料給油サービス”もその1つだ。バーチャル・リアリティーを駆使した建機シミュレーターによって、建設現場の不安全行動を再現する安全教育システム“VRバックホーシステム”、さらに油圧ショベルを遠隔操縦でき、災害復旧現場のような危険な場所での稼働が可能な“建機用無線操縦ロボット”など、次々と新たな施策を発表し話題を呼んでいる。こうした取り組みがレンタル事業に続く収益の柱に発展する可能性は高い。

こうしたアクティオのレンサルティング®を形成する、その確かな技術開発力はCSR活動でも発揮される。

「実は今年、歴史ある平安神宮神苑の池底清掃作業に携わることになりました。グループ会社である髙石機械産業と協力し、池の生態系を壊さず維持しながら、池を6エリアに分けて作業を進めています。明治に創建されて124年という歴史ある平安神宮の“国指定名勝 平安神宮神苑”の池底清掃に携われたのは、個人的にも大変な名誉だと感じています」

万全の体制を作って売上5000億円企業へ万全の体制を作って売上5000億円企業へ

アクティオの成長・発展について、小沼氏は「すべては現場で頑張る社員一人ひとりのおかげ」と話す。建設・土木業界は人手不足が深刻だ。高い生産性を継続するために、優秀な人材の確保はあらゆる企業で急務だ。小沼氏は言う。

「私の方針として、人件費はこれまで一切カットしてきませんでした。人材育成の根本にあるのは“人情”と“愛情”です。何のために会社をやっているのか、なぜ会社を大きくする必要があるのか。それはヒューマニズムなのです。私はアクティオで働く人を幸せにしたいし、幸せな人は1人でも多いほうがよい。経営トップの仕事とは、そのために何ができるかを考えることです。そこから信頼と愛情が生まれます。企業としての規模が大きくなれば、直接言葉を伝えるのが難しくなりますが、マインドは伝えていけます」

2017年の設立50周年を機に、小沼氏は社長から会長になり、息子の小沼直人氏が新たに社長に就任した。事業承継も現在の大きなテーマだ。

「事業承継は15年以上かけて準備して、人材、資産、商品の体制化は実現しています。今後、売り上げ4000億円は遅からず達成できるでしょう。すでに私は82歳。どこまで仕事ができるか分かりませんが、さらに売り上げ5000億円の高みを目指す骨格づくりをしたいですね」

そう言って笑う小沼氏。表情にはアクティオの進化と発展に対する揺るぎない自信が表れていた。

株式会社アクティオ 小沼光雄氏
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