女性が活きる、地域が活きる地方創生の鍵を握る女性のリーダーシップ

シーザーズ・エンターテインメント
エグゼクティブ・バイス・プレジデント(政府渉外・CSR担当) ジャン・ジョーンズ・ブラックハースト氏 × 日本総合研究所 主任研究員 藻谷 浩介氏
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首都一極集中型の日本経済が変わらざるを得ないフェーズに来ている。都心部に人口が集中することで起きる弊害を、どう解決すればいいのか。「100年パートナー FOR JAPAN」というスローガンを掲げ、日本と長期的なパートナーシップの構築に取り組んでいる、シーザーズ・エンターテインメントの副社長であり、1990年代に米国・ラスベガス初の女性市長を務めた、ジャン・ジョーンズ・ブラックハースト氏と、長年にわたり地方創生の重要性を説いてきた、日本総合研究所 主席研究員の藻谷浩介氏に、女性が活躍する社会づくりのヒントと地方創生の秘訣を聞いた。

“ギャンブルの街”を変えた
女性の意思決定への参画

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シーザーズ・エンターテインメント
エグゼクティブ・バイス・プレジデント(政府渉外・CSR担当)
ジャン・ジョーンズ・ブラックハースト

スタンフォード大学英文科卒業。南カリフォルニア大学食品マーケティング・マネジメント修了。食品会社、自動車販売会社を経て、1991年にラスベガス市初の女性市長に就任。2期8年間の任期の間に観光客数を2倍にし、経済成長に大きく貢献する。99年、シーザーズ・エンターテインメントに入社し、倫理規範設定等、業界初の取り組みを主導。さらに、シーザーズ財団の代表も務めるなど、コミュニティ強化支援にも貢献し続けている。

藻谷 34年前から昨年まで、5回ラスベガスを訪れていますが、その変化には驚きます。1980年代のラスベガスは「おじさんがギャンブルに行く小汚い街」でしたが、今回知人の結婚式で訪れたダウンタウンは、「洗練された家族向けのリゾート」になっていました。90年代にジャンさんがラスベガス初の女性市長になられてからの、あの街のたいへんな変化は、いったいどうやって実現されたのか、今日はぜひそのことを伺ってみたいと思っています。

ジャン ありがとうございます。おっしゃる通り、ラスベガスは30年前のギャンブルの街とは変わりました。今や世界中から観光客が集い、そのうちの75%の方が純粋にリゾートを楽しんでくれています。私は市長として2期の職務中、政治から文化まで、街そのものを変えることに心を砕いてきました。

藻谷 そもそもラスベガスがあるネバダ州は、鉱山で発展したマッチョで保守的な地域ですよね。女性が市長になるだけでもたいへんだったのではないですか?

ジャン 初めは、誰1人市長選で私が勝つとは思っていませんでした。もともと私の専門はマーケティングで、政治のことは素人でしたし、当時の市議会の各部門責任者は全員男性で、政治のことも知らない女に何ができるんだ、という態度でした。しかし、女性の私が選ばれたのには理由がありました。食品でも自動車でも旅行でも、個人消費の最終的な決定権は75~80%が女性にあります。街づくりも同じで、ラスベガスの街の発展にも女性的な視点が求められていたんです。

藻谷 顧客本位で考えれば当たり前のことを、保守的な地方政治の世界でも実現されたんですね。女性幹部や議員も増やされましたか?

ジャン 市政担当官に女性を増やし、すべてのチームのチーフマネージャーにも必ず女性を起用しました。それでようやく男女比のバランスが取れたんです。それまで女性職員の数はほぼゼロでしたからね。そうした就労環境の改善が、街の改革にもつながりました。それまでとは違った洗練されたホテル・宿泊施設を増やし、公共交通機関を整え、観光客を1500万人から3400万人にまで増やすことに成功したのです。再選時に高い支持率をいただいたということは、私が正しいことをしてきた証しと実感しました。

藻谷 女性が消費を握っている点では、日本は米国以上なのに、企業や行政の幹部は未だに男性がほとんどです。地方議会も男ばかりで、生活者の声が届きにくい。優秀な女性は多いのに、控えめというか、もう少しアグレッシブになってもいいのではと悔しく思うことがあります。

ジャン 誰か1人でも良い事例が出れば、周りの女性も「自分にも可能性があるかもしれない」と思うものです。私が市長退任後、ラスベガスでは2人の女性市長が出ていますし、今ではネバダ州議員の半数以上が女性です。これは米国国内でも異例のことです。

藻谷 それは素晴らしい! 地域の政治風土自体を、ひっくり返すのに成功したんですね。

ジャン 20年以上かかりましたけどね。

就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)

日本の管理職に占める女性の割合は国際比較でみると依然として低く、アジア諸国と比較しても特に低い水準にある。
資料出所:「就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)」(内閣府) (http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h28/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-13.html)を加工して作成