DX空白地帯を攻略 購買、経費精算業務の課題と可能性とは Vol.2 エスプラス×コンカー

多くの企業がデジタル技術を活用した業務プロセスの見直しに取り組んでいる。中でもデジタル化によって大幅な効率化とリスクの低減、そして付加価値の向上が見込める業務が購買や経費精算などの間接業務だ。海外では、クレジットカードの国際ブランドであるMastercardのソリューションと、出張・経費精算を自動化する「SAP Concur」を連携させる活用方法が大いに注目を集めているという。ここでは、両社のキーパーソン、そして企業内の不正対策に詳しい公認会計士に市場の動向とソリューションの具体的な評価を聞いた。

Vol.1 Mastercard×コンカー 全社一括精算で効率と管理性を向上 集約したデータを分析して交渉材料にVol.2 エスプラス×コンカー カード決済は本当にリスキーか 「不正」からひも解く適正な決済手段

カード決済は本当にリスキーか 「不正」からひも解く適正な決済手段

不正が横行しやすい日本の経費精算の仕組み

経費精算システムの導入時に決済手段としてクレジットカードを利用した法人ソリューションの利用を開始する企業が増えているそうですね。

首藤「SAP Concur」を新規に導入していただくお客様の9割がクレジットカード、いわゆるコーポレートカードを併用しています。システムの導入と同時に新たにカードの利用を開始する企業も多いですね。理由は、紙の領収書の管理、現金の立て替えや社員の個人口座への振り込みといった経費精算にまつわるプロセスの省略や効率化ができ、間接業務の生産性が上がるからです。また、併用のメリットとして、不正防止も期待できます。

株式会社エスプラス 代表取締役 公認会計士/公認不正検査士(CFE)
辻󠄀󠄀 さちえ氏

公認会計士/公認不正検査士として、企業内の不正に関する相談を受ける機会も多いのですが、経費精算時の不正防止という観点で、経費精算システムとコーポレートカードの併用をお勧めする機会は確かに増えています。

経費精算は最も発生頻度が高い不正です。これは現状の日本の経費精算が不正を行いやすい現状にあるといえるかと思います。例えば、私的な飲食代を請求したり、仕事で使う備品を購入する際に私物を紛れ込ませたりするといった不正です。もう少し大きなものになると架空の出張を申請して、経費を着服するといったケースもあります。

一つひとつの不正額は、それほど大きくないので直接的に業績を悪化させるほどではありませんが、このような不正は蔓延しやすく、従業員のモラルやモチベーションが低下していき、結果的にそのことが業績に大きな影響を与えることになります。


コーポレートカードは役職者だけでなく全社的に利用すべき

コーポレートカードに対しては、社員に配布するのは不安という声もあるようですが、リスクはないのでしょうか。

株式会社コンカー 事業開発本部 チャネルグループ 事業開発マネージャー 首藤 啓成氏

首藤先日、当社独自にコーポレートカードの利用状況に関する調査を行いました。ガバナンス強化などへの期待から、導入、利用拡大の意思を持つ企業が増えていることなどが分かったのですが、確かに不正利用に関する不安の声も多く見られました。

しかし、どちらかといえば、紙の領収書と現金で精算する方がリスクは高いように思います。コーポレートカードで決済すれば、いつ、どこで、誰が、どんな経費を使ったかが、紙の領収書で管理するよりもはるかにクリアになります。結果、不正の抑止力にもなり、リスクはより小さくなります。

また、調査からはリスク管理の観点からコーポレートカードを利用していても、配るのは役職者だけに限定している企業が多いことも分かりましたが、本来であれば経費を使う社員全員が利用すべきです。SAP ConcurとMastercardの法人向け決済ソリューションを併用すれば、出張や接待の申請と承認とその決済までを自動的に連動させて効率化することができる上、カードの利用情報にまつわるすべての情報をSAP Concurで可視化できます。部分的な導入では、この効率化・可視化のメリットも部分的になってしまうからです。

私も調査結果を興味深く拝見させていただきました(辻󠄀先生の分析レポートはこちら)。コーポレートカードの支給を役職者に限定するのは、いわゆる「特権」のように捉える企業もあるようですが、実は不正という観点では本末転倒。というのも、役職者に不正をしないという保証はない上、役職者の場合は承認者が不在で不正を隠しやすいからです。

また、効率化という観点でも精算の頻度が多い営業職になどがコーポレートカードを利用した方が得策。私も生産性向上と不正防止の両面から、全社的な利用をお勧めします。


経費精算システムとコーポレートカードの併用は非常にメリットが大きいのですね。むしろメリットしかないようにも感じます。なぜ日本では広がらないのでしょう。

首藤サービスのことをあまりご存じでないからだと思います。不安の中には、全社員にコーポレートカードを配って、すべての経費が会社の口座から引き落とされるのは不安に感じると言われるケースがあります。しかし、一言でコーポレートカードといっても、様々な種類があり、例えば、会社の口座からではなく、いったん個人の口座から引き落とされるものもあります。

実際、当社が利用しているのは、この種類のコーポレートカードです。業務上で商品・サービスを購入する必要がある場合は、SAP Concurを通じて申請を行い、カードで決済します。代金は個人の口座から引き落とされますが、後で給料と一緒に精算額が払い込まれます。承認が下りていないもの、あらかじめ設定しているポリシーに反しているものは対象にならないので、カードの不正利用が起こったとしても、その分は個人口座へは振り込まれません。

日本の企業は古くから、お金の取り扱いには強いガバナンスを利かせたいという意識を持っているので、不正を防ぐために精算業務に大きな手間暇をかけていることも少なくありません。紙の領収書や請求書をすべて手作業でチェックする事務コストを試算すると膨大な金額になるはずです。それでも不正を完全に防ぐことはできませんし、先ほども言ったように経費精算の不正で生じる被害額そのものは小さく、ともすれば事務コストの方がはるかに大きくなってしまいます。こうした現実を考えると、経費精算システムとクレジットカードを併用して、精算業務を自動化することは非常に得策だといえるでしょう。


テクノロジーが急速に進化する今こそ間接業務を改革するチャンス

前回の対談で、Mastercard日本地区副社長プロダクト部門のケルさんがお話しされていたように、これまでよりも細かく利用制限を設定できる法人向け決済ソリューションも登場します。どのようなメリットが期待できるでしょうか。

首藤利用先や利用金額、回数、期間などを制限できるので、これまで以上にガバナンスを利かせることが可能になり、会社の口座からの引き落としも安心して行えるようになるでしょう。そうすれば、海外出張の多い企業などで有効になると考えられます。海外出張の場合は金額が大きく、場合によっては社員が立て替えておくには負担が大きすぎるケースもありますが、出張期間だけに限定した使い切りのバーチャルカードなどを発行すれば、そうしたケースにも適切に対応できます。

個別の購買単位でコントロールが利くことは素晴らしいことだと思います。申請と承認という行為を通して実現している企業ポリシーを仕組み化できるわけですからね。


日本のカード会社からも、新しいソリューションを使ったサービスが登場するのですか。

首藤Mastercardのケルさんのお話では、日本の各カード会社との協力のもとで、2020年以降のサービス開始を目指しているそうです。今年9月に開催する「SAP Concur Fusion Exchange 2019」で、三菱UFJニコス様、三井住友カード様、クレディセゾン様が各自のソリューションを紹介する予定です。


最後に経費精算をはじめとする間接業務の改革に取り組む際のアドバイスをお願いします。

組織としてのガバナンスと現場の利便性を相反するものだとお考えの方が多いかもしれません。しかし、首藤さんがご紹介してくれたように、最新のテクノロジーを活用すれば両立させることが可能。改革を行っていないのが単に慣習だからという理由なら、すぐに現行のルールをトップマネージメントの主導のもと、全社単位で見直すべきではないでしょうか。


首藤AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)をはじめとして、現在はデジタルテクノロジーが急速に進化しています。デジタルトランスフォーメーションの空白地帯になりがちな間接業務でも、生産性を大きく向上させることが可能です。既成概念やこれまでのやり方にとらわれずに、今こそ業務プロセスの変革に取り組んでいただきたいですね。


「法人カード利用状況調査」の結果を辻󠄀先生が分析 不正の原因、漠然とした不安を一刀両断
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