7月11日、三井住友銀行が主催する「SDGsセミナー&マッチング(神戸)」が、同社 神戸本部ビルで開催された。前回は、主催した同社のSDGsの取り組みやCSR/SDGsコンサルタント、社会情報大学院大学客員教授の笹谷秀光氏の講演を紹介した。2回目となる今回は、日経ESG経営フォーラム事務局長の斎藤正一がSDGsやESGの現状や企業の取り組み方、最新トレンドなどを語る。さらに、セミナーで語られたセイコーエプソンの「PaperLab」の概要と三浦工業による導入事例を紹介する。

自社のあるべき姿を考え抜き、ESG/SDGsに取り組んでほしい

1999年に創刊した『日経エコロジー』は、2018年に『日経ESG』と名前を変えた。『日経エコロジー』の創刊当時から現在まで編集に携わってきた日経ESG経営フォーラムの斎藤事務局長にESG経営やSDGsについて話を聞いた。

──現在、社会的にも環境だけでなくESGとして語られることが増えています。それによる変化はありましたか。また、ESGとSDGsはどのようなつながりあるのでしょうか。

斎藤:過去、一般企業が「環境経営」に取り組み始めたころは、社内への浸透がなかなか進みませんでした。それが現在、取り組みが「ESG」に変わったことで、テーマが環境だけでなく社会やガバナンスに拡大し、社内への浸透が進めやすくなっています。

ESGの考え方を社内に浸透させるために担当者が行うべきことは、(1) トップの説得、(2) 従業員の意識向上、(3) 本業への落とし込みの3つです。ESGは元々ESG投資からきていることもあり、その取り組みは株価に反映されやすい側面があります。そのため(1)は、環境だけの時よりも説得が容易になります。(2)についても、長時間労働や職場環境など働き方に関わるため、従業員が関心をもちやすい。ただ、(3)は簡単にはいきません。そこで強力な後押しとなるのが「SDGs」だと考えています。

SDGsは、17の目標と169のターゲットから構成されています。17の目標は漠然としていますが、169のターゲットは、例えば「2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する」といったように、個別具体的な目標が掲げられています。これを読み込むことで自社は何ができるかを判断できるようになります。企業向けのツールとしては、「SDGコンパス」があります。これは企業がSDGsに取り組む5段階のステップを示したものです。ステップ1は「SDGsを理解する」、2は「優先課題を決定する」、3は「目標を設定する」、4は「経営へ統合する」、5は「報告とコミュニケーションを行う」と書かれています。ESGを本業に落とし込む時に、便利な道しるべとして使うことができるでしょう。

──ESGの最新動向を教えてください。

斎藤:7月中旬、ニューヨークにESG経営の視察に行き、ICCRという主に人権問題を扱うシンクタンクのようなNGOを訪問しました。ここでは機関投資家と連携しながら、多国籍企業のサプライチェーンに不公正や不正義がないかを調査し、企業活動の改善を促しています。つまり、ニューヨーク株式市場に上場する企業は、常にこうしたNGOの監視の目にさらされています。おそらく日本も今後こうした方向に進んでいくでしょう。既に日本でも、発注した先の企業の労働条件はわからないでは済まなくなりつつありますが、この流れは強まっていくでしょう。

──今回の三井住友銀行によるSDGsセミナーをご覧になって、どう感じましたか。

斎藤:企業をサポートする金融機関が、こうしたセミナーを開くことで、SDGsやESGが経営に与えるインパクトを広く知らしめるよい機会だと思います。今回神戸で行われたことも、東京に比べ情報に触れる機会が少ない地方の企業に対して、知識の底上げを図る意味で有意義です。

──セミナーで登壇したエプソンの「PaperLab」をどう評価しますか。

斎藤:先ほどESGやSDGsを本業に落とし込むのは難しいと言いましたが、PaperLabは、それを実際の製品で実現した極めてユニークな好事例です。PaperLabのユーザーを何社か取材しましたが、導入時に見込んでいた資源の有効利用に加え、新たに障がい者の雇用の場を生み出すなど、当初の想定を超えて使われていました。PaperLabが、エプソン自身のESG経営をけん引していると同時に、ユーザー企業のESG経営にも貢献しています。今回セミナーに登場した三浦工業はその典型例と言えるでしょう。

──これから本格的にSDGs、ESG経営に取り組もうという企業へメッセージをお願いします。

斎藤:企業は利益を生み出し、株主に還元する組織ですが、それとは違う価値観による存在意義を追求し企業の価値を高めるのが、ESG経営です。すなわち、売り上げや利益ではない角度から、自社をどうしたいのか、それを真摯に考え抜くことが大切です。社会の中で我が社の目指す姿を明確にし、トップから従業員まで考えを一つにして、取り組んでいただければと思います。

環境保全や障がい者雇用に貢献するPaperLab

セミナーでは、エプソン販売の産業機器営業部 部長 宮下正浩氏が、PaperLabを紹介した。

エプソン販売
産業機器営業部 部長
宮下 正浩 氏

通常の製紙は、大規模な工場で大量の水を使って行います、それに対して、エプソンの乾式オフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)」は、ドライファイバーテクノロジーにより、オフィスで水をほとんど使わず使用済みの紙を新たな紙に再生します。

※ 機器内の湿度を保つために少量の水を使用します。

※ 機器内の湿度を保つために少量の水を使用します。

エプソン販売
産業機器営業部 部長
宮下 正浩 氏

具体的には、まず使用済みの紙を粉々にして繊維化し、それを結合素材「ペーパープラス」により結合して加圧成形することで新たな紙を生み出します。ペーパープラスには、ホワイトの他、イエロー、シアン、マゼンタがあり、色紙を作ることもできます。厚さも通常のコピー用紙だけでなく、名刺などに利用できる厚紙も作製可能です。

PaperLabをご利用いただくことにより、お客様は社内で機密書類を繊維にまで分解できるので、外部に流出しては困る情報を社外に出さず完全に抹消できるようになります。このような機能を評価いただき、金融機関や自治体で多数ご利用いただいています。さらに、新たな仕事の創出により、障がい者雇用に活用される企業も増えています。

また、従来の紙の再生には紙の回収や販売に輸送が欠かせず、再生自体にも多くの水やエネルギーを必要としました。それに対してPaperLabは、オフィス内の小さなサイクルで紙の再生ができるので、CO2の排出を抑制でき環境保全に貢献できます。シュレッダーにかけて捨てられる紙も削減でき、資源を大切にする意識を高めることもできます。

PaperLabを1年間稼働した場合、水の使用量では既存用紙が7,623㎥※2なのに対しPaperLabは71㎥※1、CO2排出量が既存用紙は15t-CO2※3なのに対しPaperLabは11t-CO2※1、森林資源保全に関しては既存用紙が木材85本※4を使うのに対しPaperLabは0本と、高い環境性能を実現しています。

※1 東京都市大学 環境学部 伊坪研究室算出(2018)
※2 P.R.VAN OEL&A.Y.HOEKSTRA(2018)
※3 日本製紙連合会2011年公表値に廃棄物燃料分および流通段階分を加算(伊坪研究室算出:2016)
※4 古紙ハンドブック2017、環境省温室効果ガス算定事例(2012)

※1 東京都市大学 環境学部 伊坪研究室算出(2018)
※2 P.R.VAN OEL&A.Y.HOEKSTRA(2018)
※3 日本製紙連合会2011年公表値に廃棄物燃料分および流通段階分を加算(伊坪研究室算出:2016)
※4 古紙ハンドブック2017、環境省温室効果ガス算定事例(2012)

今日のテーマであるSDGsに関しては、「6 安全な水とトイレを世界中に」、「8 働きがいも経済成長も」、「9 産業と技術革新の基盤を作ろう」、「11 住み続けられるまちづくりを」、「12 つくる責任、つかう責任」、「15 陸の豊かさも守ろう」にそれぞれ貢献します。このような性能が評価され、昨年は第1回エコプロアワードで経済産業大臣賞を受賞しました。

当社は新宿ミライナタワーオフィス内に「環境配慮型オフィスセンター」を開設し、2台のPaperLabで紙を再生すると同時に、レーザー方式の8分の1という低消費電力で1分間に100枚の出力が可能なインクジェット複合機「LX-10000」を利用して、省資源・省エネルギーと効率化を実践しています。これにより、年間30%(約130万枚)のコピー用紙購入量削減を目指しています。

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