2020年に向けてスポーツに大きな関心が集まることが予想される中、エニタイムフィットネスは新たな取り組みとして「社会とつながろう!OPENフィットネス宣言」を行った。一方、FC今治代表岡田武史氏は、スポーツビジネスを通じて日本のスポーツ環境を変え、社会とつながろうと活動している。岡田武史氏とエニタイムフィットネスを運営する株式会社Fast Fitness Japan の土屋敦之社長に、スポーツと社会の関係について語り合っていただいた。

岡田武史氏と土屋敦之氏のインタビュー写真

岡田 武史 氏

1956年大阪府出身。大阪府立天王寺高等学校、早稲田大学でサッカー部に所属。古河電気工業に入社しサッカー日本代表に選出。引退後は1997年に日本代表監督となり史上初のW杯本選出場を実現。2014年、四国リーグFC今治のオーナーに就任。日本サッカー界の「育成改革」、そして「地方創生」に情熱を注いでいる。

土屋 敦之 氏

1967年長野県出身。野村不動産株式会社、メガロスを経て、2010年より国内におけるエニタイムフィットネス創業の中心として全業務の開発・管理を統括する。2017年、株式会社Fast Fitness Japanの代表取締役社長に就任。

マシンのリユースで島民のQOL向上、交流人口向上、
環境問題に対する貢献へ

土屋:エニタイムフィットネスでは、会員に常に良い環境で運動していただきたいので、品質を維持するために有酸素マシンは5年で入れ替えています。もちろんスタッフの対応といったソフト面も重要ですが、最大のサービスはハードとして最新の機器を提供することだと考えているからです。昨年秋に発表した「OPENフィットネス宣言」の具体施策のひとつである「Healthier Islands Project(ヘルシア アイランドプロジェクト)」は、この入れ替え時に発生する中古マシンを島の人々に届けよう、というプロジェクトです。まず第一弾として沖縄の座間味村に寄贈することになっています。

岡田:それはすばらしいですね。今治にもたくさん島があるのでぜひお願いします。

土屋:座間味ではオフシーズンに人を呼ぶために、セーリングナショナルチームの合宿を誘致していますが、島にフィットネスマシンがあれば、そのようなスポーツチームの誘致がしやすくなり、さらに、島民の健康維持・増進にも役立ち、島に暮らす人々の QOL も向上します。マシンを廃棄せずリユースするので環境にも優しいプロジェクトです。そういえば、岡田さんは今治で環境教育にも携わられていますね。

岡田:わたしは環境活動を40年以上やっていて、倉本聰さんが主宰する富良野自然塾を体験していたこともあり、今治自然塾に関わっています。「しまなみ 野外学校」という9泊10日の無人島体験などのプログラムも運営していますが、これは、我々人間が本来持っている氷河期や飢餓期を越えてきた強い遺伝子にスイッチを入れるためのプログラムです。便利で快適な社会ではその遺伝子にスイッチが入らない。子どもたちに遺伝子にスイッチを入れるチャンスを与えたいという思いで始めました。野外でやるとどれだけ科学技術が発達しようが、金融工学が発達しようが絶対勝てないものがあると気づくんです。教科書で学ぶのではなく、体験として知る。このプログラムは社員教育にもたくさん利用されています。エニタイムさんはどのような社員研修をされていますか?

土屋:社員教育といえるかどうかわかりませんが、今回の「OPENフィットネス宣言」は、もちろん外に対して発表したものですが、社内やFCオーナーなど、エニタイムに関わる関係者に対してのメッセージという側面もあります。現在、社員が100人、アルバイトをいれたら300人、FCを入れると何千人という人がエニタイムのブランドに関わっています。ここ2年くらいの間に300店舗以上と、急激に店舗が増えているので、ロイヤリティが薄まってきているのではないかという危機感がありました。そこで、ブランドの価値を共有するために国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)という外部の指標を使うことで、みんなに理解してもらえるのではないか、と考えたことが「オープンフィットネス宣言」につながりました。

岡田武史氏のインタビュー写真

自分の仕事が社会とつながっている実感
企業もフィロソフィーが大切な時代に

岡田:わたしたちは『次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する。』という企業理念を表明していますが、その背景には、今の若い人は「やりがい」とか「夢」がないと動かないのではないか、という実感があります。彼らをひとつの方向を向かせるためには、フィロソフィー、ビジョン、理念が一番大事ですね。サッカー監督時代も必ずチームのフィロソフィーをつくって、徹底的に落とし込んでいましたが、上手くいかなくて困った時に立ち返るフィロソフィーが重要になってきている時代だなと思っているので、土屋さんのお話はとても共感を覚えます。

土屋:「社会創りに貢献する」というフィロソフィーはエニタイムフィットネスの『ヘルシアプレイスをすべての人々に』という理念とも共通します。

岡田:自分がやっている仕事が社会の役にたっている、人に喜んでもらっている、というのが見えると嬉しいですよね。逆に、自分のやっている仕事が何につながっているのかよくわからないとモチベーションが上がりにくいと思います。

土屋:わくわくしないですよね。エニタイムは「誰もが健康的に暮らせる、心豊かな社会の実現」を目指していますが、心も身体も健全であるためには、フィットネスジムの運営だけやっていればいいというわけではないと考えています。そのことを、社員をはじめ関係者みんなにわかってもらうために「OPENフィットネス宣言」を発表し、メディアにリリースすることによって社員やオーナーに対しても改めて理解してもらいたかった。どうしたらいいんだろうという時に、エニタイムのようにFCを巻き込んでブランディングしていくためには、どの企業にも通用するSDGsがふさわしい。エニタイムフィットネスは「こうなったら世界がよくなる」という指標であるSDGsに基づいた企業活動をしている、ということを理解していれば、迷った時に「これは社会のためになるのかどうか」を判断の基準にできます。

岡田武史氏のイメージ写真

地域を活性化することが自分たちの立つ場所をつくる
社会とつながることでみんなが元気になる

岡田:SDGsは17項目ありますが、どの項目を重点的に取り組んでいきますか?

土屋:まずは具体的な施策として、先ほどお話したリユースマシンを島に寄付する「Healthier Islands Project」を行うことで、島の人々の健康に貢献することはもちろん、「海や陸の豊かさを守る」ことにもつながると考えています。また、本業であるフィットネスジムの運営自体が「すべての人に健康と福祉を」というSDGsの目標に合致していると考えています。例えば、総合スポーツクラブのような大規模な施設ではマーケットが小さすぎて進出できない地域でも、エニタイムの規模だと出店できます。今までスポーツクラブがなかったエリアにエニタイムフィットネスができると、それまでは仕事が終わってからは飲みに行くかパチンコに行くかしかなかった街に、運動ができる環境ができた、身体を動かせるフィットネスが初めてできた、という純粋な喜びを感じていただいていると思います。

岡田:フィットネスで街や地域を変えていっているという実感がありますね。

土屋:まさに「Healthier Place」が提供できて、地域の人たちが運動することで元気になって、街自体が活気づいている実感があります。また、エニタイムは相互利用できるので、旅行先、出張先でも利用できます。特に沖縄は夏になるとゲストの利用が増えるのですが、「Healthier Islands Project」で座間味を知って、エニタイムの40万人の会員のみなさんが「行ってみようかな」と思ったら、座間味の活性化にもつながる。そういう地域活性につながるムーブメントが起きたら、よりエニタイムフィットネスの価値が上がるのではないかと考えています。岡田さんも、今治の地域全体を活性化する活動をされていますよね。

岡田:今治の街の中心に更地ができ、百貨店がなくなり、港までの長い商店街は昼間誰も歩いていないという状況を目の当たりにし、これではFC今治が成功しても、自分たちが立っている場所がなくなってしまうという危機感を抱きました。そこで、FC今治を頂点に今治のジュニア、ジュニアユース、ユースのチームと一緒になって一つのピラミッドを作る「今治モデル」をつくって「OKADA METHOD」を共有し、普及、指導者養成などをしていく、そうしたら全国から若者や子どもがくるだろう、指導者も勉強しにくる。その人たちと地域の人たちをつなげたら、活気に満ちた街にならないだろうかと考えたのです。

土屋:自分たちの立っている場所が元気がなくなったら、という危機感はエニタイムも同じ感覚です。欧米では18%~20%近くあるフィットネス参加率が、日本は3%台なんです。少子高齢化社会でフィットネスのマーケットは縮小するのではないか、と言われますが、参加率を欧米並みに、少なくとも今の倍にすればマーケットは大きくなる。そのためには、今後も地方に進出することによって参加率を上げ、自分たちの立ち位置を確保できると考えています。フィットネスに通うことが当たり前になれば、参加率も上がっていくだろう、オープンフィットネス宣言はまさに、フィットネスクラブが街のインフラのようになることを宣言しているんです。

岡田:フィットネス人口が増えることが地域の活性化につながっているというのはいいですね。

FC今治がJ2にあがるためには1万人、J1にあがるためには1万5千人規模のスタジアムが必要なのですが、わたしは"複合型スマートスタジアム構想"を掲げています。検診センター、トレーニングセンター、ホテル、ダンス教室、温泉などが併設された複合型スタジアムを建設して、トップアスリートが年に1回ボディチェックとトレーニング指導受けて、温泉に入りに来るような、スポーツマンの聖地のような場所を作れないだろうか、という夢を語っています。スタジアムをつくることで今治全体の活性化を図ろうという、法螺に近い夢を語っているんですが(笑)、でもこれまでも夢を語っていたら本当に5000人のスタジアム「ありがとうサービス. 夢スタジアム」ができてしまいました。

土屋:トップが夢を語るのはとても大切ですよね。岡田さんが語っている夢は、自分の会社だけの夢ではなく、地域や社会にとってもよいことであるから、みんながついてくるんでしょう。たくさんあるフットボールチーム、フィットネスクラブの中で選ばれるためにトップが「ビジョンを語る」ことも重要な役割としてあると思います。岡田さんは法螺という言い方をされましたけれど、ビジョンを語れば自ずと責任も発生するので、実現に向けて頑張る。経営は決断することも重要ですし、ビジョンを語ることも重要だし、それを実現するためにどうやって落とし込んでいくかということも重要だと思います。そしてそれがちゃんと社会とつながっていることが大切なことだと思います。エニタイムがSDGsに取り組むことも、自分たちの会社のためだけでなく、社会のためになることに取り組むということが肝だと思っています。これからも固定概念にとらわれず、過去の成功例にとらわれず、新しいことをやっていきたいですね。

「社会とつながろう!OPENフィットネス宣言」とは

フィットネスを、非日常ではなく、日常へ。ステータスではなく、スタンダードへ。フィットネスをより身近な存在にするために、エニタイムフィットネスは2018年10月に「OPEN フィットネス宣言」を発表した。

「OPEN フィットネス宣言」は、「Healthier Placeをすべての人々へ!」というスローガンを掲げるエニタイムフィットネスが、さらに社会と積極的につながることを目的とした活動のスタートを宣言したものである。
第1弾の活動として「Healthier Islands Project」と「FLOW health TEC」を発表。
今後、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)に即した様々な活動を行っていくという。

「OPEN フィットネス宣言」を発表時の写真

その背景にあるのは、人口に対するフィットネス参加率3%という、日本のフィットネス業界に壁として立ちはだかる参加率の停滞である。その壁を突破するためには、フィットネスクラブをこれまでのような特別なステータスではなくスタンダードな存在に、あるいは非日常から日常の存在へと変え、もっと社会とつながっていくことが重要であると、いうのがエニタイムフィットネスの戦略だ。

第1弾の具体施策である「Healthier Islands Project」とは、店舗のリニューアル時に発生する入替えマシンを日本全国の離島に寄贈するプロジェクト。マーケットとしては小さすぎてフィットネスクラブが進出しづらい離島にフィットネスマシンを寄付することで、島民の健康維持・増進、QOL 向上に貢献するのはもちろんだが、スポーツチームの合宿や大会などを誘致しやすくなる、エニタイムフィットネスの会員が島を訪れるなど、離島の交流人口が増え、島の暮らしの活性化も期待できる。まさに、Healthier Placeを島の人々に届ける活動だと言える。もちろん、マシンを廃棄することなくリユースすることで環境にも優しい活動であるため、海や陸の豊かさを守ることにも繋がると言える。現在、沖縄の座間味村への寄贈が決まっているが、既に多くの島から問い合わせが来ているそうだ。

3月には国内500店舗を突破するエニタイムフィットネスは、その企業活動自体が「すべての人に健康と福祉を」というSDGsの目標と合致している。さらに、スペシャルオリンピックス日本(SON)の支援、高校生が無料利用できる「ハイスクールパス」の運用など、SDGsに即した活動を展開しているが、今後は、SONアスリートの雇用や、フィットネスジムに求められる役割、機能などを専門家と検証して住み続けられるまちづくりに貢献など、さらにSDGsの目標に取り組んでいくという。

フィットネス業界でいち早くSDGsを掲げたエニタイムフィットネスに今後も注目していきたい。

株式会社Fast Fitness Japan

https://www.anytimefitness.co.jp/