|シリーズ| Society 5.0は「食」の未来を救えるか 日経BP総研 Presented by Hitachi|シリーズ| Society 5.0は「食」の未来を救えるか 日経BP総研 Presented by Hitachi

第1回
豊かな日本の“食”はいつまで楽しめる?
AIやIoTが未来の食卓を守る

「しらすうなぎの漁獲量減少で、うなぎはいつまで食べられるのか」「おいしい野菜を作る農家は存続できるのか」。世界が注目する和食・WASYOKUの国、日本。これほど豊かな食文化を育み、安全で高品質な食べ物を安価に手に入れられる国はないだろう。ただ、楽観できることばかりではない。日本の豊かな食を維持していくことはたやすくはない。様々な社会課題によって、個々のニーズを満たせなくなる可能性があるからだ。データに基づいて産業そのものを変革する第4次産業革命、社会を変えるSociety 5.0が、生産から流通までを含めたフードチェーンを守り、未来の食卓を豊かにする。

身の回りには、安全な食べ物があふれ、ぜいたくを言わなければワンコインでお腹を満たすことができる――。現在の日本は、そんな“豊かな” 食に恵まれている。「ミシュランガイド」に掲載されている星付きの飲食店数は、東京版が世界一だ。

対価さえ払えば、食べたいものを、食べたいときに食べられる。そんな今の日本の状態を、多くの消費者は当たり前のように思っているかもしれない。しかし、その食卓を支えている食材の生産体制や流通の基盤は、信じているよりも脆弱(ぜいじゃく)で、多くの課題が内在している。

典型的な例がうなぎである。ニホンウナギは、環境省が2013年に絶滅危惧種に指定した。うなぎを食べようとすれば、大枚をはたく必要がある。天然が駄目でも養殖なら、と思うかもしれないが、稚魚であるしらすうなぎは天然であり、その漁獲量は過去50年以上にわたって減り続けている。

人の手で作り出せる野菜も、先行きは必ずしも明るくない。スーパーマーケットの店頭などでは、安全な有機野菜やおいしい野菜が、生産者の顔写真付きで売られるようにもなった。「こんな真面目そうなおじいさんが作っているのか」と安心して買っている人も多いことだろう。ただ、そこに写っている人たちに若者は極めて少ない。日本の農業では極端な高齢化が進んでいるのだ。農業就業人口175万3000人の平均年齢は66.8歳と企業人の定年を超え、高齢化は先進諸国の中でも突出している(数値は2018年12月27日時点、農業構造動態調査より)。農業は安全で高品質な作物を作ろうとすれば、相応の知恵と技が求められるが、それを継承する者がいないまま失われつつある。

【図1】農業従事者の推移【図1】農業従事者の推移

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安全な食材、安定した食料供給を維持していくうえでは、IoT、人工知能(AI)などの先端技術を活用し、データに基づいて産業そのものを変革する第4次産業革命が鍵を握ります。ただし、より便利かつ安心して生活できるデータ社会を築くには、さまざまな仕組みづくり・枠組みづくりが必要です。そうした第4次産業革命のポイントと課題について、世界経済フォーラムの第4次産業革命センター長を務めるムラット・ソンメズ氏と、日立製作所の執行役常務CTO(最高技術責任者)である鈴木教洋氏が対談しました。こちらの対談記事も、ぜひご覧ください。

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