モノよりコトの時代。 今こそ競争力の高い組織へ

日本は、失われた20年を超えて、失われた30年を迎えてしまったと言われている。高度経済成長期を経て、世界トップクラスの経済大国となった日本だが、いつの間にか世界から取り残されつつあり、2050年代には日本は先進国でなくなるという予測まで出てきている。

一方で、人口減少などによる慢性的な人手不足も企業にとっては大きな課題となっており、働き方改革も進んでいく中、生産性や業務効率の向上を目指すことが企業にとって急務となっている。

このような状況の中、「管理職0、階層0、チーム力∞」のバリフラットモデルを考え出し、フラットな組織を強みとして業績を伸ばしているのが株式会社ISAOだ。ISAOでは、組織のあり方をどのように考え、チーム力や生産性を向上させるためには何が重要だと考えているのだろうか。

ピラミッド型の組織では価値を発揮し続けられない

「元々は我々も、一般的な企業と同じように階層が深いピラミッド型の組織構造でした。しかし、そのような組織構造ではさまざまな課題が発生し、内向きの仕事ばかりが増えてしまうと考え、フラットな組織へと変革したのです」と株式会社ISAO代表取締役の中村圭志氏は話し、日本の経済低迷は、日本をリードしている大企業の組織形態に問題があると説明する。

ピラミッド型でヒエラルキーな構造は、バブル前までの高度経済成長期には有効で、明確な目標があって上から下へ命令が下る労働集約型産業で効力を発揮し、日本は大きく発展してきた。高度経済成長期には、プロダクトが中心で、そのプロダクトは成熟しきっておらず、高機能化して付加価値が付くことによってユーザーが金を払って購入し、モノが売れていく時代だった。しかし、多くのプロダクトが成熟してきた現在は、多少スペックが向上してもユーザーには買ってもらえず、コモディティ化が進んできている。

また、インターネットが登場してきて世の中がボーダレスになったことで、情報の拡散とキャッチアップのスピードが速くなってきていると説明する中村氏は、ユーザーが高機能化を望まなくなってモノが売れなくなっただけでなく、高機能化してもすぐにキャッチアップされてコピーされてしまうことも指摘する。モノよりコト、プロダクトよりエクスペリエンスの時代となってきており、これまでのピラミッド型の組織形態のままでは、世の中に価値を発揮し続けることが難しくなってきているのだ。

ピラミッド型の組織は内向きの仕事が増えてしまう

ユーザーに向けて生産を行ったり、サービスを提供することを“外向きの仕事”と表現する中村氏は、制度疲労を起こしている企業は、“内向きの仕事”が増えてしまっていると指摘する。すなわち、社内の根回しに時間をかけたり、承認までに多くのハンコが必要となったり、資料作りや予算策定などに時間がかかってしまっている状態だ。

内向きの仕事を減らして、外向きの生産などの仕事を増やさなければならないと話す中村氏だが、ピラミッド型でヒエラルキーな組織では多くの課題があり、内向きの仕事を減らすことは難しいと説明する。

一般的に、多くの企業では、シニアが上に、若い人は下の階層に置かれている。以前は、経験のある人がリーダーとして引っ張っていくことで成果を出すことができたが、モノよりコトの時代となった現在は、過去の経験が通じない局面が増え、発想や行動力が重要となってくるというのだ。たとえば、サービスとインターネットが切り離せない現在、ITがよくわからないシニアよりも、最近入社してきたデジタルネイティブの若い人のほうがユーザーや世の中をよく理解でき、アイデアを豊富に出せる可能性が高い。

「ピラミッド型の組織では、若い人が下にいて、よいアイデアを実現させようとしても、上の人がITや世の中を理解していないために否定されるということが起こっています。せっかくよい企画を出しても、上の人が理解できない部分が削られ、実現する頃には丸くなった面白味のないものとなってしまっています。また、承認までのレポーティングラインが長いため、判断が遅れ、サービスのリリースまでに時間がかかってしまうことも問題です」と中村氏は話す。

一方で、闇雲に組織をフラットにすることが必ずしもよい結果を生むとは限らないと中村氏は指摘する。「フラットにすると、さまざまな人に権限が移譲されることになりますが、そこで問われるのが判断の質です。権限移譲された人たちの判断が自社の利益や価値観に沿ったものなのか、リスクアセスメントが行われているかなど、判断の質をどのように上げるかが非常に重要になってきます」。

組織構造を変えなくても判断の質を底上げすることは可能

判断の質は、年齢に関係なく、いかに必要な情報を持っているかがカギとなると中村氏は話を続ける。「これまで、ピラミッドの上のほうにしか持っていなかった情報をオープンにして質を上げるための材料を誰もが使えるようにすれば、判断の質を底上げできます。情報をオープンにし、それぞれの行動もオープンにすることで、判断の質を上げ、誰かが間違った判断や行動を起こしても、すぐに修正することが可能です」。

では、どのような情報をどの程度オープンにすればよいのだろうか。中村氏は、企業の情報にはトップダウンとボトムアップの2つがあり、会社やマネジメントが供給する情報で、社員の判断の質を上げ、社員のリテラシーを上げることができると説明する。「トップダウンの情報は、全体会議や社内報、メールなどで伝えてもよいですが、それでは一方通行となってしまい、情報共有が十分ではありません。ツールを使って、会社と社員のエンゲージメントを高め、双方向で反応が見えるようにすることで、情報共有とコミュニケーションが進むと考えています」。

ボトムアップの情報とは、社員一人ひとりが日々、何に向かってどのような活動をしているかという情報のことで、これが肝心である。このような情報がオープンになることによってコミュニケーションが生まれ、相互理解が進み、企業としての価値観が醸成されると中村氏は言う。「相互理解と価値観醸成によるチーム力向上は、十数人の小さな会社であれば、同じ場所で仕事をしてコミュニケーションすることで実現できます。しかし、働く場所が部署や支社で分けられていたり、働き方改革で在宅勤務を行うメンバーがいる場合には、ボトムアップの情報共有とコミュニケーションができるツールを使う必要があります。もちろん、ISAOのようにフラットな組織を作ることも有効ですが、ピラミッド型の組織であっても、生産性を上げて、戦闘力の強い集団にしたいという強い意志があれば、ツールを使って情報と行動をオープンにすることで成果を出せる企業へと変革できると我々は考えています」。