何事もなく、予定通りに着陸すること

渡辺:仕事の醍醐味を感じるのは、どんな時でしょう。

本田:チーフになるとジャケットの色が違うこともあって、お客さまやグランドスタッフ、コックピットや整備など社内の他部門の方にも顔を覚えられるようになりました。そうなるとコミュニケーションも密になり、その方たちとの連携がうまくいった時の楽しさはかけがえがないですね。

佐藤:私は安全にかかわる部署にいますので、安全上何事もなく、予定通りに着陸した時が一番ですね。もちろん、それで「ありがとう」と言われれば、なお良いのですが。

渡辺:前々回、整備の方にお話をうかがって、JALの高い定時出発率に改めて驚きました。何事もないフライトというのは、それぞれの業務がきちんと果たされた結果そのもの、大変なことですよね。

本田:そうですね。「すごいことなんだよ」と後輩たちには伝えています。

渡辺:皆さん、フライトを重ねるうちにその実感を強くされるのですね。藤田副部長に取り組みの概要はうかがったのですが、具体的に行っていることをご紹介していただけますか。

佐藤:安全に関しては、不安全事象をゼロにするために何ができるかを考えています。たとえば、集まったデータからこの機材のこの手荷物収納棚が開きやすいといった事象を確認したら、中にテープを付けて荷物が落ちにくいようにしたり、手荷物収納棚がしっかり閉まっていることを確認するための触手棒を開発、導入しました。また、火傷防止の観点から、国内線では飲み口付きの蓋を導入しています。傷病対策としては、機内に載せている医療キットを常に最新のものにするようにしています。

お客さまに一歩踏み込んだコミュニケーションを模索

渡辺:お話をうかがっていると、経験豊富な現役CAの方でないと対策として実際に何が必要かがわからない分、企画はできませんよね。サービスももちろんそうだと思うのですが。

本田:ここまで何もないのが良いと言ってきましたが、それだけでは世界一選ばれるエアラインにはなれません。フライトを単なる移動手段に終わらせず、少しでもお客さまに感動や印象に残るような体験を提供したいという気持ちもあります。

たとえば、国内線では自分の出身地や縁のある土地のバッジをつけて乗務しています。また、CA、パイロット、整備士をデザインした折り紙を用意していて、CAの紙を折ると鶴に、パイロットの紙を折るとかぶとに、整備士の紙を折ると飛行機になるようになっています。こういった、お客さまとコミュニケーションをとるきっかけとなるツールを企画して導入しています。

渡辺:確かにインタビューでも、出身地が近いなど何かきっかけがあると、一気にお話をうかがやすくなることがあります。

JALの訓練施設で、ミールサービスを体験する渡辺さん

JALの訓練施設で、ミールサービスを体験する渡辺さん

本田:企画を通してわかったことですが、お客さまも実は私たちとの距離を感じておられたようです。私たちはお客さまの空間を邪魔しないように、でも心地よくして差し上げたいという気持ちはありましたが、もっと踏み込んでもよかったということを学びました。お食事を出す時も、今までは映画鑑賞の邪魔になるからとあまり説明しない場合もあったのですが、JALのおいしい機内食をより楽しんでいただけるよう、ソースの特徴などプレゼンテーションを積極的にするよう乗務員の背中を後押ししています。

渡辺:藤田副部長が「感知する力」とおっしゃっていましたが、お客さまの求めるものはお一人ずつ違うなかで、何がそっけないサービスになって、何が過度のサービスになるかを見分けるのは難しいですね。

本田:本当にそうです。お国柄もあって、日本の方は多くの場合、感知力の高い乗務員がさりげなく何かをしてさしあげる、気の利いた心遣いが喜ばれます。しかし、海外の方はそれでは満足いただけないこともあります。「お食事はいかがでしたか」、「こんなものもありますよ」など、より積極的なコミュニケーションが必要になってきます。同じようなお声がけを日本の方にした場合、過度なコミュニケーションだと感じられる方もいらっしゃいます。昨年JALは、航空業界の調査・格付け会社「SKYTRAX」の「ワールド・エアライン・スター・レーティング」で最高評価の5つ星を獲得しました。それは、海外のお客さまの視点を取り入れた結果もあると思います。私たち世代は、サービスはこうあるべきという考え方が染みついているので、考え方の転換も必要だと感じています。

渡辺:なるほど。あまりしつこく提案するのはご迷惑かもと考えてしまいがちですが、適度なコミュニケーションを図ることで満足度につながる場合もあるのですね。そういう考え方自体を皆さんで共有されているのですね。

佐藤:和やかな雰囲気を私たちがつくることでお客さまからも話しかけていただけるなど、コミュニケーションが深まると思います。なので、チーフは皆、乗務員間でのコミュニケーションを向上させようとと努めています。

渡辺:藤田副部長が人財が宝ともおっしゃっていましたが、もしかしたら次のフライトでお二人にまた会えるかもしれないと思うと、自ずと次もJALのカウンターに足が向きます。機内で心に残るサービスを受けるという数字では表せない思い出が、お客さまが次もJALを選んでくださる気持ちにつながっていくのでしょうね。

後輩の成長が喜び

渡辺:後進の育成も重要な仕事だと思いますが、どのようなことを心がけていらっしゃいますか。

佐藤:指導しなければならない時は、失敗を含めた経験談や理由を伝えるようにしています。そして、みんな失敗するんだと思ってもらって、そこからじゃあ自分はどうするかを自ら考えてもらう材料にしてもらえればと思っています。

本田:私は、いかに成功体験をさせるかを心がけています。たとえば、後輩に「あのお客さまに、こんな風に話しかけてきてごらん」と言って送り出すと、お客さまと打ち解けて会話が弾んだりする。そういうことがあると、それだけでグッと伸びるんです。

渡辺:伸びる時というか、大きく変わる時期ってあるんですね。

本田:ただ、それが私のフライトではない時もあります。その時は、ちょっと悔しいというか、私がそのきっかけを作りたかったと思うこともありますね。

渡辺:後輩が伸びていくのをご覧になるのは、嬉しい瞬間なんですね。

佐藤:そうですね。こういうことがあったと後輩が報告に来てくれるだけで、すごく嬉しいですね。

渡辺:それはやはり、お互いに命を預け合いながら業務し、共にお客さまの命をお預かりし、守っているという強いつながりからなのでしょうね。最後に、それぞれお客さまへのメッセージをお願いします。

佐藤:日々いろいろな国の、いろいろな年代のお客さまと接しています。サービスを提供する立場ではありますが、いろいろな文化を伝える発信者として業務にあたっていきたいと思います。たとえば先ほどの折り紙を紹介することで、日本のファンになっていただける海外の方を増やしていきたいです。

本田:まずは、お客さまがJALを選んでくださったことに感謝し、それをお伝えするためにサービスに励みたいです。そして、そのフライトが忙しい毎日の中でのほっとできる楽しい時間になればと思っているので、お話しする機会があればすごく嬉しいです。お客さまの多くは万一機内で不快な思いをされてしまった際にも、それを飲み込んだまま降りてしまわれることがあります。そういう場合は、白いジャケットの我々にぶつけていただければと思います。何でも受け止めさせていただき、よりよいサービスに繋げていきます。

渡辺:これからも、どうか良いフライトを。今日はありがとうございました。

渡辺 真理

1967年6月27日生まれ。神奈川県横浜市出身。横浜雙葉小中高、ICU国際基督教大学卒業。1990年TBSにアナウンサーとして入社。『モーニングEye』『筑紫哲也 NEWS23』などの番組を務めた後、1998年にフリーのアナウンサーとなり、テレビ朝日『ニュースステーション』、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』などに出演。現在は、読売テレビ『そこまで言って委員会NP』、雑誌『eclat』連載など、テレビ、ラジオを中心に活動中。

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