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本麒麟、圧倒的大躍進!

爆発的なヒットの理由を経済アナリスト森永卓郎が解説

経済アナリスト森永卓郎

今“新ジャンル”が活況を呈している。起爆剤と言われているのは、キリンビールの「本麒麟」だ。
ドイツ産ホップの一部使用と独自の長期低温熟成、少し高めのアルコール度数(6%)で実現した
「ビールに近い力強いコクと飲みごたえ」が高く評価され、昨年3月の登場から約3カ月で1億本(350ml換算)を販売。
今年2月には早くもリニューアルを施し、同月に累計4億本突破と、過去10年の同社新商品で最速、売上No.1を記録した。
もはや業界の荒波に抗う常識破りの大躍進を見せつける「本麒麟」。
その“際立つ強さ”の理由を、経済アナリストの森永卓郎氏が本音で語り、分析する。

キリンの本気

新境地を拓くフロントランナーとして
市場全体の底上げに大きく寄与

「本麒麟」の大ヒットが呼び水となって、各社からも新商品が続々登場し、新ジャンル市場はこれまで以上に活況を呈しています。ビール好きをターゲットにした商品が出揃ったことで、マーケットに新たなインパクトが生まれ、新ジャンルに向ける消費者の目も変わりました。実際、昔に比べると新ジャンル商品はどれも格段に質が高まっています。「ビールが飲みたいけれど、節約志向の経済的観点からガマン」していた消費者にとっては、喜ばしい状況といえるでしょう。

この流れを加速させたのが「本麒麟」であることは間違いなく、いわばフロントランナーそのもの。時代のニーズを先読みした商品開発、リニューアルにより、新ジャンルがせめぎ合うなかでも、確固たる存在感と他を寄せつけない圧倒的な躍進ぶりで市場をリードしているように私には見えます。

森永 卓郎 経済アナリスト

森永 卓郎経済アナリスト 獨協大学経済学部教授

1957年東京都出身。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社、日本経済研究センター、経済企画庁総合計画局等を経て、現在は獨協大学教授。専門はマクロ経済、計量経済、労働経済。難しい「経済」を紐解く、その語り口は解りやすく、軽妙である。テレビやラジオ番組のコメンテーター、パーソナリティーとしても活躍中。もう一つの顔は、自他共に認めるコレクター。ミニカーやフィギュア、携帯ストラップ、貯金箱、テレビ局の時計など、現在もいろいろなモノを集めており、50年間で収集した約10万点のコレクションを展示するB宝館を2014年にオープンしている。

そして、それほどの強さを持ちながらも、発売1年を待たずしてリニューアルに踏み切った英断にも、キリンの“本気”を感じます。そもそも、これだけ売れているのにさらに手を加えるというのは、すごく勇気のいること。テレビだって視聴率が高いときはいじらないのが鉄則です。でも「本麒麟」は、敢えてさらなる高みに挑戦して、みごと成功している。それも味づくりのコンセプトがしっかりしているからこそなのでしょう。

リニューアルしても本質的なうまさの構造は変わっていないところも、発売当時からのファンとしてはうれしいですね。

本格的なうまさ

チープなものが敬遠される時代
新ジャンルにも求められる
「本格的なうまさ!」

新ジャンルなのに、うまい。語弊を恐れずに言えば、それが「本麒麟」を初めて飲んだときの驚きです。もともと新ジャンルというのは、酒税を安くするために麦芽の使用量を減らして開発された、デフレ時代の産物。でもそれから十数年が経って、世の中の志向やニーズは大きく変わり、安ければいいという時代は終わりました。今の消費トレンドは、低価格であっても品質のいいものを選ぶこと。いわば、新ジャンルのように身近なものにこそ、“きちんとしたいいもの”を求める消費者が増えてきたのです。

森永 卓郎 経済アナリスト

そうしたニーズを着実に捉えて誕生した「本麒麟」は、まさに新ジャンルの革命児。原料のホップや熟成方法を一から見直し、「本格的なうまさ」を妥協なく追求する姿勢が、“きちんとした味”に現れています。ホップの風味といい、飲みごたえのあるアルコール度数といい、ビール好きを満足させる要素がバランスよく仕込まれていて、本当にうまい。これほどのヒットを記録するのも納得です。

ヒットの要因はもうひとつ、パッケージデザインにもあります。聖獣ロゴの金色に、目を惹く赤を組み合わせたことで、よりゴージャスな雰囲気を醸し出している。先のリニューアルで、赤と金の色味や聖獣ロゴの配置にも一層の上質感が加わりました。チープなものが敬遠される今の世にあって、この豪華さや“王道”感は、本物を求める消費者の心にまっすぐ響いてくるんですね。それで手に取って飲んでみた人が、そのうまさに魅了され、リピートし続けているというのが、今の驚異的な売り上げにつながっているのでしょう。

本音で語る

ビール好きの満足を目指す「本麒麟」
リニューアルでさらなる高みへ

本音を言うと、私はビール派です。最も味覚が研ぎ澄まされた状態で飲む最初の一杯は、おいしいビールを空けたいと思っています。でも「本麒麟」になら、その座を明け渡してもいい、というのもまた本音。それほどまでに「本麒麟」には、ビールに近い“力強いコクと飲みごたえ”を感じます。私はよく教え子たちと飲みに行くのですが、新ジャンルを飲み慣れた彼らに「本麒麟」を飲ませたら、きっと「ビールだ!」と勘違いして喜ぶと思いますよ。

このビール感は、リニューアルしてさらに高まっています。ドイツ産ホップ(一部使用)を増量したことで、味の深みはぐっと増し、それでいて後味のキレがいい。繊細な和食ともよく合って、飲むほどにスーッとのどに染みこんでいく感じです。だから、ついつい手が伸びてしまう(笑)。現在ダイエット中の私にとって、“最初の一杯”は“唯一の一杯”であることも多いのですが、その貴重な一杯を満足いくものにしてくれるのが、「本麒麟」なのです。

ビールに近い卓越したうまさと品質はもう変えるところはないほど完成していると言えますが、「本麒麟」は今後もたゆまず進化を重ねていくのでしょう。ビール好きの一人として、「本麒麟」とキリンビールの次なる挑戦に期待しています。

森永 卓郎 経済アナリスト