日経ビジネス電子版 Special
一番搾り歴代売上No.1
ビール新時代を拓く
「新・一番搾り」が愛される理由「新・一番搾り」が愛される理由
鈴木 郁真氏 キリンビール株式会社 マーケティング本部 マーケティング部 ビール類カテゴリー戦略担当 ビールチーム ブランドマネージャー
品田 英雄 日経BP総研 上席研究員
※歴代フルリニューアル後60日間の缶出荷実績

提供:キリンビール株式会社

長らく低迷の続くビール業界にあって、この約2年の間において2度のリニューアルを2度とも大成功させ、
今年5月には缶売上で前年比118%を達成したキリンビールの「新・一番搾り」。
同ブランドフルリニューアル全4回の史上においても、文句なしのNo.1売上を樹立した。
その強さはどこからくるのか。約30年間愛され続ける理由とは?
——「新・一番搾り」ブランドマネージャーの鈴木郁真氏に、日経BP総研の品田英雄が直撃する。

※歴代フルリニューアル後60日間の一番搾り〈缶〉出荷実績

引き算から生まれた
“飲みやすくて飲み飽きない”
おいしさ

品田:2019年5月、新しい時代の始まりとともに一番搾り歴代最高売上を記録した「新・一番搾り」。4月のフルリニューアルの成果がこの快挙に表れたわけですが、今回のリニューアルポイントについて改めて教えていただけますか。※歴代フルリニューアル後60日間の缶出荷実績

鈴木:リニューアルの目的は、ずばり「おいしさ」を進化させていくこと。というのも、おいしさこそが「一番搾り」の原点だからです。「一番搾り」の誕生は1990年。キリンビール創業の105年目にあたり、当時のキリンの持つビール造りに対する力をすべて注いで「一番おいしい生ビールをつくろう」というところから始まりました。その手法というのが、麦から最初に流れ出る混じり気のないうまみの詰まった麦汁のみでビールをつくる「一番搾り製法」なんですが、それが商品名の由来にもなっています。

品田:つまり、「一番搾り」は生まれながらにして、おいしさを極めるという使命をもっていると。でも、おいしさってなかなか数値化できないものですよね。30年それを追求し続けた結果、いま目指すべきおいしさの方向性とは?

鈴木:「一番搾り」の魅力は、何よりも素材の良さを引き出すこと。ビールにもいろいろあって、苦みが強いとかホップの香りが効いているとか、それぞれに特徴がありますが、「一番搾り」の場合は、とにかく麦のうまみをまるごと楽しめるというのが強みです。だからリニューアルに際しても、何かを足すのではなく、その延長線上にある“飲みやすくて飲み飽きない”おいしさを突き詰めていくことが最大の焦点となりました。

品田 英雄

品田:足し算ではなく引き算の発想ですね。足すのは簡単ですが、引くのは大変そうです。

鈴木:そうなんです。味やボリュームを変化させるリニューアルと比べて、引くのはものすごく難しくて。今回は、ホップの配合を変えることで澄んだ麦のうまみが感じられるように工夫しています。そこに至るまでは、温度や配合のバランスを細かく検証しながら何度も試醸を繰り返し、試飲を重ねてきましたね。ようやく「これだ!」というものができたときにお客様にも飲んでいただいたんですが、その反応が極めてよく、一発で高評価を得られました。その結果、前回のフルリニューアルから1年半足らずでの「新・一番搾り」登場となったわけです。

品田:2017年のリニューアルで手応えを得たおいしさの方向性をさらに推し進めたことに加え、それが時代の変化や人々の嗜好と相まって今回の大ヒットにつながったんですね。

鈴木:たしかに時代によってお客様の嗜好は変化しますし、ビールの飲まれ方も変わります。でも何が変わろうとも目指すのはただひとつ、「お客様がビールに期待することは何か」ということ。すべてはそこから始まります。

品田:お客様がビールに期待することとは?

鈴木:1番はやっぱり「おいしさ」、2番目は「飲みごたえ」です。他にもいくつかの上位項目の指標があって、それに照らし合わせると前回のリニューアルの方向性は間違っていなかったし、実際に売り上げも伸びました。ならば、そこをとことん進化させていこうというのが今回のリニューアルで、「素材の持つうまみをより高めつつ、飲みやすく飲み飽きない」という新しいおいしさにようやく到達することができたのです。

鈴木 郁真氏

「新・一番搾り」にしかできない
おいしさのプロモーション戦略

品田:売り上げを拡大させただけでなく、20代など若年層の購入者数を増やしているのも「新・一番搾り」の特徴です。

鈴木:デジタルマーケティングを強化した成果でもありますが、最大の要因はCMやプロモーションで「ビールを飲んでみたいな」という文脈をつくれたことかなと。「若者のビール離れ」などといわれていますが、それはビール業界のアプローチにも原因があったのではないかと思っています。2000年代に発泡酒や新ジャンルが登場して以降、それらのカテゴリーと比べると「ビールは特別」というイメージを醸成してきてしまった気もします。その中にあって、「新・一番搾り」はCMでもビールを純粋に楽しんでいる人たちの最高の笑顔を見せるだけで、あとは何も強要しない。

品田:なるほど。テレビや映画なんかでも、事前に制作側がどんなに仕掛けても結局は観た人の評価で視聴率も動員数も大きく変わる時代です。SNSの普及もあって、一人ひとりが体験したものが広く伝わり、それが思いも寄らぬ大ヒットを呼んだりする。そういう意味では、「新・一番搾り」のCMから伝わる「おいしそう、楽しそう」のインパクトはものすごい波及効果となっていますよね。

品田 英雄

鈴木:誰かが押しつけた価値観よりも、個人個人が好きなものを自由に選ぶ世の中になったのでしょう。ビールの楽しみ方も、100人いれば100通りあります。だから「新・一番搾り」がやっているのは、「こういうビールを選びましょう」とか「飲み方指南」などではなく、多様なビールの楽しみ方があるというのをいろんなタレントさんやシチュエーションで表現することで、お客様一人ひとりの「ビールの幸せ」に寄り添っていこうということなんです。

品田:お店を選ぶときも、最近はミシュランの星なんかの権威付けを気にすることなく、自分や自分と同じ価値観を持った人の感性を大事にする傾向にありますからね。その点、いろんな誰かがそれぞれのおいしい笑顔を見せるCMっていうのは強い。

鈴木:おいしいと人は自然に笑顔になるんですよね。それを見ている周りの人も、思わず飲みたくなる。でもそういうアプローチができるのは、「一番搾り」というブランドの特権だと思っています。おいしさと向き合って生まれたDNAを持つブランドだからこそ、ビールのおいしさを語ることは最も「一番搾り」らしい戦略となるんです。

鈴木 郁真氏

ビールは喜びをもたらす幸せの象徴
より多くの人に楽しんでもらいたい

品田:ビールの楽しみ方は人それぞれということですが、鈴木さんご自身はどんなときにビールをおいしいと感じますか。

鈴木:やっぱり、仕事終わりの一杯ですよね。あと、キャンプが趣味なので、土日は青空の下で「新・一番搾り」を飲んでいます。これがもう最高の喜びで(笑)。ビールの存在意義って、「いかに一日の喜びを提供できるか」というところにあると思うんです。ビールの歴史は大変古く、古代エジプトではピラミッドの建設で働いた人々にも配給されていたんですが、それはまさに「一日の喜び」ですよね。そうした喜びを現代の日本にもあまねく提供できるビールとして、「新・一番搾り」を育てていきたいと考えています。

品田:それは、何を喜びとするかというお客様の声を聞き続けていくことにもつながりますね。

品田 英雄

鈴木:まさにその通りで、お客様に「やっぱりビールっておいしいよね、幸せだよね」って思っていただけるブランドにしていくことが、我々の使命。でも、やるべきことはとてもシンプルなんです。「新・一番搾り」に限らず、キリンビール全体の姿勢にもいえるんですが、お客様をしっかり見つめれば、進む道はおのずと見えてきます。そこを目指して、あとは愚直に邁進するだけです。

品田:他を顧みることなくひたすらに突き進んだ結果が、「おいしさ」というある意味ど真ん中のところに行き着いた。そう考えると、「一番搾り」はどんな時代にあっても立ち位置のブレないブランドといえますね。

鈴木:そもそも「一番搾り」が商品名の由来であるという成り立ちからしてヒエラルキーと関係ないところに存在していて、「おいしさ」にも性別や人種の区別はないわけだから、結果的にダイバーシティの真ん中にいやすいんですよね。それと、ある時期からキリンビールが競合を見て動くのをやめたというのも大きい。ものづくりに関してマトリクスを用いたり、「競合がこうだから、うちはこうするんだ」という議論はいまではほぼありません。キリンビールという会社や「一番搾り」というブランドがもともと持っていたバリューに立ち返ったことが、結果的に好循環を生み出したんでしょうね。

鈴木 郁真氏

品田:多様性の中心に位置するというのは、それだけ万人に支持される包容力のあるブランドであるということ。売れるべくして売れたという事実がじわじわと実感できますね。ビールが売れない時代といわれる昨今では、いっそうその功績が際立ちます。

鈴木:私が思うのは、ビールが売れる時代は平和な時代だということ。ビールの売り上げって世の中の気分を明確に表していて、ビールを片手に仲間と語らったり、何かのお祝いに乾杯したりといった、幸せを象徴するシーンのひとコマでもあるんです。だから現状に甘んじず、もっともっと「新・一番搾り」で、より多くの人により多くの幸せや喜びをお届けしたいと願っています。

品田:それは、キリンホールディングスさんのコーポレートスローガンである「よろこびがつなぐ世界へ」とも通じる発想ですね。

品田 英雄

鈴木:はい。このスローガンはまさしくブランドの本質を突いていますね。ですから、みなさまが「新・一番搾り」を飲んだときにふと「一日の喜び」を感じていただけたら、キリングループの一員として、ブランドマネージャーとして、これほど嬉しいことはありません。

品田:私も、ブランドの向こうに鈴木さんのお人柄が見えたことで、ますます「一番搾り」のファンになりました。さっそく今夜、今日一日を振り返りつつ「新・一番搾り」を飲む喜びを噛みしめてみたいと思います。

鈴木 郁真氏