ケーススタディー 丸紅株式会社

若手部員のやりがいを引き出す組織活性化プログラム

写真:丸紅株式会社
情報企画部長
瀧本 愼平氏(中央)
情報企画部 副部長
公原 一氏(左)
情報企画部 総務企画課長
川端 洋輔氏(右)
丸紅株式会社
情報企画部長
瀧本 愼平氏(中央)
情報企画部 副部長
公原 一氏(左)
情報企画部 総務企画課長
川端 洋輔氏(右)

丸紅のコーポレートITを担う情報企画部では、システム構築・運用業務のアウトソース化の進展に伴って専門技術を習得する機会が減少したこと及びプロジェクトの大規模化に伴う若手の裁量範囲が狭まった結果、若手社員が働きがいを感じる機会が減ってしまうという状況に直面していた。そこで人材育成と組織活性化を目的に始まったのが「わくわくプロジェクト」だ。同部署のマネジメント3氏に詳細を聞いた。

業務効率化がもたらした働きがいの変化

大手総合商社の丸紅は、世界67カ国・地域で430の連結対象会社を持つ。グループ全体の社員数はおよそ4万3000名。取り扱う商材やサービスごとに営業本部を設け、多様な領域で事業を展開する。そうした中で、管理部門としてグループ全体のコーポレートITを担うのが情報企画部の役割だ。

情報企画部がグループ共通で活用可能なセキュリティー基盤やネットワークサービスの構築に着手したのは2014年のこと。以来、統合化したシステムのグローバル展開を進めながら、全社的な業務効率化に努めてきた。

他方で、システムのグループ共通化シフトはプロジェクトの大規模化をもたらす。こうした状況から、若手部員がプロジェクトリーダーを任されるケースは減少。おのずと仕事の裁量範囲も狭まり、若手部員が会社への貢献感や働きがいを感じる機会が減っていたという。

「現在の情報企画部の主な役割は、実際にシステムの設計や開発などを行うグループ会社やベンダーとのコーディネートです。若手部員からすれば、IT部門でありながら技術に触れる機会がなく、モチベーションが維持できないという課題がありました。また、残念ながら部署の定着率や社員満足度調査の結果も、全社平均を下回っていました」(瀧本氏)

そこで、情報企画部では若手部員から有志を募り、「わくわくプロジェクト」を発足。働きがい向上のための取り組みを進めた。

写真:瀧本愼平 氏
丸紅株式会社 情報企画部長
瀧本 愼平

しかし、プロジェクトは必ずしも順調に進んだわけではない。どんな意見でも挙げてほしいと伝えると、当初は、「会社の利益に貢献しない業務はアウトソースして、稼げるIT部門になりたい」といった、情報企画部の存在意義そのものを否定するような提案なども飛び出したという。

「ただ、話を聞く中で、彼らの提言の根本にあったのは『会社に貢献していると実感したい、自らが成長したい』という熱意であることに気づかされました。そこで、コーポレートITの本来の使命を自ら認識するとともに『どうしたらモチベーションを持って仕事に取り組めるか』を自分たち自身で考えてもらうように、議論を重ねました」(公原氏)

半年間にわたる議論がまとまったのは2018年11月下旬のこと。能力開発体系の整備や、個々の業務と部の戦略との紐づけ、グループチャットの活用などによる部内コミュニケーションの活性化といった様々なアイデアが、働きがいを向上するための10の施策としてまとめられた。この報告を聞いた担当役員からは、情報企画部の閉塞感を打破するための糸口になると高い評価を受け、来期となる2019年4月にはぜひ、施策を制度化・施行したいと伝えられた。

とはいえ、年末の繁忙期を控え、残された時間は実質3.5カ月。その短期間で、10もの施策を形にできるのか――そこで同部署は、KPMGコンサルティング(以下KPMG)に支援を要請。KPMGのコンサルタントが常駐し、制度化の骨子の策定や、そのための議論のファシリテート、他社事例などのリサーチを担うこととなった。

「KPMGにはまるで情報企画部の一員かのように、最後まで付き合ってもらいました。ペースメーカーとなって毎日厭うことなく、議論を調整してくれたので、なんとか3月末までに施策をまとめることができたのです」と川端氏は当時を振り返る。KPMGの安部氏は「短期間で目的を達成するために、ゴールを常に意識しながら、勝算を持って進めていく必要がありました」と語った。

若手部員の提言を盛り込み部としての中期経営計画を策定

制度設計にあたってとくに注力したのが、能力開発体系の整備である。スキルを「コンピテンシー」「業務知識」「IT知識」に分類し、とりわけコンピテンシーを重視。やりきる力、会議をまとめる力、イノベーションを遂行する力など、各等級で獲得すべきコンピテンシーのロードマップを作成。試行錯誤しながらスキルの定義を進め、年次の目標管理や研修、海外を含むジョブローテーションなど、能力開発のための仕組みを整備した。

「我々が目指すべきは、IT知識を備えたジェネラリストです。子会社やベンダーのスペシャリストを取りまとめる高度な調整能力や戦略立案能力が求められます」(瀧本氏)

そして、「わくわくプロジェクト」の提言を盛り込み、新たに「情報企画部 中期経営計画2019-2021」を策定した。

その意義について、KPMG大谷氏はこう語る。「『わくわくプロジェクト』は、情報企画部が“人”に注力した内容です。若手部員の意見をマネジメント層が真摯に受け止め、変革を実行されていることは、企業のIT部門として先駆的な取り組みと言えるのではないでしょうか」。

2019年8月に行われた部内アンケートでは、回答者の7割強が早速この取り組みの効果を実感していると答えた。また、同様の課題を抱える他部門からの照会もあり、今回の取り組みはパイロットケースとしての波及効果も生み出しつつある。

「IT技術の進化が加速する中、先進的で優れた情報システムを構築するためには、相当な覚悟を持って臨む必要があります。しかし、こうした取り組みを進めることで、若手にも興味を持って仕事に取り組んでもらえるはずです。今後はより一層、新しい技術の導入にも注力したいと思います」と瀧本氏は抱負を語る。目指すのは、人と人をつなぐ究極のコーディネーター。人の思いを基軸にした変革が、巨大商社のIT部門をさらなる進化へと導きつつある。

「IT技術の進化が加速する中、先進的で優れた情報システムを構築するためには、相当な覚悟を持って臨む必要があります。しかし、こうした取り組みを進めることで、若手にも興味を持って仕事に取り組んでもらえるはずです。今後はより一層、新しい技術の導入にも注力したいと思います」と瀧本氏は抱負を語る。目指すのは、人と人をつなぐ究極のコーディネーター。人の思いを基軸にした変革が、巨大商社のIT部門をさらなる進化へと導きつつある。

写真:大谷 誠氏(左)、安部 聡氏(右)
KPMGコンサルティング株式会社
パートナー
大谷 誠氏(左)
ディレクター
安部 聡氏(右)