妄想駆動型の創発組織で
デジタル変革をリードする

デジタル変革を支援するKPMGジャパンのイノベーション促進施設『KPMG Ignition Tokyo』が株式会社として独立。デジタルテクノロジーの先進拠点として新たなスタートを切った。同社が目指すビジョンについて、代表取締役社長の茶谷公之氏に話を聞いた。

KPMG Ignition Tokyo 代表取締役社長兼CEO 茶谷 公之 氏
KPMG Ignition Tokyo
代表取締役社長兼CEO
茶谷 公之

KPMGイグニション東京』が大手町に開設されたのは2018年7月。以来、イノベーションや次世代ソリューションを生み出す「創発の場」として、KPMGジャパン自身の発展に貢献してきた。そして2019年7月、さらなる陣容拡大と機能強化を目指し、株式会社として法人化した。

同社の新たな立ち上げに当たり、新たに代表取締役社長に就任したのが茶谷公之氏だ。ゲームプラットフォーム企業のCTOを経て、大手IT企業で対話型エージェントをはじめとするAI技術担当の執行役員を務めるなど、30年以上にわたりデジタルテクノロジーの技術経営に携わってきた知見がある。

そのリーダーの下に、人工知能(AI)やデータサイエンティストなどのテクノロジストたちが集結。公認会計士、税理士、コンサルタントなどのプロフェッショナルを多数抱えるKPMGジャパンのデジタルテクノロジープラットフォームとして強力に支援していく方針だ。

「KPMGジャパンは、監査・税務・アドバイザリーの3つのサービスを提供しています。しかし、もはやどの領域においても、改善のための問題解決を念頭に置いたデジタル変革だけでは、限界を迎えつつあります。他方で、AIやデータをどう活用すれば事業成長できるのかという悩みを抱える企業も少なくありません。こうしたさまざまな壁を、テクノロジーで打ち破るのが『KPMG Ignition Tokyo』の使命だと考えています」(茶谷氏)

一方で、新しい価値を創造するためには、小さな組織で迅速に意思決定を行い、市場の変化を凌駕するスピードで変革を進める必要があると茶谷氏は言う。「今回の株式会社化は、まさにその第一歩。KPMGジャパンがさらなる進化を遂げ、ビジネスとテクノロジーの両軸で価値を提供するための基盤づくりを進めています」。

データを共同利用する技術プラットフォームを構築

現在、同社は「セキュア・コンピューティング」や「ナレッジ・プロセッシング」などの6つの技術領域にフォーカスしており、クラウドやセキュリティ、AI、ブロックチェーンなど、注力分野における人材の採用を強化している。国籍を超え、博士号取得者などハイレベルなエンジニアが集結しつつある。

今後はKPMGジャパンの技術的なハブとして、監査・税務・アドバイザリーが共用できるテクノロジー・プラットフォームを提供。専門的知見と先進技術とのシナジー効果により、KPMGジャパンと全ての顧客に利益をもたらすエコシステムの構築を目指す。

茶谷氏は、参画メンバーに「常識に対して疑問を持ち、仮説を立てて考えられる集団にしたい」とまず話すと言う。「理想とするのは、『こんなことができたらすごいよね』と妄想を膨らませる“妄想駆動型”の組織です。かつて日本の携帯電話メーカー各社が『テンキーをいかに使いやすくするか』に苦心していた際に、『そもそもテンキーは必要か』という疑問から生まれたのが、スマートフォンです。我々も『なぜ』『もし』を考え、仮説から発想できる組織にしたいです」。

これをKPMGジャパンの業務に置き換えると、例えば監査や税務が「個別の専門領域」であるという常識にとらわれず、「データの共通性」の観点から着目することで、ある程度の業務はAIで一括して自動化できるはずであると発想することができる。さらに自動化によって削減できた分、プロフェッショナルはより高度で難易度の高い仕事にシフトすることできる。「今後、全く新しいサービスの可能性を拓くためにも、まず共通化できる要素を見出し、プラットフォームに落とし込む、横展開を進めていきたいです」と茶谷氏は期待を込める。

秘密計算の技術で顧客の価値創造に活用

同社が今後フォーカスしていく技術領域の一つ、ブロックチェーンを含めた「セキュア・コンピューティング」は、データの機密性を保ったまま、安全に計算やトランザクション処理を行う技術のことである。企業は機密保護のため、重要なデータを暗号化しているが、そのままでは計算できないため、データを利用する際には暗号化を解除しなくてはならない。しかし、企業にとっては重要なデータであるからこそ、社外に情報を公開しにくい状況にある。そこで、データを暗号化したまま計算できる「秘密計算」の技術を活用すれば、機密性を保持しつつ、さまざまな統計や分析に利用することができる。

「例えば、各金融機関が厳重に管理している不正取引情報も、セキュア・コンピューティングの技術が実用化すれば、業界全体を横断する集合知として共有し、不正防止に役立てることができるようになります。このような分野は、保証業務を提供しているKPMGジャパンならではの強みを発揮できると考えています」(茶谷氏)

こうした強みを支えているのが、KPMGのグローバルネットワークだ。現在同社では、海外のKPMGで開発された先進技術やプラットフォームの日本導入に向けた開発を進めている。将来的には日本発のソリューションも世界に発信し、より一層グローバルな連携を深めていく考えだ。

「我々は、次に来るであろう大きな流れを読みながら、妄想駆動型でプロトタイプを作り、技術のポテンシャルを追求していきます。そのためにも、技術トレンドをいち早く理解し、先取りできるメンバーを集めたいと考えています。単に技術だけを作るのではなく、社会全体に変革をもたらすイグニション(点火)拠点として、KPMGジャパンの監査・税務・アドバイザリーとお客様の価値創造に貢献すること――それが、我々が最終的に目指すゴールです」(茶谷氏)

来るべきデジタル変革を先導するテクノロジスト集団として、進化を遂げつつあるKPMG Ignition Tokyo。同社は、まさに“創業期”の熱気のさなかにある。

監査・税務・アドバイザリー、【KPMG Ignition Tokyoの提供領域】Application(各分野に特化したアプリケーションなど)、 Business Platform(トレーサビリティー、ナレッジシェアなど)、 Technology Platform (秘密計算、ブロックチェーンなど)、 Technology Foundation (クラウド、AI、ビッグデータなど)