日本不動産研究所 不動産エコノミスト 吉野 薫氏 × 東急リバブル ソリューション事業本部 岡部 芳典氏

伸び続けるインバウンド需要に加え、うめきた2期の開発や大阪・関西万博にIR誘致。そして、2031年には交流人口の増加をもたらす、なにわ筋線が開通する。商都・大阪に内外投資家の熱い視線が注がれるようになってきた。不動産市況のいまと将来への期待を、不動産エコノミストの吉野薫氏と東急リバブル ソリューション事業本部の岡部芳典氏が語り合う。

Kaoru Yoshino

大手シンクタンクを経て日本不動産研究所入所。国内外のマクロ経済と不動産市場の動向に関する調査・研究を担当するとともに、日本の不動産業の国際展開に関する事業にも従事する。

「なにわ筋線で関西圏が南北に結ばれ、
交流が一段と増える見通しです」

日本不動産研究所 不動産エコノミスト
吉野 薫

Yoshinori Okabe

1987年現・東急リバブル入社。2000年に現ソリューション事業本部立ち上げを担う。2014年4月取締役常務執行役員。同年10月ソリューション事業本部長。2018年4月取締役専務執行役員に就任し、現在に至る。

「大阪は開発事業によってこれまでと
異なるステージを迎えそうです」

東急リバブル 取締役専務執行役員
ソリューション事業本部長
岡部 芳典

インバウンド増でホテル開発
海外マネー中心に大阪に注目

来阪外国人旅行者数はここ数年、右肩上がりに増え続け、2017年には1000万人を超えた。前年比は2015年には全国を上回る水準で、大きな伸びを見せた。来阪外国人旅行消費額は2017年には1兆円を超えている
※旅行者数は大阪府独自推計、消費額は大阪府試算

出所:⽇本政府観光局(JNTO)および観光庁資料により作成

岡部 大阪のマクロ景気と不動産市況をどうご覧になりますか。

吉野 全体をけん引してきた輸出産業が頭打ちになり、景気に足踏み感が見られますが、企業の業容拡大意欲は失われていません。本格的な景気後退局面までには至っていない中で、賃貸オフィス市況も不動産市場も需給はタイトです。

岡部 東京の地価が高止まりし、収益不動産の利回りは大幅に下がっています。そのため、投資マネーが安さを求め、大阪に流れ込んでいます。海外マネーを中心に、いまは大阪に注目しています。

吉野 大阪においても海外投資家による物件取得事例が相次いでいます。

岡部 市場としては、ホテルも好調です。インバウンドはまだ右肩上がりの一方、供給は足りていないと言われます。商品設計次第という側面はありますが、需要はまだ見込めます。

吉野 ご指摘のように、インバウンドは長期的には確実に増えていきます。日本はラグジュアリータイプの供給が不足しているため、今後はJ-REITのような投資家が手掛ける宿泊特化型とは違った商品設計に商機があるとみています。

岡部 不動産投資の視点で言えば、大阪は商人の街とはいえ、問屋など流通主体で消費者が利用する集客施設は少ないのが課題でした。東急のグループ会社が2011年に「SHIBUYA109阿倍野」を開業すると、非常に多くの人が来場しました。その後、全面開業した超高層ビル「あべのハルカス」にも、多くの人が訪れました。東京に比べ集客施設が少なかったからこそ、それだけ集中したのでしょう。今後の開発で大阪という都市はもっと東京化が進んでいくのではないでしょうか。

夢洲の単独開発では不十分
交通インフラ整備も不可欠

JR大阪駅北口では「うめきた2期」の開発事業が動き出す。区域内には、大阪市内の主要拠点である新大阪、中之島、難波といった地区と関西国際空港を直結するなにわ筋線の新駅「北梅田(仮称)」も整備される予定だ

吉野 JR大阪駅前では「うめきた2期」区域で大型オフィスビル、住宅、ホテルなどが開発される計画です。このインパクトは大きいですね。区域内に整備される駅をはじめとする大阪の各拠点と、関西国際空港を直結するなにわ筋線が開通すれば、関西圏が南北に結ばれ、交流が一段と増える見通しです。

岡部 これまでオフィスやレジデンスに限られていた投資先の厚みが増していきそうですね。

吉野 国際博覧会(大阪・関西万博)会場にもなる夢洲への誘致を計画中の統合型リゾート(IR)も、大きな経済効果が見込まれます。新たな観光資源に加え見本市やコンベンションの開催で海外富裕層の来訪が見込まれます。ただ、夢洲が単独で開発されるのでは十分ではありません。例えば中心部と夢洲の間を結ぶ交通インフラを整備するなど、まちづくりの発想が不可欠です。

岡部 こうした開発事業によって大阪はこれまでとは異なるステージを迎えそうです。関西国際空港の対岸に開発された「りんくうタウン」は、その象徴の一つ。当社が出資する特定目的会社でもインバウンドに狙いを定め、700室規模の宿泊特化型ホテルの開発を進めています。

吉野 国内には国際空港に近いホテルはそうありません。近くにはアウトレットモールも立地し、そのほかの機能も拡充される見通しです。空港隣接型の開発モデルが成功するか、注目しています。

多様性に富むコスモポリタン
昔ながらのアーケード街も

「りんくうタウン」ではホテルとして最大規模の「ホテルWBFグランデ関西エアポート」。東急リバブルが開発計画から建築までの工程をマネジメントする。完成は2020年7月予定

岡部 大阪の将来、期待できそうですか。

吉野 そうですね。都市づくりの世界的な潮流を見ると、公共交通中心に歩いて楽しめる街が高く評価される時代です。大阪はまさに、その条件に合致します。
 大型商業施設が開発される一方で、昔ながらのアーケード商店街も数多く残り、インバウンドも気軽に訪れます。コスモポリタンとして発展していく可能性を感じさせる多様性に富んだ街です。そこが、大阪の何よりの魅力です。

岡部 いや、その通りですね。不動産投資の観点からも、大阪の将来には期待を寄せています。開発事業によって限られていた投資先のバリエーションが広がろうとしているのが、やはり一番の要因です。大阪の投資市場の規模は東京に比べ、8分の1、10分の1と言われていました。それが東京を超えるくらいの規模まで育つことを願っています。
 そうなれば、投資が次々に呼び込まれ、交通インフラが整備され、これまで以上に住みやすくなるはずです。大阪には3年近く赴任していたこともあり、大阪好きの私です。将来は大阪に移住したいですね(笑)。
 万博やIRは、大阪が変わる起爆剤です。それらをきっかけに、都市として大きな変貌を遂げてほしい。今後の大阪の変化に期待しています。

 本日はありがとうございました。