多くの企業がデジタル変革(デジタルトランスフォーメーション=以下、DX)に取り組んでいるが、海外の先進企業に比べると、日本はまだ立ち遅れているとの見方がある。また、「方向性は本当に正しいか」「DXがもたらす本当の価値は何か」など、疑問や不安に駆られるケースも少なくない。

「DXの核心はアプリケーションのモダナイズ(現代化)だ」と語る日本マイクロソフトのパルタサラティ・ゴパラスワミ氏は、海外の先進事例に精通すると同時に、日本企業の事情もよく理解している。そこで、日本企業の現状とマイクロソフトの戦略、アプリケーションのモダナイズがもたらす価値などについて聞いた。

日本企業の多くが、
クラウドの恩恵を受けていない

多数の日本企業がDXに取り組んでいますが、海外の先進企業に比べるとまだ立ち遅れている印象もあります。日本企業の現状を、どうご覧になりますか。

米マサチューセッツ工科大学の調査によれば、企業のDXは4つの段階に分かれます。ビギナー(BEGINNER)、ファッショニスタ(FASHIONISTAS)、コンサバティブ(CONSERVATIVE)、デジタルマスター(DIGITAL MASTER)です。

DXの4段階。あらゆる企業はビギナーからスタートし、段階を経てデジタルマスターへと進む

ビギナーは、まだデジタルアプリケーションがほとんど入っていない状態です。ファッショニスタは、デジタルアプリケーションを利用していますが、イノベーションには至っていません。コンサバティブは、現在最も注目されているグループです。データセンターやインフラをクラウドへ移行し進めているものの、まだその恩恵を十分に享受できていません。デジタルマスターは、すでにアプリケーションをクラウドネイティブにイノベーションし、クラウドの恩恵を大きく受けています。

現在、日本企業の多くがコンサバティブの段階にあります。つまり、DXを進めようと努力してはいますが、まだクラウドの恩恵を享受できていない状態です。

DXの真の目的は収益力の向上

コンサバティブとデジタルマスターの違いは何でしょうか。

日本マイクロソフト株式会社
マーケティング&オペレーションズ
クラウド&エンタープライズビジネス本部
シニアプロダクトマーケティングマネージャー
パルタサラティ・ゴパラスワミ 氏

最大の違いは、収益力です。

クラウドへ移行すれば、コストダウンにつながる。その点はよく知られていますが、収益力が向上する事実については、あまり理解されていないのではないでしょうか。収益力の向上を前提に、DXに取り組む企業も多くはありません。

しかし、デジタルマスターと言われる先進企業は、その点をしっかりと把握しています。

クラウドネイティブに開発されたアプリケーションの最大の優位性は、その機能や品質を、高速かつ高頻度に更新できる点です。お客様の要望と期待をすばやく取り込み、時には先回りして機能を充実させ、迅速に公開していけるのです。

そのスピードを生かして、デジタルマスター企業は競合他社よりも早く顧客体験を向上させています。結果、多くの顧客を魅了し、収益力へとつなげているのです。未だにオンプレミス環境でアプリケーションを運営している企業と比較すれば、その差は大きいといえるでしょう。

日本マイクロソフトは、これまで、一貫してお客様のインフラのマイグレーションを中心にお手伝いしてきました。しかし、最近では、マイグレーションとイノベーションを同時進行させる戦略へと変化させています。

ソフトウェア企業への進化を急ぐ先進企業

DXを成功へのジャーニー(道程)ととらえる米国の先進企業は、いま、どのような取り組みを進めているのでしょうか。

米ウォルマート、米GAP、米ニールセン、トヨタ自動車ほか、世界の名だたる先進企業がマイクロソフトのAzureを利用しています。どの企業も、DX自体を目的とはせず、ビジネスを進化させるためのジャーニーととらえています。

こうした企業がいま何をしているかといえば、ソフトウェア技術者の採用を急いでいるのです。2017年から2018年の1年間に、平均で11%もソフトウェア技術者を増員したとする調査データもあります。

いま、あらゆる業界のトップを走る企業は、ソフトウェア技術者を積極的に雇用し、ソフトウェア企業への脱皮を急いでいます。

その最大の理由は、マーケティングやセールス、開発、人事などを含む、あらゆる業務を支援しているアプリケーションをすばやく進化させ、競争力を強化するためです。

ビジネス環境の変化に合わせてアプリケーションを迅速に開発し、高い頻度で更新できなければ、イノベーションを進めることはできません。米GitLab社が2018年に行った調査でも、企業経営者の78%が、開発サイクルの高速化を最優先課題としています。

いまや、アプリケーションの開発サイクルを加速させることは、マイクロソフトの重要な役割にもなっています。これをデベロッパー・ベロシティと呼び、DXのキーワードになっているのです。

日本では、まだデベロッパー・ベロシティの重要性に気づいている企業は多くないかもしれません。

デベロッパー・ベロシティの目的は何でしょうか。

デベロッパーの生産性を向上させることです。

例えば、ソフトウェア技術者の中にも、1つのテクノロジーを深く学ぶ人と、複数のテクノロジーを中程度に学ぶ人がいます。デベロッパー・ベロシティを実現するには、複数のテクノロジーを横断的に学ぶタイプのエンジニアを増やす必要があります。

なぜなら、DXの世界では、どのテクノロジーにも対応でき、どのような開発にも参加できる柔軟なエンジニアの価値が高まるからです。

マイクロソフトも、3年ほど前まではASP.NETのみをサポートしていました。しかし、現在ではGitHubをそのファミリーに含めています。様々なテクノロジーを学ぶ、あらゆるタイプのデベロッパーに、Azureの利点を広くお伝えし、アプリケーションを運用していただけるようにするためです。

GitHubは、その80%がオープンソースであり、普及度が非常に高いプラットフォームです。もちろん、GitHubを愛するすべての方にマイクロソフトを愛していただけるとは思っていません。しかし、マイクロソフトがオープンな企業に進化しようとしていることを、明確なメッセージとしてお伝えしようとしているのです。

成功のカギは、
テクノロジーと人を一緒に考えること

DXを全社組織に浸透させていくためには、ビジョンやカルチャーを意識して進める必要があると言われています。

その通りです。繰り返しになるようですが、DXは、それ自体が目的ではなく、それがもたらすバリューを受け取ることが目的です。

では、DXがもたらす最大のバリューとは、何でしょうか。それが、デベロッパー・ベロシティです。これにより、企業のオペレーションとプロダクトの双方が変革され、それに接するお客様の体験が向上し、満足度が高まり、お客様の数が増えていきます。

このコンセプトを、私たちはバリュー・ジェネレーションと呼んでいます。つまりは、このバリュー・ジェネレーションをもたらすことが、DXの大きな目的なのです。

バリュー・ジェネレーションのサイクル。
アプリケーションをモダナイズしてオペレーションを向上させ、従業員の業務を支援すると、
プロダクトが変化して顧客体験が向上し、収益の増加につながる

バリュー・ジェネレーションを実現するには、テクノロジーだけでなく、そこで働く人のことを一緒に考える必要があります。 そのコンセプトによって作り上げたDXのビジョンと戦略は、次第に会社のカルチャーそのものを変えていきます。過去の事例においても、そうした報告が多く見受けられます。

重要なのは、DXの目的がバリュー・ジェネレーションであり、そこには明確なサイクルが存在するという点を理解することです。

まず、アプリケーションをモダナイズして社内業務のオペレーションを向上させます。業務効率が良くなると、お客様に提供しているプロダクトが変化し、サービスの質が向上します。その結果、お客様の顧客体験が改善され、満足度が高まります。

それが市場に認知されると、お客様の数が増え、収益力の向上をもたらします。これが、バリュー・ジェネレーションです。その実現のために、皆さんの企業にはどのようなビジョンと戦略が必要でしょうか。育てるべきカルチャーとは、何でしょうか。コストダウンだけなら、アプリケーションをモダナイズすれば達成できます。

しかし、バリュー・ジェネレーションを目指すなら、アプリケーションのモダナイズと一緒に、人を視野に入れたビジョンと戦略が必要になるのです。日本企業には、これまでもイノベーションを理解し、実践してきた長い歴史があります。バリュー・ジェネレーションのコンセプトが正しく理解されれば、日本企業のDXは必ず成功するでしょう。

デジタル変革の核心はアプリケーションのモダナイズ マイクロソフトが日本企業に
提案する4つの施策とは

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