「所有から利用」、「プロダクト中心から顧客中心」など、変化が著しいビジネスの世界において、企業は従来のビジネスモデルをいかに変革し、新市場を切り拓くことができるか。今、知っておくべきビジネスのセオリーを考える。お話を伺ったのは、BtoB事業のサブスクリプション(以下、サブスク)で成長軌道に乗るブリヂストンだ。トラックやバス事業者向けのサブスク・モデルを築き上げた同社は、どのようにしてタイヤメーカーからソリューションプロバイダーへと変革を遂げたのか。継続率の高い同社のサブスク・モデルにはどのような仕掛けがあるのか。タイヤという“モノ”を売らないビジネスに挑む、同社の軌跡を追った。

持続的成長のために生まれたサブスク・ビジネス

世界的タイヤメーカー ブリヂストンで、日本国内のタイヤ販売を担っているのがブリヂストンタイヤジャパンだ。「最高の品質で社会に貢献」を企業理念の使命とし、ブリヂストンの販売会社として事業活動を展開している。

ブリヂストンタイヤジャパン株式会社
執行役員
生産財事業統括本部
生産財タイヤソリューションビジネス開発本部長
末松 聡 氏

同社における2本柱が、乗用車用タイヤを中心とする消費財タイヤ事業(BtoC事業)と、トラック・バス用タイヤをはじめとする生産財タイヤ事業(BtoB事業)だ。近年、トラック・バス用タイヤ市場の競争は激しさを増していると、執行役員 生産財事業統括本部 生産財タイヤソリューションビジネス開発本部長の末松聡氏は説明する。「高度経済成長から2000年頃までは右肩上がりでした。近年、中国、韓国などアジアのタイヤメーカーも日本市場に参入し、厳しい価格競争にあります。また原材料の値上がり等で、タイヤも値上げせざるをえない状況です。さらにタイヤの需要そのものが今後減少していくとの予測もあり、成熟している国内市場を見据え、持続成長を実現する新たなビジネスモデルの創造が必要でした」

2007年より、ブリヂストンはタイヤ単体の販売ではなく、新品タイヤとリトレッドタイヤ、タイヤのメンテナンスをパッケージ化したTPP(トータルパッケージプラン)という月額のサブスク・サービスを本格的に展開。タイヤの商品力に加え、専門性の高いメンテナンスの技術力と全国の販売・サービス網を活かすことで付加価値を提供する、日本のサブスク・ビジネスが始まった。

タイヤというモノを売らずお客さまの経営課題を解決する

ブリヂストンタイヤジャパン株式会社
生産財事業統括本部
生産財タイヤソリューションビジネス開発本部
商品企画部長
安藤 浩太郎 氏

TPPの導入実績は2018年末時点で全国660社、3万5000台に及ぶ。TPPは新規顧客開拓の戦略ソリューションと位置づけられている。本格展開は、2012年にグループ会社や組織の統合によりブリヂストンタイヤジャパンが誕生し、2013年にTPP専任部門が立ち上がってからである。成長軌道に乗り始めた背景には、輸送ビジネスを取り巻く環境の変化があったと、生産財事業統括本部 生産財タイヤソリューションビジネス開発本部 商品企画部長 安藤浩太郎氏は解説する。

「運送業は高齢化が進み、人手不足も深刻化しています。安全運行にはタイヤのメンテナンスをしっかりと行うことが重要ですが、働き方改革に伴う勤務時間短縮の進展でメンテナンスに人を当てる余裕がないという声も多く、タイヤに関することはすべてアウトソーシングしたいというお客さまのニーズが徐々に高まっていました」

TPPは、従来のタイヤ単体の販売とは異なり、お客さまの経営課題を解決するソリューション提供である。目に見えないサービスを扱うため、提案方法も従来と全く異なると末松氏は話す。

「タイヤとメンテナンスのセット販売という視点ではなく、経費削減、環境対応、安全運行、業務効率化といったお客さまの経営課題に対し、当社のタイヤに関する専門技術やノウハウを活かした提案をする、という観点で捉えることが重要なポイントとなります」

例えば、購入単価の話ではなく、経費削減を含めたタイヤ運用全体の観点から提案を行うと安藤氏は説明する。

「低燃費タイヤECOPIAを装着すると、タイヤ単価が上がってしまうと懸念されますが、燃料費(ランニングコスト)を抑制できます。また摩耗したゴムを張り替えて再利用するリトレッドタイヤを選択すれば、タイヤ費の削減も可能です。さらに空気圧管理などタイヤ性能を最大限に引き出すメンテナンスにより、タイヤが部分的に摩耗する偏摩耗の防止や燃費改善が図れます。TPPによりタイヤのライフサイクルを管理することで、経費削減や環境経営につながります。サブスクの活用について、サービスまで含めた費用対効果でご検討いただくお客さまが多いですね」

ブリヂストンでは、お客さまが自社で使用したブリヂストン製タイヤをリトレッドして再利用する自社台方式を推奨しており、タイヤの使用履歴が明確で安心できる。TPPにより新品タイヤを最大限に利用し、リトレッドタイヤで2次寿命まで使い切るためには、高度なメンテナンスが必要だ。商品の優れた性能・安全性と、エキスパートによるメンテナンスの組み合わせが、TPPの大きな強みとなっている。

タイヤのライフサイクルを管理することで経費削減、環境経営に貢献

サブスクの活用で企業は本業に集中できる

ブリヂストンタイヤジャパン株式会社
生産財事業統括本部
直販営業本部
営業企画管理部長
藤田 裕司 氏

TPPによる業務効率化は導入メリットがわかりやすく、多くのお客さまに評価いただいていると生産財事業統括本部 直販営業本部 営業企画管理部長 藤田裕司氏は話す。

「メンテナンスをアウトソースすることで本業に集中できるといった声もよく耳にします。例えば、スタッドレスタイヤをご使用の場合、タイヤ装着の手間はもとより、装着に伴う面倒な予算立てや経理処理、スケジュール管理も不要になります。大事なポイントは、業務効率化とともにタイヤのプロが日々の安全運行と定時運行をサポートすることで、ダウンタイムの削減が図れるという点です」

TPP導入により本業への集中とともに、安全・安心な職場環境も実現できる

法令遵守を徹底する上でTPPの有効性を評価する経営層も多いと藤田氏は話す。

「今、運送会社様においてタイヤのメンテナンスをできるベテランの方が減少傾向にあります。CSR(企業の社会的責任)への社会的要請が高まる中、タイヤの脱輪など大きな事故につながるリスクを回避するため、タイヤの管理はタイヤの専門家に任せたいというご要望は増えてきております」

年間のタイヤ関連費用が月次定額払いで平準化され、冬場のスタッドレスタイヤへの交換時期の経費集中を解消できる会計メリットも大きい。キャッシュフローの平準化に寄与し、予算も立てやすくなる。

「サブスク・サービスの活用は経営課題の解決に直結するため、これまでの購買部門に限らず、経営層に直接ご提案する機会も増えました。サブスクがもたらす経営メリットを、多くの経営層の方に知っていただきたいですね」(藤田氏)

サブスク・サービスを活用することによりキャッシュフローを平準化し、予算管理も容易になる

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Contentコンテンツ

急成長するサブスクリプション型ビジネスは、市場のルールを大きく変え、企業の在り方も大きく変えようとしている。
ルールチェンジを見極め、いかにその波に乗ればよいのか。

ー01 特別対談

モノを買わない時代の
“企業経営術”

サブスクを活用し、持続成長する企業の共通項とは?

経済学者 竹中 平蔵 氏
日本マイクロソフト 梅田 成二 氏

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ー02 企業事例

サブスクで
価格競争から脱却し成長軌道へ

タイヤを売らないブリヂストン、挑戦の軌跡―

ブリヂストンタイヤジャパン株式会社 
末松 聡 氏
 安藤 浩太郎 氏
 藤田 裕司 氏

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ー03 企業事例

市場のゲームチェンジに
乗り遅れるな

「サブスクリプション」がもたらすビジネス変革

ビープラッツ株式会社 
藤田 健治 氏

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ーCase Study

DaaSで企業経営を進化せよ

DaaS導入をいかに企業の力に変えればよいのか。
DaaSビジネスの最前線で企業に指南するキーパーソンに話を伺った。

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主催 日経ビジネス
協賛 日本マイクロソフト パートナー各社様
日時 2019年12月11日(水) 13:00-17:30
会場 虎ノ門ヒルズフォーラム メインホール
費用 無料

好評につき満席となりました

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