「所有から利用」「モノ売りからサービス化」など変化が著しいビジネスの世界において、いま、知っておくべきサブスクリプションによるビジネス変革とは。今回お話を伺うのは 、「サブスクリプションを日本で一番知っている男」を自称するビープラッツ 代表取締役社長 藤田健治氏だ。サブスク時代の経営、マネジメントが持つべき視点から、新たな価値の創出、発展のために提供側の組織、社員の「思考」と「働き方」をどう変えればよいのか。事例を交え、サブスクとDX(デジタルトランスフォーメーション)との関係も含めて語っていただいた。

ビープラッツ株式会社 代表取締役社長 藤田 健治氏

東京工業大学卒、1969年生。1992年 三井物産㈱入社。日本ユニシス、シマンテックなどIT分野を担当。2002年 ライセンスオンライン㈱を設立、代表取締役社長。2006年 三井物産㈱を退職。2006年11月 ビープラッツ㈱を設立し、代表取締役社長に就任(現職)。2018年4月 東証マザーズに上場。2019年4月 ㈱サブスクリプション総合研究所 取締役に就任(現職)。

― まず、ビープラッツの事業について、ご紹介ください。

藤田 健治氏
ビープラッツ株式会社
代表取締役社長

2006年の創業時に「ビジネスのプラットフォーマーになりたい」という思いを込めてビープラッツと名付けました。当時はまだ「サブスクリプションって何?」という時代です。サブスクリプションの前駆体ともいうべきSaaSやクラウドが世の中で主流になったのが2014年ごろですから、我々が思っていたよりも時間がかかりました。しかし通信規制緩和、IoTなどの技術革新がきっかけとなり、そこからの流れは早かったですね。サブスクリプションを取り巻く環境はここ3、4年で急速に変化しています。

その中でビープラッツは大きく二つの側面を持ちます。一つはシェアリング・エコノミー、サブスクリプションビジネスを検討中の事業者に対し顧客管理、契約管理、請求課金などをワンストップで実行可能なプラットフォームを提供する、ソフトウェアメーカーとしての姿。そしてもう一つは、クライアントの新たなビジネスを創る、コンサルティングファームとしての姿です。私は三井物産でのライセンスオンライン立ち上げから、サブスクリプション領域の経験は四半世紀を超えます。「日本で一番サブスクリプションを知る男」と自称して、多くの企業の新たなビジネス創出に深く関わらせていただいています。

サブスクリプションは、ビジネスをどう変革する?
~「プロダクト」中心から「顧客」と「価値」中心へ

― ビジネスにおけるサブスクリプションを、どう捉えればよいのでしょうか?

今、時代は「モノ」から「コト」へ変わろうとしています。その「コト」を流通させるのがサブスクリプションです。サブスクリプションは月額課金、定額制といった契約行為、決済手段のことだと誤解される事が多いのですが、あくまでもサブスクリプションとは「ビジネスにおける顧客とのタッチポイントが増えて双方向となり、継続的な関係が担保され続ける状態」のことであり、そこでは顧客のデータを基にした「価値」が流通するのです。言わば、サブスクリプションは「モノ」「コト」「価値」の流れを顧客に対して継続して生み出していけるプラットフォームなのです。

そしてこの流れは今後、IoT、DXとも絡んでBtoB、BtoBtoCの領域に広がっていきます。これまでの「モノを売って終わり」のプロダクトアウト型から、「顧客を知り、掴む」というマーケットイン型に変わる。この変革にいち早く取り組まないと、競合との格差はますます大きくなってしまいます。

これから価値が流通し始めると、プロダクトは単なる部品になってしまいます。一例を挙げるとスピーカーです。かつてはスピーカーを買う時には品質が吟味されましたが、AIスピーカーでは何ができるのか、という価値が顧客の評価基準であり、プロダクトの品質は重要ではなくなります。日本の製造業、メーカーがグローバルのサービス提供側から部品扱いされることなく勝ち残るには、顧客が思う価値を知り、深く理解した上で、サービス化する必要があるのです。

― サブスクリプションがもたらすビジネスの変革とは、どういうものなのでしょうか?

私は変革には3つの区分があると思います。1つ目は、既存のモノの提供方法を月額化、定額化するもの。2つ目は技術革新などを背景に、売るモノがコトに変化するもの。そして3つ目に、1と2の組み合わせで「新しい価値」を創造するものです。

私はよく、「サービタイゼーションとサブスクリプションは違う」というお話をします。サービタイゼーションはモノ売りをサービス化しただけに過ぎず、プロダクトアウトのままであり、いわばデジタイゼーション止まりの状態。1と2はこれにあたります。サブスクリプションは顧客の側に立つマーケットインであり、はじめてDX(デジタルトランスフォーメーション)になる。3がこの状態です。

その代表的な業界が自動車でしょう。これまでのクルマというモノの販売から、新たなライフスタイルを提供するカーシェアリングやライドシェアというコトへの切り替えが起こり、さらに自動車自体を移動サービスの一環と捉えるMaaS(モビリティ アズ ア サービス)への変革が進んでいます。

世界でもトップクラスの自動車メーカーであるトヨタが今の地位に甘んじることなく我々もお手伝いしている「KINTO」を立ち上げたのも、その変革をいち早く実行するための取り組みです。よく「儲かるのか?」という声が挙がりますが、それはサブスクリプションをレンタルやリースと同じように捉えた見方であり、本質的な狙いはそこだけではないのではないかと考えられます。サブスクリプションは「使った分だけ課金」ではなく、「顧客に使い続けてもらうことによって新たな価値が生まれる」のです。顧客の利用のタイミングや量をデータでリアルタイムに把握する手段であるIoTという技術革新が、今や多額の投資を行わずに実現できるようになったことが背景にあります。

ただ、「サブスク化しなければ」「月額定額性のサービスを考えよう」とすると失敗します。サービス化が顧客に対して何の価値を生むか、を真剣に考えなければなりません。顧客ニーズが分かるとサービスが変わる好例としては、オランダのフィリップスライティングがあります。彼らは空港など公共空間の照明器具のモノ売りから、照明管理ソフトウェアとポイント通信機能によってエネルギーコストとメンテナンスの煩雑さを大幅に削減するサービス提供に移行しました。サービタイゼーションの視点だと供給製品の単価が下がる、と見えるかもしれませんが、顧客ニーズの視点で捉えると電力コストが下がる方がより価値が高く、そこでシェアを取れば自社の売上も大きく伸長するわけです。また、測量機器メーカーが建設現場で稼働する重機に取り付けたセンサーから得られたデータや、ドローンによる撮影データなどを送ると、建設計画を提供するというサービスを提供する例もあります。

“サブスク時代“の経営のあるべき姿とは
~DXと分けて捉えず、社員にサービス「体験」を

― 企業がビジネスのサブスク化を実現するために必要なこととは、何でしょうか?

まず、DXとサブスクリプションが結びついて考えられておらず、曖昧なままサービス化を検討している企業が多いのではないでしょうか。「月額定額制にすると儲からなくなるのでは」という声はそれを表しています。顧客ニーズをデータで把握してそれに応えるサービスを創る、という目的は同じなのですから、この二つは分けて考えないことです。

そして、スピード感を持って実行することも重要です。トヨタの「KINTO」は昨年11月に参入を発表して、今年の4月にサービスイン、7月には全国展開というスピードです。あれだけの大企業が、過去のしがらみにとらわれず外部からも専門家を集めて別会社を立ち上げました。それは一刻も早く市場での経験値を得るためであり、実行するより考えるコストの方が高いと捉えたからでしょう。特に日本では働き方改革、サービタイゼーション、DX、新たなビジネス創出・・・と一歩ずつ真面目に段階を踏む企業が多い印象があります。「ウチは大企業だから時間がかかるんですよ」という経営者も多い。しかし、グローバルの競争相手は待ってはくれません。

そして、もはや経営において所有するより利用、持たざる経営の方が良いのは誰もが理解していると思います。でも自社の仕組みをどう変えるか、となるとなかなか動けない。2021年からとされるIFRS(国際財務報告基準)の考え方に沿う会計基準改正の影響も、考えるべきタイミングに来ています。これまでオフバランス(=資産計上しない処理)してきたリースがオンバランスとなり、貸借対照表に計上されるリース負債の額が増えます。このことから総資産額は増額し、結果として例えばROAが低下することになる。このことからも企業はいかに資産を持たずにビジネスをサービス化するか、真剣に考えるべきタイミングに来ているのです。

― 人の観点からは、何をすべきでしょうか?

サブスクリプションにおいては、業務プロセスや顧客との関わりなど、これまで経験してこなかった領域が商品化と大きく関わります。その部分をすべて自社で行うかどうかは別としても、必ず考えなければならなくなります。発想を変えたビジネス変革には、これまでの延長線での事業計画を書ける人だけでは立ち行かなくなります。そのためにはサービスというものを自分たちも早く体験した方が良いわけです。

これまでは個人の生活と社内の環境が大きく異なり、社員が社内でデジタルのサービスに触れる機会が非常に少なかった。社員がレガシー、アナログのビジネス経験しかない企業では、たとえよいサービスを発想できたとしても、実行する段階で必ず壁にぶつかります。そうならないためにもこれからは、社員がもっとデジタルのサービスに触れる機会を増やしていく必要があります。

DX、サブスクリプションによる顧客志向のサービス化を進めるにあたっては、社内の働き方もDXナイズされたサービス利用に変えて思考、文化を変えていかなければなりません。その意味で、日常で全社員が活用するPCのDaaS利用は、その大きな第一歩、と言えるでしょう。

Contentコンテンツ

急成長するサブスクリプション型ビジネスは、市場のルールを大きく変え、企業の在り方も大きく変えようとしている。
ルールチェンジを見極め、いかにその波に乗ればよいのか。

ー01 特別対談

モノを買わない時代の
“企業経営術”

サブスクを活用し、持続成長する企業の共通項とは?

経済学者 竹中 平蔵 氏
日本マイクロソフト 梅田 成二 氏

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ー02 企業事例

サブスクで
価格競争から脱却し成長軌道へ

タイヤを売らないブリヂストン、挑戦の軌跡―

ブリヂストンタイヤジャパン株式会社 
末松 聡 氏
 安藤 浩太郎 氏
 藤田 裕司 氏

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ー03 企業事例

市場のゲームチェンジに
乗り遅れるな

「サブスクリプション」がもたらすビジネス変革

ビープラッツ株式会社 
藤田 健治 氏

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ーCase Study

DaaSで企業経営を進化せよ

DaaS導入をいかに企業の力に変えればよいのか。
DaaSビジネスの最前線で企業に指南するキーパーソンに話を伺った。

Eventイベントのご案内

本サイトと連動したセミナーを12月11日に虎ノ門ヒルズで開催します。
「買わない時代の企業経営術」を考える一日。ご来場を心よりお待ちしております。

主催 日経ビジネス
協賛 日本マイクロソフト パートナー各社様
日時 2019年12月11日(水) 13:00-17:30
会場 虎ノ門ヒルズフォーラム メインホール
費用 無料

好評につき満席となりました

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White paperホワイトペーパー

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