三菱地所は住宅マーケット変化に対応するグループ一体の価値提供を目指し、住宅事業グループ各社で運営していた4つの住宅系会員組織とグループの顧客情報を統合。2018年6月にグループ横断型の新たな会員組織「三菱地所のレジデンスクラブ」を発足させた。対象会員世帯数は業界最大規模の約60万世帯、さらにグループ横断で検討者向けと契約者向け会員組織の統合を行ったのだ。顧客の生涯を通じて住まいに関するあらゆるニーズをワンストップでカバーする、グループの住宅関連サービス情報を網羅的に提供するためのプラットフォームである。

今回は、このプロジェクトを推進した三菱地所株式会社 住宅業務企画部バリューチェーン推進室 兼DX推進部主事の橘 嘉宏氏とSCSK株式会社 流通・メディアシステム事業部門 課長の綿貫 憲一氏が対談。企業のDX推進の第一歩である顧客基盤統合への道のりと、その中で取り組むべきこと、そして得られた効果から今後の展望までを、語りつくしてもらった。

グループの顧客基盤統合に欠かせない 「体制作り」「マインドセット」「プラットフォーム」―
この三軸に、三菱地所とSCSKはどう取り組んだのか?

三菱地所がこの取り組みに挑んだのはおよそ5年前にさかのぼる。「住まいのバリューマネジメント」をサービスコンセプトに掲げ、住宅事業グループ全体の連携を推進する統括機能としてバリューチェーン推進室を組成。その使命は、グループ各社に全体最適の意識を醸成させ、共通の目標に導く司令塔となること。グループ各社からの兼務メンバーを含め、30名ほどでスタートしたという。

―そもそも、このプロジェクトを始めたきっかけとは何だったのでしょうか。

三菱地所株式会社
住宅業務企画部 事業戦略DX・推進ユニット
バリューチェーン推進室 三菱地所のレジデンスクラブ事務局
兼 DX推進部 主事
橘 嘉宏 氏

 三菱地所では今年の4月にDX推進部が発足し、現在は私も兼務所属していますが、プロジェクトのスタート当時はまだDXという言葉は一般に浸透していない時期でした。最初に我々が目指したのは、個社最適の観点から複数存在した顧客窓口と各社からの個別アプローチをグループとして集約・最適化すること、営業戦略的な要素はもちろんですが、業務効率化の観点も強いものでした。

ただ、当時から住宅マーケットや顧客ニーズが大きく変化する中で、各社が個別に事業を推進していては非効率で競争優位性も保てなくなることは明白な課題であり、将来にわたって顧客一人一人のLTV(ライフタイムバリュー)を高めていくためには、各社の提供できるソリューションやバリューをつなぎ、グループ全体で顧客の生涯におけるニーズをカバーすることの必要性を感じていました。しかしそれまでは各社が独立した事業推進を行っていましたので、顧客へのアプローチや対応方法はさまざま。そんな中、顧客窓口の統合を無理矢理トップダウンで進めると、グループ内部で顧客の取り合いになるのでは、など各社の不安は明らかで、それがプロジェクトに協力することへの抵抗感につながりかねませんでした。

そこで、グループ全体最適の観点のもとに、各社がこの取り組みの本質を理解するため、バリューチェーン推進室には本社メンバーだけでなくグループ各社からもメンバーに加わってもらい、まずは各社の事業の違いや、事業同士の親和性や共通課題などを互いに認識するところからはじめました。本プロジェクトについても、こういった取り組みがまずはグループ全体、そして最終的には個社の利益に還元されることを各社が納得し、このプラットフォーム上で何をやりたいのかを自分事として考え、行動できるようになることを目標としました。各社の理解を得るための対話は、2年以上にわたり根気強く続けましたし、その対話は本プロジェクト以外の様々なテーマにおいて、いまも継続しています。

―その取り組みの中で、最も大きなテーマとなったのが住宅事業グループでの顧客基盤の統合ということですね。

SCSK株式会社
流通・メディアシステム事業部門
流通・メディア第五事業本部
WEB・CRMサービス部
第二課 課長
綿貫 憲一 氏

 当初は各社の営業情報を必要に応じて共有するというアイデアもありましたが、都度の共有では逆に手間がかかる上、施策検討・実行のスピードが上がりません。そのためLTV向上という目標達成のためには、グループとして顧客情報の共同利用方針を定め、名寄せを踏まえた顧客基盤統合が不可欠、との判断に至りました。さらに、話し合いを進める中で、より深い顧客価値追求のためにはリアルタイムで詳細な顧客ニーズを把握するための機能や、会員組織としての窓口機能をより充実させる必要があり、プラットフォームの構築難易度はますます高まりました。そして、このようなプロジェクトを共に実現できるパートナーを探している中で、SCSKさんと巡り合ったのです。

―各社から提案があった中、SCSKをパートナーに指名した理由は何だったのでしょうか。

 当社のやりたいことを他社より高いレベルで理解していただき、実績や体制からもこのプロジェクトを共にやり切ることができる、という信頼がもてたことですね。提案をいただいた数社から Dynamics 365 での提案がありCRMプラットフォームとしての評価の高さは把握していましたが、SCSKの導入実績は国内トップクラスで安心感がありました。さらに、顧客基盤統合のカギとも言える名寄せについても、パートナー企業とチームを組んで、具体的なプロセスを示していただけました。非常にタイトなスケジュールにも関わらず、やり切ります、と言っていただけたのもSCSKだけでしたね。

―SCSKとして、同規模の構築経験はあったのですか

綿貫 これまでの当社の実績では、Dynamics 365 の大規模構築経験は豊富にありましたが、今回はCRMだけでなくCMS(コンテンツ管理)やMA(マーケティングオートメーション)を含む、かなり大きなプロジェクトです。住宅事業グループ各社が横断して活用するバリューチェーンプラットフォーム構築という重要な取り組みのパートナーに指名いただき、嬉びと共に責任の重さも感じました。特に顧客情報の統合では、各社異なる形式の200万件にも上る顧客情報の名寄せ実施となりますので、信頼のおけるパートナーとチームを組んで、確実な実行を心がけました。

―ここまでの社内要件定義で約1年、SCSKとの構築からローンチまでがおよそ1年半ですね。この間の取り組みを具体的に教えてください。

 各社からメンバーをアサインしたプロジェクトチームにて、毎週2日、それも終日をかけての定例会を実施しました。午前中はグループとして実現したいWEB戦略を具体化し、各社が主体的に利用可能な顧客窓口とするためのコミュニケーション戦略中心のミーティング。そして午後は、グループ各社が営業戦略を実行するためにCRMプラットフォームに何が求められ、それをどう実現するのか、という具体的な各社戦略とCRMの仕様に関するミーティングです。具体的な営業戦略・シナリオがないままにプラットフォームの仕様を定めるのではいざ各社にて施策実行、となった際に不安が残ります。いかに日々の販売戦略や新しいアイデアの施策実行を促進する機能をプロジェクトに落とし込めるか、を常に意識して徹底した話し合いを重ねました。

綿貫  ひたすらロジックの積み上げと検証を繰り返しながら、グループ全体で顧客を可視化したい、という三菱地所様のご要望にどうお応えできるかを考え抜きました。一つの部屋に数十人が集まり、ひざを突き合わせて、時にはお弁当を食べながらとにかく熱い議論を重ねましたね。

 SCSKの課題管理が的確で、グループ各社との調整もサポートいただき、円滑かつ実直に推進される姿がプロフェッショナルとして頼もしく感じていました。一つの目標に向かって、当社グループ内外に限らず風通しのよいプロジェクト運営ができたことを感謝しています。

綿貫 我々の問いかけに対してその都度、三菱地所様の皆さんからもきっちり回答を用意していただけたので、こちらとしてもその情熱やスピード感にお応えしようとチーム一丸となってプロジェクトにあたりました。

“柔軟性“と“拡張性“が顧客統合基盤としての
Dynamics 365の価値

今回、三菱地所が実施したのは顧客基盤統合だけではなく、会員がログインして情報を得るユーザーインターフェースとしての会員制Webサイトの刷新も含まれる。そしてそこにはCMSやMAの機能も求められる。SCSKではDynamics 365 と、CMSとMAの機能を併せ持つソリューションの組み合わせでそれに応えた。そのことも踏まえて、お二人にDynamics 365の価値について語っていただいた。

―綿貫さんには「Dynamics課長」とのニックネームがあったそうですが

綿貫 提案当時、Dynamics課という部署の課長だったのです。ニックネームではなく、実際の肩書でした。

 それ一つとっても、本気度合いが伝わりますよね。事実、綿貫さんもメンバーの皆さんも、Dynamics 365の機能から何からとても深く把握されていて、問い合わせに対する回答も的確で、まさにプロフェッショナルでした。

―CRM基盤として Dynamics 365 を採用されたポイントは何だったのでしょうか?

 さまざまなCRMがある中で、 Dynamics 365 に感じた価値は柔軟性と拡張性です。グループ各社が持つ十数もの顧客基盤を統合し、しかもこちらの要件もやりたい施策に合わせてどんどん変化していきます。柔軟性がないとプロジェクトが立ち行かなくなりますから、特に重視しました。また、運用開始後においても新たな基盤との統合や、一部機能を個別に切り出しての運用なども想定されましたので、拡張のしやすさという点も採用の決め手となりました。

綿貫 今回はCRMとCMS、MA機能までが求められましたので、なおさら我々としても実績の豊富でありCMSとの連携が容易な Dynamics 365 が最適な提案だった、と構築が完了した今、改めて感じますね。

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