住民サービス向上と働き方改革に向け、
コロナ禍でクラウドを積極活用する京都府

京都府

多くの住民の機微情報が集まる自治体では、従来強固なセキュリティが追求され、ともすると利便性を犠牲にしながらICTの活用が行われてきた。その中にあって京都府は、Microsoft 365 などを活用し、セキュリティと利便性を両立させ、働き方改革を実現させた。さらにこの環境が、2020年突如世界を襲った新型コロナウイルス禍においても、大いに役立った。

迅速な住民サービスと働き方改革の
両立を目指しICTを活用

京都府では2014年から、住民に現場ですぐに分かりやすい説明ができるよう、現場でグループウェアを始めとする庁内システムが利用できるモバイル端末を配備するなど、積極的にICTを活用してきた。

京都府 政策企画部 情報政策課
主幹 
森田 嘉彦 氏
※本記事は Teams を活用し、取材しました

この取組で特に問題になっていたのが、現場からメールを見たい職員は多いが実際にメールが見られるのは、モバイル端末を配備された一部の職員に限られていたことだった。そもそも自治体は多くの住民情報を抱えるため、マイナンバーや個人情報を扱う基幹系、全国の自治体を結ぶLGWAN系、そしてインターネット系と、各ネットワークを分離することが求められている。そのため、現在でもLGWAN系に業務用端末を置く多くの自治体では、庁内環境でしかメールを見られないのが実態だ。

しかしそれでは、京都府が目指す「ICTを活用した迅速なサービス提供」が実現できない。京都府 政策企画部 情報政策課 主幹 森田嘉彦氏は、「出張先からはメールが見られないため、メールを確認するためには一旦職場に戻らなければならないといった不便が生じることがありました。そのため住民からのメールに迅速に対応できないだけでなく、職員の負担にもなっていました」と語る。

そこで2017年、セキュリティを確実に確保しながら利便性を上げていくためにどうしたらいいかという検討を開始した。

庁外からメールなどを利用するため
Microsoft 365 を採用

京都府は、現場からメールを閲覧するなら、当時すでに一般的になっていたクラウドサービスを利用すべきと判断。どのような情報ならクラウドを利用できるかの線引きを開始した。森田氏は、「例えば住民の方の個人情報は絶対に外には出せませんが、そもそもメールではそうした情報は扱いません。その上で『基本的に行政が持つ情報は、いつでも住民に公開、共有されるべきもの』との情報セキュリティ責任者(CISO)の判断のもと、クラウドサービスの利用を開始しました。また、万が一にもマイナンバー等の情報を誤って外に出すことがないよう、メール中にマイナンバー等の情報がないかどうかをチェックする機能も整備されています。当時は、他の自治体の事例も少なく、線引きとクラウドサービス利用に係る規程づくりが一番大変でした」と説明する。

実現に至る道のりでは、まず Microsoft 365 を含むソリューションを100ライセンスずつ用意し、比較する実証実験を実施。現場からメールを閲覧したり、ファイルを共有できる環境を準備した上で、業務上これらの機能を必要とする職員を公募し、約半年間にわたって利用してもらい、機能、使い勝手などを評価してもらった。

京都府 政策企画部 情報政策課
情報企画・セキュリティ係
主事
永井 明日香 氏
※本記事は Teams を活用し、取材しました

その結果、京都府が選択したのは Microsoft 365 であった。選択の理由を森田氏は、「最大の理由は Microsoft Office との親和性です。また、メールサーバに Exchange を使っていたことと、当然ながら強固なセキュリティも大きなポイントでした」と語る。

2019年5月から約500ライセンスで利用を開始した。利用者は実証実験と同様に公募し、出張が多い人、広報、農林、土木など現場での仕事が多い人を中心に利用してもらっている。マイクロソフトの導入サポートについて森田氏は、「販売店経由で導入を進めましたが、細かな設定などについてはマイクロソフトの担当者が丁寧にアドバイスしてくださったので、スムーズに使い始めることができました」と評価している。京都府 政策企画部 情報政策課 情報企画・セキュリティ係 主事 永井明日香氏も、「運用管理が難しいのではと心配していたのですが、リアルとオンライン両方の研修を受けさせてもらい、簡単に習得することができました」と語っている。

庁内メールシステムで受信したメールを Microsoft 365 のアカウントに自動転送したり、OneDrive に共有するファイルをアップロード。ユーザーは手持ちのスマートフォンやモバイルPCから Microsoft 365 にアクセスして、メールの閲覧やファイル共有が可能。

BYODを活用し機動的で
利便性の高いシステムを実現

京都府が比較的容易にクラウドサービスを利用できたのは、外に開かれたネットワーク構成をとっていたことが大きい。多くの自治体では職員の端末を閉じた庁内ネットワークの内側に設置している。そのため、データは物理的に守られるが、柔軟性に欠けるシステムとなりがちだ。一方京都府は、マイナンバーなどを扱う基幹系とLGWANのネットワークは当然閉じているが、職員の端末は開かれたインターネット側に設置していた。庁内に閉じていないので、容易にクラウド利用が実現した。もちろんインターネット側に設置するために、外からのメールは全て無害化のクラウドサービスを通すなど相応のセキュリティ対策を施している。

もう一つ、京都府の画期的な取組としてBYOD(私用デバイス)の活用がある。安価なスマートフォンを選択したとしても、Microsoft 365 のライセンスを持つ500人分のデバイスを用意するとなると莫大な費用が必要であり、職員側も2台のスマートフォンを常に持ち運び、充電状態に気を遣うことは望んでない。そこで、自治体でBYOD利用を認める例がほとんどないなか、京都府では希望者には私用デバイスの利用を認めた。森田氏は、「通信料金がかかってしまうので、モバイル端末を配付した希望者に了解を得たうえで許可しました。通信料金が急激に増えたといった苦情もなく、利用者からは重く嵩張る端末を持ち運ぶこともなくなり利便性が高まったと喜ばれています。また職員アンケートでは、実際に残業時間が減りましたという回答ももらっています」と語る。

この取組の結果、必要な職員が庁外からVPNなどを使わず Microsoft 365 に自由にアクセス。メールやファイル、スケジュールなどが見られるようになり、迅速な住民サービスと働き方改革の両立につながった。

例えば会議の出席依頼の宛先に Microsoft 365 のアドレスを設定しておけば、Microsoft 365 の Outlook に反映されるため、外出先から自分のスケジュールを確認できる

これらと並行して、Microsoft 365 に入っている Microsoft Teams の活用も検討を始めた。京都府ではこれまで他の組織と協働する時のために、十年ほど前からデータ共有用の外部公開サイトを用意していた。しかし、そのシステムが更新時期を迎えていたため、代替手段として検討を始めたのだ。永井氏は、「外部の組織と一緒にプロジェクトに取り組もうと思っても、これまではメールとファイルによる一体的な情報共有ができませんでした。また、オンライン会議の需要も高まっており、Microsoft Teams の活用を検討していました。ただ、変更するとなると運用が大きく変わってしまうため、どうすれば職員に負担なく利用してもらえるのかを内部で検討していました」と説明する。

コロナ禍でのテレワークに Microsoft 365 が威力を発揮

そこに新型コロナウイルス感染症の感染拡⼤が起きる。社会全体で急激なテレワークシフトが起こるなか、⾃治体でも可能な部署ではテレワークが求められた。マイクロソフトもそのような社会の要請に応え、Microsoft 365 ライセンスを期限付きで無償提供するプログラムを開始した。

京都府では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、4月20日から可能な部署では半数が自宅等のテレワーク、半数が出勤という「2分の1勤務」に踏み切る。同時に、テレワークを支援するツールとして Microsoft 365 の活用を決定し、マイクロソフトから約1万ライセンスの無償提供を受け、職員全員にアカウントを配付。緊急事態のため、職場のPCだけでなく、職員の私物PC、スマートフォンも含め、業務での Microsoft 365 の全庁的な利用を開始した。情報政策課で検討していたベースがあったとはいえ、テレワークを待ったなしで実施せざるを得なくなり当初はかなり大変だったようだ。用意した手順書なども実際に使いながら改定するなど、走りながらの対応となった。

実際に利用が始まると職員からは高評価を博しているという。森田氏は、「Microsoft Teams を使ったオンライン会議が思ったより簡単で快適と好評です。これがなかったら在宅勤務は難しかったという声をもらっています。特に事業者の方との打合せや、大学の先生方に参加いただく会議などは、他の都道府県からの移動が制限されるなかでも開催でき、大変重宝しました」と評価する。

Microsoft Teams を使ったオンライン会議やタブレットなどICTを利用し、住民サービスの向上・スピードアップと効率化による働き方改革を両立している

テレワークでは庁内のファイルサーバーにアクセスできないため、Teams 上でのファイル共有も活発に活用されている。また、チャットも上司や同僚への質問や在宅勤務時の始業や終業の連絡など様々に活用されている。京都府では Teams を利用するに当たり「〇〇をするな」といった制約を最低限にとどめているため、チャットを利用した活発なコミュニケーションが行われているという。永井氏は、「チャットの利用量が非常に増えています。ちょっとしたことを質問するのに多く利用されているようです。イメージとしては、職場での会話の代わりです」と語る。

ポストコロナでの活用にも期待

京都府は今回のコロナ禍によってテレワークを進めたが、Microsoft 365 を核とした、どこでも働ける環境は、ウイズ・ポストコロナの時代においても新しい働き方の基盤となると期待をかける。永井氏は、「今回半ば強制的にテレワークをスタートしましたが、多くの職員が実際にテレワークを経験することで、意外に便利で、仕事もこなせることがわかり、新しい働き方のメリットに気付けるきっかけになったと思います。この気付きを今後にどう生かしていけるかが鍵ですが、自治体の働き方改革も進むと思います」と語る。

さらに森田氏は、「住民の重要な情報をお預かりする以上、セキュリティはもちろん重視しますが、きちんとした線引きをした上で、生産性を向上させることができるツールは積極的に活用していきたいと思っています。今回のことで Microsoft 365 の便利さを全職員が実感しており、もはや手放せないでしょう。第2波、第3波の感染拡大も懸念されています。これまで対面が当たり前だった住民対応、打合せや会議も、試してみたらオンラインでも問題ありませんでした。お互い移動時間も節約できますし、この環境は今後ポストコロナの時代になっても活用していきたいと考えています」と締めくくった。

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