日経ビジネス50th Beyond Paradigm Next Innovators
						岡山県 産業労働部産業振興課 課長 原田 昌樹氏、一般社団法人 日本EVクラブ 代表理事 舘内 端氏、三菱自動車工業株式会社 EV・パワートレイン技術開発本部 チーフテクノロジーエンジニア 百瀬 信夫氏

岡山県
産業労働部産業振興課
課長

原田 昌樹

一般社団法人
日本EVクラブ
代表理事

舘内 端

三菱自動車工業株式会社
EV・パワートレイン技術開発本部
チーフテクノロジーエンジニア

百瀬 信夫

岡山県×三菱自動車工業株式会社

EVシフトへ向けた岡山県の先進的な取り組み

欧州や中国を中心に進む「EVシフト」。日本でも現実のものとなりつつあるEV新時代に向け、岡山県と三菱自動車工業、地元産業が連携した先進的な取り組みに注目した。

EV普及の現状とEVシフトへの課題

連携協定書を掲げる岡山県と三菱自動車工業の両代表

2018年8月7日、岡山県と三菱自動車工業は、自動車部品メーカーのEV(電気自動車)シフト対応などを支援する連携協定を締結。「県内企業のEV・PHEVに関する新技術及び新製品の開発支援に関すること」や「EVシフト対応に向けた県内企業への積極的な情報提供に関すること」など、全国に先駆けてEVシフトに対応した産業と地域の実現を目指して連携を強化していくのが目的だ。

2018年夏、岡山県と三菱自動車工業は、EVシフトの本格化に備えた連携協定を締結した。県内の自動車部品メーカーのEVシフト対応を支援することが狙いだが、その先にはEV新時代の産業構造の変化や地域の課題への対応なども見据えている。日経BP総研客員研究員でEV事情に詳しい鶴原吉郎が聞き手となって、岡山県で産業振興を担当する原田昌樹氏、三菱自動車工業でEV部門のチーフエンジニアを務める百瀬信夫氏、EV普及を推進する一般社団法人日本EVクラブ代表理事の舘内端氏の3人に話を聞いた。

鶴原 岡山県の取り組みについて話を伺う前に、まずはEV推進に取り組んでこられた舘内さんから、EVシフトを取り巻く状況についてお話しいただけますか。

舘内 現在の自動車業界は、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電気自動車)と呼ばれる新しい技術トレンドがあり、変革期を迎えています。このうち電気自動車、つまりEVが世界的な流れになっている要因は、地球温暖化対策でCO2を削減するという機運が高まっていることが大きいと思います。

鶴原 海外では欧州と中国がEVシフトをけん引していますね。

舘内 欧州は、2015年のCOP21で採択されたパリ協定以降、高級車を中心にEVシフトが進んでいます。欧州は環境への意識が高いので、高級車でもEVは売れるんですね。中国は、エンジン車では日本や米国に追い付けないので、同じスタートラインに立てるEV市場が魅力なのでしょう。アジアの富裕層にとって、EVに乗ることがステータスになっているというのも要因のひとつです。

鶴原 そうした動きに対して、日本国内はどのような状況なのでしょう。海外に比べてやや出遅れている印象がありますが……。

百瀬 課題はいくつかあります。まずはコスト。欧州では高級EVが売れるというお話が舘内さんからありましたが、日本ではそこが難しい。技術は世界的に見てもトップクラスですが、コストをいかに削減するかが今後の課題です。それから、市場的に日本でEVが普及するにはもう少し時間が必要なのかなとも感じます。日本は、高性能ハイブリッド車が普及していることもあって、EVになじみがないんですね。とはいえ、EVはもはやブームではなく、世界的な流れですから、弊社含め、日本の自動車メーカーもEVシフトに今後どう対応していくかが問われていると感じています。

EVは社会や産業構造をどう変える?

ゴーカートのようなEV車を通じて子供と触れ合う様子

舘内氏が代表理事を務める一般社団法人日本EVクラブは、25年前からEV普及活動に取り組む団体。1998年には、舘内氏がその活動功績により環境大臣表彰を受けるなど、環境・エネルギー問題の解決に向けて、EV普及を推進している。活動内容はEV試乗会やセミナー、EVラリーの開催、子ども向けの教室など多岐にわたる。

鶴原 EVシフトが世界的な流れだという話がありましたが、EVシフトが進むと、社会や産業にどのような影響があるのか、具体的な例はありますか。

舘内 先日、物流業者さんに招かれてEVについての講演をしたのですが、トラックの燃料代がEVシフトで約3分の1に削減できるという話をしたら、かなり驚いていました。燃費や走行距離を加味して計算すると、10トントラックで年間約500万円ほど削減できる。10台で営業している物流業者さんなら約5000万円ですから、物流を根本から変革できるようなインパクトなんです。燃料費が負担になっている企業にとっては大きなメリットですよね。

鶴原 具体的にそういう数字が出れば、反響は大きいでしょうね。百瀬さん、メーカーサイドからはいかがでしょう。

百瀬 充電が面倒なのではないか、遠出をすると電気がもたないのではないかといった声をよく聞きますが、1泊2日の試乗キャンペーンをやると、こうした懸念は払拭されます。実際に使ってみたら、スマホを充電するのと同じ感覚だし、航続距離も十分だと実感していただける。舘内さんのお話にもあったように、費用が削減できるという経済合理性もあるので、知識を得てもらうことでハードルは下がっていくのかなと思っています。

鶴原 EVシフトを巡る状況が分かったところで、岡山県の取り組みへと話を移したいと思います。そもそも岡山県がEVシフトに注目したきっかけは何ですか。

原田 岡山県は、自動車産業が県の基幹産業なので、EVシフトに乗り遅れることは死活問題です。とくに、中小部品メーカーがEVの産業構造に対応できるよう、県として支援する必要があるだろうということで、EVシフトに取り組むことになりました。

地元産業とも連携した岡山県の取り組みとは
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