「ソラリア西鉄ホテル福岡」の客室。「和モダン」のデザインが魅力。

オフィス・ホテル分野のデザインで多数の実績をもつ三井デザインテック。同社は国際的なホテルデザインイベント「Sleep」のデザインコンペでのアジア初受賞(2016年)を追い風に、昨年グランドオープンした「ソラリア西鉄ホテル福岡」の客室全面リニューアルを手がけた。同ホテルを展開する西鉄ホテルズ社長の金子新さんと、ホテルの客室デザインを担当した三井デザインテック デザイナー・大磯祐子さんが、生まれ変わった「ソラリア西鉄ホテル福岡」のグランドオープンに込めた思いについて語り合った。

Photographer:菅 敏一(人物) Writer:國貞 文隆

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写真左:三井デザインテック デザインマネジメント部 デザイン第3チームデザイナー 大磯 祐子さん
写真右:西鉄ホテルズ 社長 金子 新さん
撮影場所/「ソラリア西鉄ホテル福岡」のエレベーターホール

金子 『ソラリア』ブランドの旗艦店である「ソラリア西鉄ホテル福岡」は、開業後初となる全面リニューアルを行い、昨年10月より新たなスタートを切りました。今回のリニューアルに当たっては、将来にわたって時代の変化に耐え得るホテルを目指したんです。

具体的には、インバウンドのお客様の要望に対応すべく、ツインルームとトリプルルームを増やし、国内外のお客様に日本文化に触れていただくため、「和モダン」のデザインを採用した。そうすることで、これまで以上に落ち着きや温もりを感じていただける空間が生まれました。お客様の評価の比重が高いバスルームにも力を入れ、バスとトイレをセパレートにして洗い場を作り、ゆったりしたバスタブを置いた。お風呂の水張りも、所定の位置で自動的に止まるようになっています。最新式のレインシャワーも女性を中心に人気で、大きな散水板から降り注ぐ大粒のお湯が全身を包み、効率よく短時間で体が温まるようになっています。こうして各所に最新機能を盛り込み、充実したリニューアルとなりました。

大磯 今回のリニューアルに当たって、福岡最大の繁華街・天神の中心にあるホテルの立地に着目し、「都市の真ん中で癒され、リラックスできるリビングのようなホテル」という意味で“TENJIN LIVING(天神リビング)”というコンセプトをご提案しました。これは「新しい3つの贅沢」という要素で構成されています。1つ目の贅沢は、ロースタイルの(高さがあまりない)家具を配置することでゆったりとした空間や景色を楽しめる「過ごす贅沢」。2つ目の贅沢は、柔らかな素材感や明かりで五感を刺激する「感じる贅沢」。そして3つ目の贅沢は、ホテルに泊まるだけで福岡を始めとした九州の魅力がわかる「知る贅沢」です。

とりわけ「知る贅沢」はこのホテルならではの試みで、当社のご提案に加えて、金子社長に伝統工芸の工房や職人の方々をご紹介いただいたことで、企画に弾みがつきました。客室内のアメニティに「伊万里焼の茶器セットやプレート」「博多織のフレームアート」「大川組子を使用したアメニティボックス」といった九州の伝統工芸を随所に盛り込み、お客様に本物の日本文化を知っていただく“知る贅沢”をご提供しています。

大川組子を使用したアメニティボックス。

金子 そうやって実際に触れていただいたアメニティを紹介するガイドブック「TENJIN SHELF」を、全客室に配置しました。興味を持たれたお客様が現地を訪問できるように交通手段を英語でも紹介し、伝統工芸の生産者にもご登場いただいた。こうして生産者の皆様のご協力をいただき、「知る贅沢」が実現できたのです。九州観光のゲートウェイ都市の役割を果たしている福岡ならではの試みでした。

全客室に置かれたガイドブック「TENJIN SHELF」。

西鉄グループには「地域とともに歩み、ともに発展する」という企業理念があります。遠方からお越しになるお客様を、地元が誇る工芸品でお出迎えできたら、きっと喜んでいただける。同時にそれが、各地のPRにもなるのではと考えました。

大磯 「TENJIN SHELF」は、天神を起点に「知る贅沢」を楽しむツールです。今回のリニューアルではほかにも、お客様が客室に入られるまでに通る動線の随所に、伝統工芸を配置しました。最初に目にするエレベーターホールには「小石原焼」「八女和紙のオブジェ」を、廊下の壁には九州の伝統的な風景を切り取ったフォトパネルを飾り、客室の扉を開けると伊万里焼や博多織といった“本物のアメニティ”が待っている── こうして客室階全体で「知る贅沢」を体験できるストーリーを演出しています。「過ごす贅沢」「感じる贅沢」といったハード面だけでなく、「TENJIN SHELF」を始めとした「知る贅沢」でソフト面も充実させたことで、ホテルがより魅力的な空間に生まれ変わるお手伝いができたのではと考えています。

金子 昨年10月のグランドオープンから数カ月経ちましたが、客室の稼働率、口コミ評価ともに、想定を超える記録・高評価をいただいています。「ゆったりとしたソファに座って夜景が楽しめる」「バスルームが広く、レインシャワーも充実している」「福岡再訪の際はまたこのホテルに泊まりたい」── そんなお客様からの声が寄せられている。限られた空間を広く見せるために、居室とバスルームをガラスで仕切ったり、ロースタイルの(高さがあまりない)ソファを窓際に設置して、外の景色を楽しめるようにしたり。そうした細やかな工夫が評価された結果です。

大磯 ホテルの皆様とディスカッションを重ねる中で、おひとりで利用されるビジネスユースのお客様にも対応できるよう、ダブルルームのデスクは少し高めに設定するなど、様々な工夫を凝らしました。

三井デザインテックは著名デザイナーらが競う欧州を代表するホテルデザインイベント「Sleep」でのコンペで、アジア地域で初めて審査員特別賞を受賞しましたが、その時ご提案したのが、クロスオーバーデザインの考え方を反映した「西洋と和の精神を織り交ぜた」デザインでした。色や素材、照明など全てが五感に訴える空間を追求し、和の精神を生かした“自然との繋がり”を感じられる空間を提案し、評価された。今回のリニューアルでもこの実績を生かし、「五感で感じる贅沢」「“感覚的な和”の感性(国内外を問わず、お客様が日本らしいと感じる感覚的な和のイメージ)」を意識してデザインしました。

金子 三井デザインテックのプレゼンを聞いた時、「これで決まりだな」と思ったんです。和モダンのデザインは、国内外のお客様に必ず支持されるという確信があった。西鉄ホテルグループでは現在、21店舗のホテル(国内19、海外2)を展開していますが、今回のリニューアルの成功を生かし、今後も国内外での出店を加速させる予定です。

大磯 ホテルは単なる宿泊施設ではなく、癒しやくつろぎの要素が重視されると同時に、昨今の価値観やライフスタイルの変化への敏感な対応を求められるなど、大きく変化しています。三井デザインテックでは、長年培ってきた「クロスオーバーデザイン」のノウハウを活かして、時代に求められる空間づくりのお手伝いをし、デザインの分野で“イノベーション”を形にしていきたいと考えています。

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