パナソニックがアフリカ初の電化プロジェクトをスタート マサイの人々の暮らしに“光”を届ける

ケニアの首都ナイロビの南西に位置するナロク県エンクトト地区。雨季には豊かな緑に覆われる草原の中にマサイの人々約3700人が暮らす集落がある。恒常的に電気にアクセスできず、昔ながらの放牧と小規模農業で生計を立てているこの村で、パナソニックは太陽光発電と蓄電池を組み合わせたシステムやLED照明付小型蓄電システムエネループソーラーストレージ、ソーラーランタンなどの寄贈と、電気に関する啓発教育や電気を活用した地場産業を興し、「コミュニティの自走」を目指す取り組みがスタートした。

左:太陽光発電・蓄電池システム 中:ソーラーストレージ 右:ソーラーランタン 

イルキマティ村の小学校のセレモニ―会場では300人を超えるマサイの人たちが出迎えてくれた

アフリカ大陸東海岸に位置するケニア共和国の首都ナイロビからオフロード車に乗ってガタゴト道を走ること6時間。ようやくたどり着いたのはナロク県エンクトト地区にあるイルキマティ村。ケニア南部からタンザニア北部地域に住む先住民族、マサイの人々が暮らす村だ。

村唯一の小学校に到着して車を降りると、聞こえてきたのは、底抜けに明るく軽快なリズム。この地域の民俗音楽だろうか。思わず体をスイングしたくなる楽しさがある。音の方向に目を向けると、そこには300人を超えるマサイの子どもや大人たちが長い列をつくり、私たち日本からやってきた一行を歓迎してくれていた。

パナソニック「無電化地域ソリューションプロジェクト」のセレモニー会場の看板

村に電気がやってくるー 未来への希望にあふれたセレモニー ー

2019年1月29日正午頃。ほぼ赤道直下に位置するこの村は、日中の最高気温は40度近くにもなる。だが、この日、この村の小学校は、きっといつにも増して熱気に包まれていたに違いない。小学校に通う生徒やその保護者などが大勢集まり、あるセレモニーが開かれるのを期待に胸を膨らませながら待っていた。

セレモニーには多くの関係者が出席した

そのセレモニーとは、パナソニックがこの村に届けた太陽光発電・蓄電池システムなどの寄贈式。「村に電気がくる。生活がもっと良くなる」――熱気の正体は、未来への希望であり、期待感なのだ。

2018年に創業100周年を迎えたパナソニックは、社会貢献活動の一環として、電気へのアクセスのない地域にソーラー発電システムを寄贈するとともに、地場産業の開発を支援する「無電化地域ソリューションプロジェクト」を展開している。アフリカではこのイルキマティ村が初めての実施になる。

ほぼ2年間の準備期間を経てこの村に届けられたのは、太陽光発電と蓄電池を組み合わせたシステム2台、ソーラーストレージ7台、ソーラーランタン150台。この地区の小学校や診療所、教会、通学している子どもがいる一般家庭などに贈られた。

パナソニックはケニアでプロジェクトを実施するにあたり、国際NGOのワールド・ビジョン・ジャパンとパートナーシップを組んだ。ワールド・ビジョンは、キリスト教精神に基づき、開発援助、緊急人道支援、アドボカシー(市民社会や政府への働きかけ)を行っている国際NGO。とくに困難な状況にある子どもの支援活動に力を入れており、日本事務所であるワールド・ビジョン・ジャパンは現在29カ国で135事業を実施している。

マサイの少年たちによる歓迎の歌と踊り。エネルギーにあふれるパフォーマンスに圧倒される

より安心・安全で豊かな暮らしをー 電気が拓く未来を語る ー

セレモニーには、ケニア政府関係者やナロク県副長官、在ケニア日本大使館、JICA(国際協力機構)ケニア事務所、ワールド・ビジョン・ケニアなどの関係者も多数出席し、順番にスピーチを行った。また、マサイの少年たちによる歓迎の歌と踊り、少女たちの合唱なども披露された。「私たちの村に電気がくる。自分たちの暮らしがもっとよくなる」――そうした期待感を込めた、少年少女たちのエネルギーにあふれるパフォーマンスに圧倒された。

歓迎のスピーチを行う生徒代表の少女

ワールド・ビジョン・ジャパン事務局長の木内真理子氏

パナソニック ブランドコミュニケーション本部CSR・社会文化部部長の福田里香氏

小学校の生徒代表の少女は、「電気を届けてくださってありがとうございます。夜でもあかりを使ってもっと勉強できるのでうれしいです」とスピーチした。この地域を統括するナロク県の副長官は「パナソニック、ワールド・ビジョンの関係者のみなさまに深く感謝を申し上げます。今日から、この地域の暮らしの改善、教育環境の向上への取り組みがスタートします」と挨拶した。

続いてワールド・ビジョン・ジャパン事務局長の木内真理子氏がスピーチ。「日本が世界に誇る技術を持ったパナソニック様とパートナーシップを組ませていただいたことに感謝いたします。電気は子どもたちの可能性を大きく広げるでしょう。今後、ワールド・ビジョンは地域の人々と協力し、電気を有効に活用して、教育や保健、栄養、生計の向上などの活動を行っていきます。そして地域の課題解決と発展に貢献し、子どもたちが夢を追いかけられるように全力を尽くします」と意気込みを語った。

こうした数々のスピーチを受け、パナソニック ブランドコミュニケーション本部CSR・社会文化部部長の福田里香氏が挨拶に立った。

「アフリカで初めて、このケニアのイルキマティ村に電気を届けることができ、大変うれしく思います。ランタンを使えば、夜道も安全に歩くことができます。夜、勉強や読書ができるようになるでしょう。診療所では夜の診察ができ、ワクチンや薬の冷蔵保存が可能になり、より健康に生活できるようになります。また、ソーラーの水ポンプを使って畑でトマトや豆を作り、養鶏を行うことで収入を高めることもできるでしょう。こうしたことを地域の皆様と共に実現していきたい。この村の子どもたちが将来、この村、ケニア、そして世界を担っていく姿を思うと今から楽しみです」――こう語りかけると、会場から拍手が沸き起こった。

写真左:小学校の屋根に設置されたソーラーパネル 写真右:太陽光発電と蓄電池を組み合わせたシステム

関係者が集まってシステムの建屋の前で除幕式が行われた

セレモニーの最後では、マサイの人々からパナソニックやワールド・ビジョンの関係者に感謝を込めた記念品が贈られ、写真撮影を行うなどさまざまに交流するシーンが見られた。ケニアと日本、地球のほぼ反対側に住む人たちが、ともに未来をつくるという思いを共有し、心を一つにする。その喜びと興奮が醒めぬまま、高鳴る音楽とともにイベントはいつまでも続いた。

村唯一の診療所

診療所でワクチンの冷蔵保存が可能に、ポリオ撲滅への一歩

記念プレート

ポリオ感染は深刻な課題の1つ

セレモニーに先立ち、パナソニックが届けたソーラーシステムなどの見学ツアーが行われた。まず訪れたのが村唯一の診療所。ひと月に400名程度の患者が訪れるこの診療所は以前より保健衛生面で大きな課題を抱えていた。

「私がこの地区を1年前に訪れたとき、この診療所では冷蔵庫はあっても電気がきておらず、ワクチンは毎週、看護師さんが50kmほど離れた町まで取りに行く必要がありました」と話すのは、パナソニックCSR・社会文化部事業推進課主幹の浅野明子氏。ワクチンは1〜2日しか保存がきかず、もし子どもたちが病気にり患してもすぐに対処することは難しかった。

ワクチンや薬を常に冷蔵保存できるようになった。診療所に勤める医療スタッフは、私たち一行を診療室に招き入れ、冷蔵保存庫の蓋を開けて見せてくれた。中にある温度計を指差し、「電気が来てくれて本当にうれしい。見てください、しっかり低温に保たれている」と笑顔で話してくれた。そして壁のポスターを示しながら「ケニアからポリオを完全になくすのが目標です」と語った。

写真左:喜びを語る診療所に勤める医療スタッフ 写真右:ワクチンや薬の冷蔵保存庫

小川から水を汲み上げるソーラー水ポンプ

ポンプで水をくみ上げトマトや豆を栽培、収入増へ

セレモニーの行われた小学校の敷地内にあるなだらかな斜面には、耕されたばかりの畑が広がっている。斜面のいちばん高い場所には大きな水タンクがあり、そこから畑に給水するチューブが一面に敷設されていた。ここでトマトや豆を栽培するという。

畑一面に点滴灌漑チューブが敷設されている

汲み上げた水を貯めるタンク

「太陽光発電による余剰電力を使って産業を興し、人々の収入向上につなげたいと思いました。そこで考えたのが農業と養鶏業。小学校の近くに小川があり、その水をポンプでタンクに汲み上げ、畑の灌漑用水にしたのです。ここで作った作物を学校給食にしたり、将来的には市場などで販売して地域の人々が経済的に自走する一歩にできれば」と浅野氏。

一年前にここを訪れたときは、畑は影も形もなかったという。小学校の生徒たちが一生懸命に、小川の側のポンプから畑の上のタンクまで数百メートルにわたって、水を通すパイプを埋める穴を掘った畑にトマトや豆が育つ日が楽しみだ。自分たちの暮らしを少しでも良くしたい――村の人々の思いがこの畑に深く刻まれている。

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無電化地域ソリューション無電化地域に、未来を拓くチカラを。