サウジアラビア基礎産業公社(SABIC)は、1976年に設立された中東有数の石油化学企業だ。そのビジネスは多岐にわたり、自動車や飛行機の燃費改善や水資源のスムーズな供給、革新的な肥料の開発やカラフルなスマートフォンケースの作成など、世界中のありとあらゆる課題に対する解決策を提供する。世界中の企業とも積極的に協同し、各国独自の課題解決に取り組む。本特集ではSABICのビジネスエリアを紹介するとともに、日本での事業展開について取り上げる。多くの日本企業にとって、同社のテクノロジーには、課題解決のヒントがあるはずだ。

コラボレーションが生み出すリサイクルシステム

SABICが世界的に力を入れている分野がリサイクルだ。現在、世界でリサイクルされるプラスチック包装材はわずか14%程度。世界中が環境問題に直面しているいま、従来のリサイクルシステムでは限度がある。

そんな中、SABICはプラスチックのごみをプラスチックのままではなく、原材料の化学品まで分解し、リサイクルするテクノロジーを開発した。こうすることで再び確かな強度を持ったプラスチックとして生まれ変わることができる。

SABICはこのテクノロジーを用い、世界規模でプラスチックのリサイクルを実現するため、パートナー企業とともに先駆的なコラボレーションを行う。それが「クローズループ」と呼ばれるリサイクルシステムだ。

企業同士のオープンなコラボレーションから誕生した「クローズループ」は、プラスチック以外の各方面に広がりを見せる。例えば、包装材業界におけるSABICのパートナー企業各社も、このコラボレーションに参加。元の高品質な原材料へのリサイクルを推進する。

さらにこのコラボレーションによって、低品質のプラスチックごみを分解し、食品を包装するのに最適な高品質の包装材にリサイクルすることに成功した。新たな材料を使わずにリサイクル材だけで、よりよい包装材を製造することが可能になったわけだ。もはやこれはリサイクルの概念を超え、新たな経済サイクルを創造したといっても過言ではない。

植物由来のポリカーボネート製造に成功

2019年10月16日~23日にドイツのデュッセルドルフで開催された国際プラスチック・ゴム産業展(K2019)で、SABICが植物由来で再生可能原料をベースとしたポリカーボネートの製造に成功したと発表し、大きな話題となった。

このポリカーボネートは、製造過程において既存の製品よりもCO2の排出量の削減に貢献することが認証されている。原料は植物由来であるものの、食品ではないため、食用ニーズと競合することはない。しかもこれまでのポリカーボネートと同等の強度や耐熱性能も確保する一方で、リサイクルしても強度が損なわれない性質を持つという。消費者のニーズにはもちろん、世界的な環境規制にも応える持続可能な素材が完成したわけだ。

まずはオランダのSABICの製造工場で製造をスタートし、将来的には世界的に販路を拡大する予定。自動車や電子・電気機器、建設・建築、ヘルスケアなどあらゆる業種での利用が見込まれている。

有害な二酸化炭素を有益な資源へ

リサイクルすべきは、プラスチックごみだけではない。例えば、二酸化炭素。排出量を削減するだけでなく、それを変換して有効利用する方法も求められている。

SABICは、大気に放出される二酸化炭素を年間50万トンも回収できるメガプラントを建設した。仮に植林によって同じ量の二酸化炭素を回収するには、約1,100万本以上の樹木が必要になる計算だ。

回収した二酸化炭素は、農業肥料の生産に使われたり、液体に変換され、清涼飲料水やメタノールの製造などにも使用されたりするという。各企業とのコラボレーションと想像力を駆使して、何百万トンもの有害な二酸化炭素を、有益な資源へリサイクルしているのだ。