ロングパワーリザーブを内包する静謐な知性
野性味を醸し出すラグジュアリースポーツ

文=鈴木裕之 写真=岩崎 寛

 セイコーが世界に誇る独自の機構「スプリングドライブ」は、今からちょうど20年前の1999年に発表された。機械式ムーブメントと同様にゼンマイで駆動し、調速を司る部分をICと水晶振動子に置き換えた、セイコー独自の駆動方式である。機械式の高トルクとクオーツの高精度を融合させたものとして、発表されるやいなや、世界の注目を集めた。グランドセイコーに搭載されたのは、発表から5年後の2004年。すぐに搭載されなかったのは、グランドセイコーが掲げる高い基準を、すべてクリアする必要があったからである。

 今年、スプリングドライブが20周年を迎えるにあたり、手巻きのグランドセイコー用としては3年ぶりとなる新型ムーブメントが発表された。そのうちの一つ、「9R31」の最大の魅力は、約72時間というロングパワーリザーブを実現したことにある。「9R31」のベースとなったのは、超薄型ムーブメントとして定評のある「7R88」。そこに、2本のゼンマイを一つの香箱に収める「デュアル・スプリング・バレル」を盛り込んだことで、薄さを確保したまま、駆動時間を延ばすことに成功した。

 ウイークデイの主戦力となる腕時計は、土日に身に着けないことも多い。もし翌週の月曜日に時刻合わせをしなおす煩わしさから解放されたければ、約72時間(=3日間)のパワーリザーブが欲しいところだ。つまり、「9R31」に与えられたスペックはビジネスパートナーとして好適のものといえる。

 もちろん、見た目も抜かりはない。この「9R31」を搭載するエレガンスコレクション「SBGY003」のノーブルなルックスは、ビジネスシーンで知的な印象を与えてくれる。フォーマルな席で身に着けても決して見劣りしない薄型モデルは、やはり1本持っておくのが嗜みだ。

 一方、グランドセイコーの進化は、ムーブメント性能だけに留まらない。特にデザイン領域の拡大には目を見張るものがある。それを強く感じさせてくれるのがスポーツコレクションだ。

 同じくスプリングドライブ20周年モデルとして投入された「SBGC231」が体現したスポーツ性とは、プロユースに特化したリアルスポーツ向けではなく、スポーティでありながらラグジュアリーさを感じさせるというもの。クルマに例えるなら、スポーツカーというよりむしろSUVに近い。すなわち、高級時計市場で新たな潮流になりつつある“インフォーマルスポーツ”へのグランドセイコーからの回答なのである。

 デザインの源泉となったのは、グランドセイコーを象徴する獅子。風格を感じさせつつ野性味に溢れたデザインは、獅子の爪を彷彿とさせるケースのエッジに象徴されている。一方、独特のパターンを持つブラウンダイヤルは、獅子の毛並みがモチーフ。スポーティでありながら上質感やつけ心地の良さを大切にしているあたりが、まさに現代の“インフォーマルスポーツ”人気と合致する。

 ラグジュアリーを体現することは一朝一夕では成し遂げられない。それを難なくこなす現在のグランドセイコーの感性こそ、世界に冠たるものなのだ。

グランドセイコー
エレガンスコレクション
SBGY003

「信州 時の匠工房」が手掛ける薄型ムーブメントをベースに、パワーリザーブを大幅に延長。ダイヤルに施された放射模様は、木漏れ日をイメージしたもので、これも日本独自の自然美をデザインに採り入れる試みの一つ。
手巻きスプリングドライブ、SSケース、径38.5㎜、85万円、スプリングドライブ20周年記念限定モデル、世界限定700本、グランドセイコーブティック・グランドセイコーサロン・グランドセイコーマスターショップ専用モデル、7月6日発売予定

グランドセイコー
スポーツコレクション
SBGC231

スポーティユースに必要な強靱さの中に、華やかさを盛り込んだラグジュアリーモデル。ケースはエッジをきかせた斜面で構成されており、ポリッシュとヘアラインを組み合わせることで、独特の存在感を醸し出す。
自動巻きスプリングドライブ、ブライトチタンケース、径44.5㎜、140万円、スプリングドライブ20周年記念限定モデル、世界限定500本、グランドセイコーブティック・グランドセイコーサロン・グランドセイコーマスターショップ専用モデル

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