トップが語る変革期の経営戦略
トップが語る変革期の経営戦略
BEYOND2020、当社は人生100年時代の「幸せ」を提供することを目指します

 人口減少に伴い、住宅産業の急速な衰退を危ぶむ声が上がっているが、「その論調には違和感がある。そこまで悲観視する必要はない」と話す経営トップがいる。累積建築戸数240万戸を誇る積水ハウスの代表取締役社長に昨年就任した、仲井嘉浩氏だ。「これからも当社の持つ技術と知見で、成長を続ける」そう仲井社長は宣言する。
 日経ビジネス発行人の酒井耕一が、その意気込みと成長ビジョンをうかがった。

3つのビジョンをもとに「BEYOND2020」も成長する

  •  住宅市場の将来については様々な予測がある。一部の調査機関から2030年には新設住宅着工戸数が60万戸まで減少するという推計も発表されたためか、住宅産業の急減速が喧伝されているが、「これらは建て替え需要が入っていない推計数字」と仲井社長は指摘する。
     「国内には、耐震や環境性能などが十分でない住宅が多く、建て替え需要はしばらく続く見込みです。日本総研も、2030年までは、年間80万戸台後半で推移すると予測しています。当社の計算でも近いものがあります」
     同社が上質な住まいの提供をビジネスの主軸に置くことに、変わりはないという。むしろ、この状況をバネに、成長につなげる構えだ。
     「良質なストック形成が急がれる今、半世紀にわたり住宅の高耐震化、高断熱化をリードしてきた当社の強みを生かせる余地は大きい」
     積水ハウスの創業は1960年。2020年で創立60周年となる。同社はこれまでの60年を2つのフェーズとしてとらえている。
     第1フェーズは、創業期の30年間だ。この時期、同社は安心・安全な住まいを追求し、耐震性・防火性・耐衝撃性を兼ね備えたシェルターとなる住宅の普及をリードした。

  •  第2フェーズは、次の30年間。快適性や環境配慮の向上にも取り組み、業界で初めて環境大臣認定の「エコ・ファースト企業」になるなど、住宅産業全体を牽引する役目を担った。
     そして来る第3フェーズでは、2020年からの30年間を「BEYOND2020」と銘打ち、「さらなるロケット成長を果たす期間」と位置付けている。
     その成長戦略は、「コア事業における新モデルの立ち上げ、国際事業の強化、ESG経営の強化の3本柱」と、仲井社長が挙げる。

    将来の新設住宅着工予測(全国)
「BEYOND 2020」で新たなフェーズへ

人生100年時代に対応する“プラットフォーム”となる家

  •  まず国内の工業化戸建・賃貸住宅事業におけるコア事業においては、業態を従来のハウスメーカーから、ハウスメーカー&サービス業へと拡大する。
     「2020年以降、人生100年時代が到来することは確実です。また社会が成熟し、量より質がより求められる時代になるでしょう。そんな状況にあって、人々の価値観も変化し、金融資産や有形資産だけでなく、健康や人とのつながりなどの無形資産が重視されるようになるはずです」
     そう仲井社長が分析する。
     「積水ハウスグループの企業理念は、“人間愛”です。時代が変わっても、当社が“幸せづくりのパートナー”であり続けることに変わりはない。とするならば、人生100年時代に我々が提供すべきは、無形資産である“幸せ”を提案し、かつ提供し続け得る住宅にほかなりません」
     具体的には、IoTによって住まい手のライフスタイルデータ、住環境データを採り入れ、それをベースに100年間、健康で、人とのつながりを得ながら、生き生きと学べる住宅を想定しているという。
     「“帰るべき場所”であることは当然として、ここで“健康”“つながり”“学び”を得て、また新しい可能性に向かい出発する基地。そんな住宅を『プラットフォームハウス』と名付け、2020年に発売していく予定です」(プラットフォームハウス構想の発表については次の見開きのコラム参照)。
     それに先立って、2018年8月には、「住めば住むほど幸せ住まい」を研究テーマとする「住生活研究所」を発足させた。社外専門家とも共同し、“健康”や“家族のつながり”などの“幸せ”の要素を科学的・論理的に明らかにして、住まいづくりに還元していく組織だ。企業としては日本初の試みだという。第1フェーズ、第2フェーズでノウハウを蓄積したからこそ可能な取り組みともいえる。

  • 第一弾は「家が健康をつくりだす」
     2020年に市場に送り出す『プラットフォームハウス』の第一弾は“健康”という価値を付与した住宅だという。
     「コンセプトは、“家が健康をつくりだす”。体に好影響を及ぼす住環境には、光量や温度、湿度などが快適であり、空気が清浄であることなどが必須要件です」
     空気に関しては、同社はこれまでも室内の化学物質量を、国の指針値のさらに半分以下にする空気環境配慮仕様『エアキス』を開発し、実績も豊富だ。
     「また脳卒中や心不全などのアクシデントを、センシング技術によりいち早く検知し、救急通報するシステムも構築中です」
     先端技術により万全の見守り機能が搭載された、これからの社会に期待されている住環境像を示す家となりそうだ。

    住宅事業の強みを生かし地方創生に貢献
     このほか、業態の拡張という意味では、ホテル事業世界大手のマリオット・インターナショナルおよび国内の各自治体と連携し、「Trip Base道の駅プロジェクト」を昨年立ち上げた。これは、「未知なるニッポンをクエストしよう」をコンセプトに、新しい旅のスタイルを提案するプロジェクト。国内外の旅行者に、道の駅を拠点にして地域の魅力を体感しながら、自由に日本を渡り歩いてもらうことを目指す。その第一歩として、道の駅に隣接したロードサイド型ホテルを建築する。2020年秋から5府県での開業を予定しており、「こうしたプロジェクトを通じて“まちづくり”に参加し、地方創生・地域活性化の一助となる取り組みとしたい」と仲井社長が話す。

プラットフォームハウスの概念図

「開発」「請負」「ストック」の3事業を海外でも展開

  • 「進出している国や地域は、当社の強みである中高級住宅路線が受け入れられ、環境配慮住宅のニーズが高いところを選んできました。既に積水ハウスのブランドはそれぞれのところで一定の評価を得ています。ただ、開発型のビジネスモデルに偏ってきました。そこで成長戦略の2本目の柱である国際事業の強化に関しては、国内の事業と同様に、 “請負型ビジネス”“ストック型ビジネス” “開発型ビジネス”の3つを展開していきます」

  • 請負型ビジネスとは、戸建て住宅や賃貸住宅などの建築の請負のこと。ストック型ビジネスは、リフォームやリノベーション事業、また賃貸住宅経営をサポートする不動産フィー事業などを含む。開発型ビジネスには、宅地造成販売や、住宅やマンションの分譲、都市再開発などの事業が含まれる。
    「この3事業を通し、当社の強みである戸建て住宅の工業化のノウハウを海外に移植していく」と、仲井社長が意欲を示す。

ESG経営で先頭走る、男性も育休完全取得

  •  成長戦略の3本目の柱は「ESG経営の強化」。うち環境(Environ-ment)の分野においては、周知の通り、積水ハウスは早くから「グリーンファースト戦略」を打ち出している。
     「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)については、2008年に、2050年を目標とした『脱炭素宣言』を発表し、開発と普及に努めてきました。国内では現状で新築戸建て住宅の76%に達していますが、国内のZEHをもう少し増やすと共に海外にも展開していきたい」と、夢を語る。
     「他方で、2019年11月から、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の買い取り期間が順次終了します。当社のお客様では年間約1万件がFIT切れとなります。当社は『RE100』に加盟しているように、事業用電力はすべて再生可能エネルギーで賄うことを宣言しています。そこで今までお引渡ししたお客様の太陽光電力を活用したいと考え、近々、具体的な仕組みを発表するつもりです」
     ESGのうちの社会(Social)に関しても、ダイバーシティ推進に力を入れてきた。経済産業省と東京証券取引所より、女性が活躍する上場企業「なでしこ銘柄」に5回認定されている。
     昨年は「男性社員1カ月以上の育児休業完全取得」を宣言。3歳未満の子を持つ男性社員全員が、1カ月以上の育児休業を取得し、最初の1カ月は有給とするという内容だ。実施率を上げるためサポート体制を整備し、研修なども実施して浸透を図っている。

  • 「先述のように、当グループの企業理念は“人間愛”。多様な人が活躍できる職場環境づくりは、私たち経営者の務めです」
     こういった取り組みにより、「キッズ・ファースト企業」という側面を充実させたいとする。
     「ESGのガバナンス(Gover-nance)では、“イノベーション&コミュニケーション”という言葉を使い、コミュニケーションをとりやすい職場づくりに注力しています。イノベーションのアイデアを持っているのは、現場の最前線の社員です。そうした社員の意見を汲み取るにも、コミュニケーションは不可欠です。先程述べた男性育児休業取得についても、部署内でのコミュニケーションがあってこそ、進むものと考えます」
     コミュニケーションを充実させる組織風土を醸成することで、ガバナンス強化を図るという。
    「今後は異業種とアライアンスを結び、オープンイノベーションを加速させたい」とも、先駆カンパニーの新しいリーダーが、力強く話す。

COLUMN

米国ラスベガス「CES2019」にて「プラットフォームハウス構想」を発表

  •  本年1月、米国のネバダ州ラスベガスで、世界最大級のコンシューマー・エレクトロニクス見本市「CES2019」が開催された。
     家電製品やモバイルだけでなく、ドローン、AI、自動運転システムなど、多様な業種が出展。最先端のデジタル技術や関連ビジネスを把握できるイベントとして世界的に知られている。
     ここに、積水ハウスが初めてブースを出展した。日本の住宅メーカーとしても単独では初となる試みだ。
     会場では仲井嘉浩社長自らが登壇して、「プラットフォームハウス構想」についてのプレゼンを行った。
     人生100年時代に対応する積水ハウスの技術の高さや医住連携に向けた取り組みの先進性を、会場に集まった各国のビジネスパーソンに印象付けた。
     今後健康に関するサービスの実現に向け、専門分野に強みを持つNEC、NTTコムウェア、慶應義塾大学理工学部、慶應義塾大学病院、コニカミノルタ、産業技術総合研究所、日立製作所と一緒に検討を進め、 2020年春の戸建て住宅での販売を目指す。

  • 「CES2019」の会見場で自らプレゼンテーションに臨む仲井社長

    「CES2019」の会見場で自らプレゼンテーションに臨む仲井社長

インタビュー後記

プラットフォームやアライアンス、オープンイノベーションなど仲井社長からは、先端的なIT企業の取り組みのような単語が飛び出します。創業60年を迎える伝統と実績を柱にしながらも、それに留まらず、新しい人材と経営資源を加えて、従来の住宅産業の枠を越える成長を目指す姿勢が伝わります。意識変革を促すリーダーシップにも注目したいと思います。

積水ハウス株式会社
〒531-0076 大阪市北区大淀中一丁目1番88号
梅田スカイビル タワーイースト
https://www.sekisuihouse.co.jp/
▲Page Top