1本7000円以上の「高級爪切り」という新ジャンルを確立し、世界中のファンを魅了する諏訪田製作所。
代表取締役の小林知行氏は、「スコッチの王道」と称賛され、自らもこよなく愛するバランタインに例え、
「愛され続ける品は、『正直なものづくり』から生まれる」と語る。

握った瞬間、手のひらにしっくりなじむ形状の心地良さと、グリップの軽さに驚く。爪の先を刃と刃で挟み、ほんの少し力を入れるだけで、パチンという小気味良い音を立てて切れる。閉じた刃と刃の間には、全く隙間がない。

圧倒的な切れ味の良さ。寸分の狂いもない接合。そして、研磨を重ねた美しい仕上げ。諏訪田製作所が世界に誇る「高級爪切り」は、まさに極上の逸品だ。

「祖父が大正時代からつくっていた“喰切”(木材から飛び出た釘の頭や針金などをニッパーのように喰い切る道具)をベースに、戦後になって爪切りの製造を始めました。『高級爪切り』として売り出したのは、ここ20年ぐらいのことです」と、代表取締役の小林知行氏は語る。

ニッパー型の機構を採用していることも一般の爪切りとの大きな違いだが、なにより“丹誠をつくすものづくり”をしているのが、「高級爪切り」たるゆえんである。

「通常、爪切り用の鋼材を鍛え上げるには80トン程度のプレスで十分ですが、当社は5倍の400トンで打っています。しかも鋼材はプレスの中心に当たった約3割の部分しか使いません」

研削や研磨はすべて手作業で行い、その工程は50にも及ぶ。1工程につき1人の職人を割り当てているため、多くの人手を必要とする。

安価なものでも1本7000円以上、高級品では数万円もする「SUWADA」の爪切りだが、値段の高さもうなずける。

贅をつくすことにこだわるのは、それが刃物づくりの生命線であるからだ。

「どんな爪切りも見た目の違いはそれほどありません。しかし、丹誠をつくしたものづくりから生まれるものは、使い勝手や物持ちの良さが圧倒的に違うのです。鍛冶屋の一人として、切れ味良く、長く使い続けられる刃物をつくるという基本は絶対に譲れません」と小林氏は語る。

1000℃以上の高温、400トンの力で鍛え上げた鋼材を特殊なサンドペーパーで研磨し、少しずつ完成に近づけていく。手作業の工程数は50にも及び、すべて熟練した職人が手掛けている