実力派ジャーナリストが新作時計を語りつくす!

腕時計選びのキーワード
「インフォーマルウォッチ」とは何か

SIHHやバーゼルワールドといった大規模な国際見本市への出展を回避するブランドも出始めた腕時計業界。
しかし、発表のスタイルは変われど、各ブランドの新作には、今年も目を見張るものがあった。
実力派時計ジャーナリスト2人を迎え、業界動向や話題の新作、
ビジネスパーソンにおすすめのモデルなどについて語りつくす恒例企画。
そこから見えてきた腕時計選びの最新トレンドとは―。

写真(会場)=宮本敏明  文=いなもあきこ

S.I.H.H.とバーゼルワールド。2つの世界的な時計の見本市を取材した時計ジャーナリストの広田雅将さんと篠田哲生さん、本時計特集を担当した安藤夏樹が、新作モデルの傾向、今年の時計業界の動向について語り合った。

安藤 今年のバーゼルワールドは、やはり盛り上がりに欠けましたね。出展ブランド数は前年比20%減の520、来場者も同22%減の8万1200人。会場周辺もいつになく静かでした。一方、SIHHは逆にブランドが増えて活況でしたが、来年にはオーデマ・ピゲとリシャール・ミルが出展しないと表明しています。総じてブランドの見本市離れが顕著になっていると言えますが、これは時計が売れていないということなのでしょうか?

篠田 いや、そんなことはありません。純粋に、見本市出展のコストが高いということだと思いますよ。

広田 スイス時計協会の2018年の前年比データを見ますと、輸出本数は減っていますが、輸出額は伸びています。つまり、ここ数年続いているトレンドで、単価が上がっているということ。ちなみに価格帯で見ると、500スイスフラン(約5万4600円 *5月24日時点。以下同)〜3000スイスフラン(約32万7900円)だと金額ベースで前年比7.4%増、それ以上だと同7.5%増です。

安藤 どちらも増えているんですね。

篠田 ただ、これより下、500スイスフラン以下はどんどん減っている。

広田 つまり、そのレンジを求める人は時計を持たない選択をしているということ。理由の一つには、スマートウォッチの台頭があるでしょうね。その価格帯の時計において最大のシェアを占める北米市場では、半数ぐらいがスマートウォッチに置き換わりつつあるので。

安藤 バーゼルワールドでも、確かにそうした低価格帯のブランドがより減った気がしますね。

広田 そうなんです。ただ僕としては、バーゼルワールドは意外と善戦したと思いますよ。また事務局は立て直しに乗り出すと明言していて、賃料の引き下げなども考えているらしいですし。

安藤 一方で、ブランドのCEOの中には、一堂に会して新作を発表する見本市自体に、意味がなくなっていると言っている人もいますよね。

広田 それは一理ありますが、いろんなブランドが個別にやっても、メディアもすべて回り切れませんよね。すると結果的に露出が減ってしまう。小売店側も、わざわざ時間を作って一つずつ行くほどの余力はない。そう考えると、数年後には、バーゼルワールドを出たところも戻らざるを得ないんじゃないかと。

篠田 確かに、スウォッチグループはハイエンドの6ブランドだけを集めて独自の見本市「タイム・トゥ・ムーブ」を開催したけれど、それ以外のブランドの露出は確実に落ちていますよね。

広田 見本市という“場”としてのバーゼルワールドは、やり方次第で今後また復活するだろうと僕は思っています。

掲載の内容は2019年6月時点の情報です。製品価格は税抜表記となっております。
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