Coal to Sustainable Society 石炭利用で創る循環型社会 中国陝西省・楡林市が描く全体構想が明らかに 「中国陝西楡林石炭化学高度化・新材料産業協力推進招致会」から

石炭を発電では無く化学品の原料として使う。中国陝西省・楡林市は、2025年までに総額5,000億人民元を投じる巨大な石炭化学コンビナートを擁する工業園区の建設に着手した。毎年、2,000億人民元のGDPを生み出すこのプロジェクトは、単に化学品を生産するだけではなく、そのプロセスで副生成物として得られる水素を、新たに工業園区に隣接させてこれから作る人が生活する街区のエネルギーとして利用する。さらに、風力や太陽光を利用する発電所を周囲に建設し、水の電気分解によって水素を増産し、本格的な循環型社会の実現を視野に入れる。

CO2排出の元凶と見做される石炭ではあるが、化学品の原料とすればそれだけで発電の場合の1/10に排出量を減らすことができるようになった。楡林では、それでも排出するCO2を捕獲し、再利用する計画に取り組んでいる。石炭利用で、CO2ゼロ・エミッションの工業園区の実現を目指している。

中国西部は良質な石炭鉱に恵まれ、炭鉱に近接させて化学コンビナートを作れば、コストはサウジアラビアで石油利用の化学コンビナートを建設するより下げることが出来る。周囲には塩やマグネシウムなど原料も豊富にある。

日本企業にとっても、安価な基礎材料が手に入る様になる楡林は、高機能化学品の事業を展開する場合の選択肢の一つになるはずだ。例えばハイケムと三菱ケミカルリサーチは、現地の有力企業の一つである陝西煤業化工集団とともに大型C1ケミカル・コンビナートを企画・設計し、これに基づきハイケムは陝西煤業と共同で同コンビナートの第1フェーズに当たる180万トン/年のエチレングリコールを生産するプロジェクトに投資している。 また、水素の利用技術を持つ企業にとっても、事業を拡大するためのチャンスがある。

まだまだ課題は多いが、楡林市は日本企業との協業に期待している。

環境への配慮から沿海部や都市部では化学品の生産を規制し始めたという中国の特殊事情も重なり、一気に注目を集める楡林市の石炭から創る循環型社会の構想。日経BP総研は、2019年7月3日に同市が主催し、ハイケムと日経BP総研が協力して東京で実施した「中国陝西楡林石炭化学高度化・新材料産業協力推進招致会」の講演内容をベースに、現地の最新情報を加えた解説記事を、順次公開していきます。

石炭利用で創る循環型社会

水素社会

日経BP総研がまとめた「石炭利用で創る循環型社会」の全体像。化学製品や電力の原材料として石炭を利用しながら、地域内ではCO2ゼロ・エミッションを実現し、大規模な水素社会のモデル地区を構築する。一つの会社活動の中でゼロ・エミッションや水素社会を実現することは簡単では無いが、楡林市の計画に参加すれば地域として達成出来ることになる。