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Indonesia-Japan
Smart City Virtual Forum 2020 レビュー

日本との緊密な連携によってインドネシアのスマートシティ化はその可能性を高めている

  • Indonesia-Japan Smart City Virtual Forum 2020
  • 開催日時 : 2020年11月25日(水) 12:30~18:15(日本時間)オンライン開催
  • 参加者数 : 264名(登録者数 : 546名)
  • 共催 : JASCA(日ASEANスマートシティ・ネットワーク官民協議会)、日経グループアジア本社、日経ビジネス
  • 協賛 & パートナー : NTT / アズビル/ Sinarmas Land
  • 後援 : インドネシア通信情報省 / Smart City and Community Innovation Center / Smart Indonesian Initiative Association / Smart Cities Network
  • メディアパートナー : Nikkei Asia
  • Webサイト : https://eventregist.com/e/indonesia_japan_smartcity2020

スマートフォンアプリ、指令センター、デジタルカード。インドネシアがスマートシティ国家として著しく成長を遂げるなか、日本との連携がその可能性をさらに高めている。ここでは、インドネシアがデジタル化を広範囲に進める取組みをどのようにスタートさせているか、またインドネシアのスマートシティを実現するために日本はどのようにかかわっていくことができるかを紹介する。

2017年にわずか25都市から始まったインドネシアのデジタル化は、この3年間でインドネシアの国内100都市にスマートテクノロジーを整備するまでに広がり、いまや国を挙げたデジタル化への移行が進められている。

首都ジャカルタでは、スマートフォンアプリで住民にリアルタイムの道路情報が提供され、慢性的な交通渋滞の緩和に役立てている。インドネシア第三の都市バンドンの指令センターはGPS装置を活用して、洪水など自然災害の危険の早期発見を可能にしている。ジャカルタから2,000km以上離れたマカッサルでは、市当局が住民にスマートカードを発行し、キャッシュレスでの支払いを促進しているといった具合だ。

インドネシアがスマートシティ化を進める大きな目的は、国民の将来を保証しつつデジタルに軸足を置いた国家になることである。「スマートシティ化の促進は、弾力性のある社会や持続可能な経済を築くうえで重要な役割を担うと考えている」とインドネシアのジョニー・G・プレート(Johnny G. Plate)通信情報大臣は述べている。

しかし、インドネシアがスマートシティ関連技術を次の段階に進めるためには、グローバルな経験を利用することが不可欠となる。そこで、スマートシティ構築の分野で先頭に立つ日本の役割が必要となってくる。

2020年11月25日(水)にオンラインで開催された、日経グループ・アジアと日ASEANスマートシティ・ネットワーク官民協議会(JASCA)の共催による「Indonesia-Japan Smart City Virtual Forum 2020」において、プレート大臣による基調講演が行われた。インドネシアと日本、二国間の協力関係を強化する目的で開催されたこのフォーラムには、各方面の専門家が一堂に会し、スマートシティ開発におけるベストプラクティス(最優良事例)や課題について意見交換が行われた。

「日本のことわざにもあるように、1本の矢は簡単に折れるが、10本の束は簡単に折れない。インドネシアと日本は弾力性のある社会の構築に向けて連携できる」とプレート大臣は述べた。

実際、インドネシアには世界有数のスマートシティ国家となるための資質がすべて備わっている。同国のインターネット・ユーザーは現在約2億人、インターネットの普及率はこの1年で15%近く伸び、73.7%にも達している。

しかし、インドネシアはデジタル化を進めるうえでこの国固有の課題に直面している。そのひとつが、1万7,000以上の島々から構成されるインドネシア諸島をカバーできるようスマートシティ技術を運用する点。こう指摘するのは、同国情報通信省でICTアプリケーション局長を務めるサミュエル・アブリジャニ・バンゲレアパン氏(Semuel Abrijani Pangereapan)だ。

「インドネシア全土の多くがへき地や国境地帯であることから、スマートシティを実施するための画期的ソリューションが必要とされている」と同氏はフォーラムの閉会挨拶で述べている。

そして、日本はインドネシアのスマートシティ構築をサポートすることで、インドネシアがもつその巨大な潜在力を引き出すことが期待されている。「日本の国土交通省は、昨年(2019年)日本で開催されたハイレベル会合で『ASEANスマートシティ・ネットワーク』の強化を目指してきた」と国土交通省 大臣官房 海外プロジェクト審議官の石原康弘氏は述べている。

さらに石原氏は「日本で私たちは経験に基づく実績を積み上げてきた。例えば、エネルギー管理システムを活用し、分配されたエネルギーを地域同士で共有することで、都市全体のエネルギー利用を最適化することができる。日本の先駆的モデルから得られる知識や経験は、日本国内のみならず世界中の、特にインドネシアの都市にとって非常に有益なものとなる」と今後のインドネシアのスマートシティ推進に対する日本の協力体制についても述べている。

Mr. Johnny Gerard Plate

Mr. Johnny Gerard Plate

Minister of Communication and Informatics of the Republic of Indonesia

石原 康弘 氏

石原 康弘 氏

国土交通省 大臣官房
海外プロジェクト審議官

Mr. Anies Rasyid

Mr. Anies Rasyid Baswedan

Governor of Jakarta, Jakarta Capital City Government

Mr. Semuel Abrijani Pangerapan

Mr. Semuel Abrijani Pangerapan

Ministry of Information and Communication and Information Technology

Dr. Yudhistira Nugraha

Dr. Yudhistira Nugraha

Head of Jakarta Smart City, Department of Communications, Informatics and Statistics, Provincial Government of Special Capital Territory of Jakarta

小林 孝 氏

小林 孝 氏

国土交通省 総合政策局
海外プロジェクト推進課
国際協力官

日本・インドネシア共通のビジョン
-スマート・フューチャー

現在、スマートシティ4.0(第4世代のスマートシティ)による技術革命が進行しているジャカルタは、今後インドネシアのデジタル革命の広告塔となる都市である。

ジャカルタ特別州の住民は、以前は政策に順応するだけでよかったが、現在ではスマートシティ構想の実現を州政府とともに支援することが求めらている。こう述べたのは、フォーラムの主賓であるジャカルタ州のアニス・ラシッド・バスウェダン(Anies Rasyid Baswedan)州知事。例えば、市当局のサービスについて利用者が感想や意見を送信できるジャカルタ州のモバイルアプリ「JAKI」は1日当たり約1,400件のメッセージを受信している。

「現在は、国民が国を動かしている。テクノロジーのおかげで、社会は統治や開発のプロセスに直接参画できるようになった」とバスウェダン知事は語り、テクノロジーは都市問題や市民のニーズに取り組むために必要な基盤だと付け加えた。

「スマートシティとはエコシステムである。国民と行政はともにその実現に取り組むパートナーなのだ」とジャカルタ・スマートシティ構想を率いるユディスティラ・ヌグラハ(Yudhistira Nugraha)氏は述べている。

スマートシティ実現に市民を関与させるというインドネシアの目標は、人間中心の社会をつくり出すためにIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などのデジタルソリューションを活用しようとする日本の科学技術政策「ソサエティ5.0(Society 5.0)」とぴったり一致している。

例えば、新型コロナの世界的感染拡大により医療分野におけるスマートソリューションへのニーズが加速するなか、日本はモバイルやクラウド技術を活用した遠隔医療ネットワークで公衆衛生の改善に取り組んできた。こうした医療システムの改善は病院にかかる負担を軽減させることになる。

将来、スマートシティは気候変動のような地球全体に関わる問題に対しても解決策をもたらすことができる。このため、インドネシアは日本が実現した成果を改良することができる。国土交通省 総合政策局 海外プロジェクト推進課 国際協力官の小林孝氏は次のように述べている。

「スマートシティは地球規模の問題に対する解決策として、さらに注目を集めている。この意味では、日本にはスマートシティソリューションが多数あり、インドネシアのスマートシティ推進に活用することができる」。

課題の中にチャンスを見出す

在京インドネシア大使館のトリ・プルナジャヤ(Tri Purnajaya)公使は本フォーラムの開会挨拶で次のように述べている。「インドネシアでは、まだスマートシティが実現できていない。2045年までに人口の83%が都市住民になると予測されており、現在の都市化モデルを維持することは不可能である。

インドネシアの都市は、よりスマートに、より清潔に、より健康になる必要がある。スマートシティが改善できるのはこの部分だ。国民誰一人とも置き去りにしてはならず、日本がもつ経験や数多くの専門家から、スマートシティ推進に向けて、確実に多くのことを学べる」。

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よりスマートで住みやすい都市を実現するために
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