2017年にわずか25都市から始まったインドネシアのデジタル化は、この3年間でインドネシアの国内100都市にスマートテクノロジーを整備するまでに広がり、いまや国を挙げたデジタル化への移行が進められている。
首都ジャカルタでは、スマートフォンアプリで住民にリアルタイムの道路情報が提供され、慢性的な交通渋滞の緩和に役立てている。インドネシア第三の都市バンドンの指令センターはGPS装置を活用して、洪水など自然災害の危険の早期発見を可能にしている。ジャカルタから2,000km以上離れたマカッサルでは、市当局が住民にスマートカードを発行し、キャッシュレスでの支払いを促進しているといった具合だ。
インドネシアがスマートシティ化を進める大きな目的は、国民の将来を保証しつつデジタルに軸足を置いた国家になることである。「スマートシティ化の促進は、弾力性のある社会や持続可能な経済を築くうえで重要な役割を担うと考えている」とインドネシアのジョニー・G・プレート(Johnny G. Plate)通信情報大臣は述べている。
しかし、インドネシアがスマートシティ関連技術を次の段階に進めるためには、グローバルな経験を利用することが不可欠となる。そこで、スマートシティ構築の分野で先頭に立つ日本の役割が必要となってくる。
2020年11月25日(水)にオンラインで開催された、日経グループ・アジアと日ASEANスマートシティ・ネットワーク官民協議会(JASCA)の共催による「Indonesia-Japan Smart City Virtual Forum 2020」において、プレート大臣による基調講演が行われた。インドネシアと日本、二国間の協力関係を強化する目的で開催されたこのフォーラムには、各方面の専門家が一堂に会し、スマートシティ開発におけるベストプラクティス(最優良事例)や課題について意見交換が行われた。
「日本のことわざにもあるように、1本の矢は簡単に折れるが、10本の束は簡単に折れない。インドネシアと日本は弾力性のある社会の構築に向けて連携できる」とプレート大臣は述べた。
実際、インドネシアには世界有数のスマートシティ国家となるための資質がすべて備わっている。同国のインターネット・ユーザーは現在約2億人、インターネットの普及率はこの1年で15%近く伸び、73.7%にも達している。
しかし、インドネシアはデジタル化を進めるうえでこの国固有の課題に直面している。そのひとつが、1万7,000以上の島々から構成されるインドネシア諸島をカバーできるようスマートシティ技術を運用する点。こう指摘するのは、同国情報通信省でICTアプリケーション局長を務めるサミュエル・アブリジャニ・バンゲレアパン氏(Semuel Abrijani Pangereapan)だ。
「インドネシア全土の多くがへき地や国境地帯であることから、スマートシティを実施するための画期的ソリューションが必要とされている」と同氏はフォーラムの閉会挨拶で述べている。
そして、日本はインドネシアのスマートシティ構築をサポートすることで、インドネシアがもつその巨大な潜在力を引き出すことが期待されている。「日本の国土交通省は、昨年(2019年)日本で開催されたハイレベル会合で『ASEANスマートシティ・ネットワーク』の強化を目指してきた」と国土交通省 大臣官房 海外プロジェクト審議官の石原康弘氏は述べている。
さらに石原氏は「日本で私たちは経験に基づく実績を積み上げてきた。例えば、エネルギー管理システムを活用し、分配されたエネルギーを地域同士で共有することで、都市全体のエネルギー利用を最適化することができる。日本の先駆的モデルから得られる知識や経験は、日本国内のみならず世界中の、特にインドネシアの都市にとって非常に有益なものとなる」と今後のインドネシアのスマートシティ推進に対する日本の協力体制についても述べている。