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東京電力エナジーパートナー×アクセンチュア 特別対談 ─DX時代の新しい価値創造とは─ 東京電力エナジーパートナー×アクセンチュア特別対談 - DX時代の新しい価値創造とは - デジタル活用とリーダーシップで大規模な改革に挑む

共に変革の時代を迎えている電力業界とコンサルティング業界。両業界のリーディングカンパニーのトップであり、就任から1年以内という共通点のある、東京電力エナジーパートナー 代表取締役社長の秋本展秀氏とアクセンチュア CEO のジュリー・スウィート氏が対談を行った。(2020年2月21日に対談)

変革の時代に必要なのは
新しい価値を創造すること

──秋本さんは2019年4月に東京電力エナジーパートナーの代表取締役社長に就任され、約1年を過ごされましたが、大きく変化したことはありますか。

秋本 東京電力グループがお客さまや社会に対して担う責任をこれまで以上に強く感じるようになりました。電力業界は現在、激動の時代の真っただ中であり、電力・ガスの自由化に加え、脱炭素の潮流や環境意識の高まりによる再生可能エネルギーへのニーズが高まっています。また、激甚化する自然災害を受け、防災レジリエンスへの対応も強く求められています。そうした中、これまで東京電力が提供してきた価値は維持しながらも、良い意味でイメージを一新するような新たな価値を提供していくことが、私たちには求められていると思います。

スウィート 貴社のこの1年の取り組みを拝見していると、秋本さんが新しい価値創造に挑戦されているのがよく分かります。キャラクターとしても親しみやすいという評判だとお聞きしています。

秋本 自覚はありませんが、そう言われることは多いですね。アプリゲームが好きで、一緒にプレーしている社員も多いからなのかもしれません(笑)。

スウィート 社員の皆さんにとって接しやすい社長でいらっしゃるのですね。仕事をする上で、心掛けていることはありますか?

秋本 お客さまの暮らしに新たな楽しみや喜びをもたらすサービスを生み出すこと、そしてそのプロセスを私自身も楽しむようにしています。社員にも、前例にとらわれず、楽しむ気持ちを忘れずに仕事をしようと伝えています。

──スウィートさんは2019年9月にアクセンチュアのCEOに着任され、今まさに改革に挑戦されているとのことですが、具体的な取り組みを教えてください。

スウィート 電力業界同様、コンサルティング業界も変革の時代を迎えています。消費者の生活にデジタルが浸透したことによって、企業に求められる価値は一変しました。消費者の興味などに応じて、関連した商品やサービスがレコメンドされます。購買行動がより優れたサービスの提供につながるのが当たり前になっています。消費者にとって重要なのは、個別の企業やブランドよりも、パーソナライズされた体験なのです。

秋本 電力自由化ともシンクロする話ですね。パーソナライズされた体験の実現には何が必要なのでしょうか。

スウィート 特定の企業や部署という従来の単位での改革では、消費者が求める価値を提供できないので、お客さまの企業全体、さらには業界横断というダイナミックなスケールで改革を進める必要があります。アクセンチュアも、そうしたお客さまのパートナーとなれるよう、大胆な体制転換を図っています。具体的には、提供するサービスを「ストラテジー&コンサルティング」「インタラクティブ」「テクノロジー」「オペレーションズ」の4つに再編し、「北米」「欧州」「成長市場(日本を含むアジア太平洋・アフリカ・中東・トルコ地区の総称)」の3つに設定した地理的単位で事業を管理していきます。

秋本 やはりグローバルが大きなキーワードになるのですね。

スウィート そう思います。戦略立案からオペレーションに至るまで、お客さまに最適化されたサービスを迅速に提供するには、グローバルな体制を強化していくことが不可欠です。アクセンチュアは、全世界で100を超えるイノベーションハブがあるので、そのネットワークを生かしつつ、ソリューションの開発を加速していきたいですね。

変革の時期をチャンスと捉え、
良い意味でイメージを一新したい

秋本氏
東京電力エナジーパートナー株式会社
代表取締役社長
秋本展秀
東京大学 経済学部卒業後、1991年東京電力入社。東京電力ホールディングス 福島本部 復興調整部 部長代理、東京電力エナジーパートナー 常務取締役を歴任し、2019年4月から現職。

DXを目的化するのではなく
ツールとして使いこなす

──両業界共に変革の時代を迎えているとのことでしたが、それぞれの業界で注目しているトレンドはありますか。

スウィート コンサルティング業界に限らず、DX(デジタルトランスフォーメーション)が定着しつつあります。もちろんDXは不可欠なのですが、デジタルというのはあくまでも改革のための手段なので、DXが目的化してしまわないように注意する必要はありますね。大切なのは、DXの先にある新たな価値の提供で、お客さまもそうした明確なビジョンをお持ちだと感じます。

秋本 確かにDXは現行業務の改善を可視化しやすいので、目的化する傾向がありますね。最終的な目標は、やはりお客さまの課題を解決すること。その要となるのが「データ」だと思います。東京電力は、大量の顧客情報を保有していますが、電気ビジネスを中心とした企業なので、自社だけでできることには限りがあります。業界の垣根を越えて他社と連携することで、データの活用範囲も広がりますし、サービスの発展が見込めるのではないかと考えているところです。

スウィート データや情報は、サービスの拡充に必要ですが、扱いが難しいという面もありますね。この点で参考になるのが、エストニアの取り組みです。エストニアは、行政サービスの99%が電子化されていて、「最先端の電子国家」「デジタルガバメント」として、注目されています。

秋本 私もエストニアには関心を持っていて、視察にも行ったのですが、行政と企業で共通のIDを一元管理しており、電力契約も含めたあらゆる手続きが簡易な電子契約で終わるようになっていました。

スウィート ブロックチェーンを活用してセキュリティの課題を解決したり、オープンソースを開示して誰もがアクセスできる基盤を構築したりと、最新のテクノロジーが生活の中に無理なく取り入れられていて、まさにDXをツールとして使いこなしています。このモデルは世界的にもスタンダードになっていくのではないでしょうか。

秋本 データはどうしてもセンシティブな面がありますが、セキュリティにも配慮しながらニーズや利便性にしっかりと応えることで、国民全体で取り組んでいるように感じました。データをどう扱い、どう活かしていくかという点で参考になる事例だと思います。

日本企業が本気を出せば、
ポスト・デジタル時代は近づきます

スウィート氏
アクセンチュア
CEO
ジュリー・スウィート
クレアモント・マッケナ大学で学士号、コロンビア大学ロースクールで法務博士号を取得。法律事務所を経て、2010年にアクセンチュアに入社。主席法律顧問やグローバル経営委員会を経て、2019年9月から現職。