日経ビジネス電子版 Special

明日に変革をもたらすアナログ・デバイセズ

 vol.1 5G ローカル5GによるIoT応用開拓はエコシステム共創で加速する

5G(第5世代移動通信システム)の本格的な商用サービスが世界中でスタートした。
日本では、通信事業者以外の企業や自治体が、5Gネットワークを自由に構築し利用可能とする「ローカル5G」が整備され、IoTなどへの活用の拡大を後押ししている。俯瞰した立場から業界の動きを見る、情報通信総合研究所の岸田重行氏と、5G基地局などで用いる回路技術を提供する、アナログ・デバイセズ(以下、ADI)のJoe Barry氏が、5Gの応用拡大に向けた課題とその解決の視点について、ローカル5Gを中心に議論した。

社会課題解決での5G活用はリリース16でその真価を発揮

Joe Barry 氏
アナログ・デバイセズ
ワイヤレス通信事業部
担当副社長
Joe Barry

──5Gの商用サービスの出だしをどう見ますか。

岸田 国内では、2020年春から本格的な商用サービスが始まり、普及のペースがスローという声もありますが、私の目から見れば想定内の動きだと思います。新型コロナウイルスの蔓延が、5Gの立ち上がりに極端に大きな影響を与えているとは感じていません。現在は技術の応用面でも様々な実証実験が活発に行われています。

Barry 世界各地では、最初の規格である3GPP リリース15に準拠した商用サービスが予定通り始まり、ミリ波を使った高速大容量通信も実用化しています。コロナ禍によって5G端末の普及は遅れていたものの、徐々にそれも改善しつつあります。5Gサービス加入者の数は順調に伸びており、4G導入時よりも立ち上がりは早いと見ています。

 応用分野拡大の観点から、私がとくに期待を寄せているのは5Gの全技術性能要件に対応したリリース16です。このサービスが始まることで、同時多数接続と超低遅延での通信が実現し、ミッションクリティカルな応用に欠かせない高い信頼性を確保できるでしょう。ローカル5Gの重要性は高まり、それによってIoTへの応用が広がると予想しています。

岸田 氏
情報通信総合研究所
ICTリサーチ・コンサルティング部
上席主任研究員
岸田 重行

──5GのIoTへの応用によりどのようなインパクトがもたらされますか。

岸田 2つの応用分野の開拓に注目しています。1つは自動運転車を含む自律型ロボット。これは社会課題の解決に極めて大きなインパクトがあると考えています。もう1つは、現実世界と同じモノを仮想世界に再現して高精度の分析や予測を可能にするデジタルツイン。社会コストの削減や安全性の向上など様々な効果が期待されます。これらの活用を推し進めるためには、リリース16で追加される機能が必須になります。

Barry 興味深い応用ばかりですね。私は医療・ヘルスケア関係の応用にも注目しています。世界規模での新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、ますますその関心は高まっており、5GとIoTデバイスの連携は、医療・ヘルスケアの分野に変革と恩恵をもたらすでしょう。

 他方、工場の生産性向上や輸送の自動化など産業関連の応用でも、これまで有線だったセンサーの接続が無線化し、設備のコスト、大きさ、重量などが大幅に削減し、可動性も高まります。しかも、各センサーに機械学習などを利用したインテリジェンスを付与することも可能になります。工場や輸送に関わる管理・制御システムは劇的な進化を遂げるでしょう。