松山一雄氏 アサヒビール専務取締役 兼 専務執行役員 マーケティング本部長
市場で実感確かな手応え!
日経トレンディ 2020年業界別ヒット2020 受賞
杉本昭彦 日経トレンディ発行人
アサヒビールの型破りな挑戦に迫る!
ヒット請負人 松山一雄氏が語る
日経トレンディ 2020年業界別ヒット2020 受賞「アサヒ ザ・リッチ」の魅力とは?!〜絶好調の理由を分析〜
群雄割拠の新ジャンル市場でヒットを起こす
松山一雄氏 アサヒビール専務取締役 兼 専務執行役員 マーケティング本部長
プレミアムビールのうまさを目指した新ジャンル「アサヒ ザ・リッチ」贅沢醸造で丁寧にこだわってつくり、贅沢なコクを実現。アルコール分は、すこし高めの6%。日々をちょっとリッチな気分でくつろぐのにふさわしい商品。

奇しくも33年前のスーパードライの発売日と同じ日、今年3月17日に発売し、好調に推移している「アサヒ ザ・リッチ」が、10月8日、今年の年間販売目標を当初計画比の約2.4倍となる950万箱(*)へ再上方修正。さらに、「日経トレンディ」の人気企画である「2020年ヒット商品」における「業界別ヒット」を受賞したことでも「アサヒ ザ・リッチ」が絶好調であることは一目瞭然。コロナ禍により人々のライフスタイルがガラリと変わり、消費構造も大きく変化する中、群雄割拠の新ジャンル市場において、「アサヒ ザ・リッチ」はなぜお客様に受け入れられたのか。商品開発の背景には何があったのか。どんなマーケティング戦略が執られたのか。この商品のヒット請負人であり、2018年にアサヒビールが32年ぶりに外部から起用した、専務取締役 兼 専務執行役員 マーケティング本部長の松山一雄氏に、日経トレンディ発行人の杉本昭彦が迫った。
(*)1箱は大瓶633ml×20本で換算

1 絶好調の「アサヒ ザ・リッチ」 販売目標を2回上方修正して、当初計画比約2.4倍 激戦の新ジャンル市場 でお客様の心をつかめた 理由

杉本 昭彦

PROFILE
松山一雄氏 アサヒビール 専務取締役 兼 専務執行役員 マーケティング本部長
鹿島建設、サトー(現サトーホールディングス)、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)などを経て、2001年サトーに再入社、11年からサトーホールディングス社長。18年9月にアサヒビールに入社。

杉本「アサヒ ザ・リッチ」の変わらぬ好調ぶりは多方面から耳にしていますが、率直に今の状況をどう感じていらっしゃいますか。

松山「アサヒ ザ・リッチ」は、おかげさまで、当社の過去10年間の新商品の中でも最高売上を更新しており、年初に掲げていた400万箱という販売目標をこれまでに2度上方修正し、最終的には、年度内で、当初の約2.4倍の950万箱の達成を目指している状況です。私たちは、同じ新ジャンルで既に定番の一角を占めている「クリア アサヒ」というブランドを持っていますが、「アサヒ ザ・リッチ」も必ずそれに肩を並べるブランドになると信じており、それほど手ごたえのある商品を世の中に出すことができたことを、素直にうれしく思っています。

杉本群雄割拠の新ジャンル市場はレッドオーシャンだと思うのですが、すでに「クリア アサヒ」という大きな商品を走らせていた中、なぜまたアサヒビールとして新商品を投入し、勝負に出たのか、そこの狙いを教えていただけますか。

松山近年、新ジャンル全体の商品レベルが上がってきて、ビールより手頃な価格でビールに近いものが飲めるこの新ジャンル市場にお客様の支持が高まっています。新ジャンルを飲まれているお客様に様々な方法で何度もリサーチをしてみたところ、現状に満足しているというお声をいただいてはいるものの、よく掘り下げてみると、心の底に『本当はビールを飲みたい』という本音が見え隠れしていたのです。そんなビールに何らかの未練がある方が6割くらいいまして、そうした方々から、『できることならプレミアムビールみたいな贅沢感のあるものを飲みたい』というお声を聞き、新ジャンルでそんな新しい価値の商品が出せたら、大きな一歩になるだろうと思ったのです。

杉本なるほど。「アサヒ ザ・リッチ」は、お客様の声から生まれた商品だったというわけですね。

松山はい。主役はお客様。そのことを徹底して追及しました。

2 アサヒビールの新たなチャレンジ 「ライバルはプレミアム」 に込められた 気概とは?

杉本 昭彦

PROFILE
杉本昭彦 日経トレンディ発行人
1991年、日経BP入社。「日経デジタルマーケティング」編集長、「日経ビッグデータ」編集長、日経クロストレンド開発長兼日経クロストレンド副編集長を経て、2019年より現職。

杉本「アサヒ ザ・リッチ」の商品開発にあたり、松山さんはマーケターとしてどのような点を意識し、大切にされたのでしょうか。

松山私は、2年前にアサヒビールに来てからずっと、『主役は商品ではなくお客様である』というメッセージを発信し続けてきました。我々のミッションは、商品やサービスを通じてお客様に喜んでいただくこと。であるからこそ重要になってくるのがお客様のインサイトです。お客様の言葉の行間を読み、深堀りし、心が動く瞬間、目が輝く瞬間をつかむ。今当社では、そうしたお客様の態度変容を促すインサイトを探す取り組みを全てのカテゴリーで行っていますが、「アサヒ ザ・リッチ」は、お客様のインサイトを商品開発に活かし、実際の市場で成功することができた、最初の例ではないかと思います。

杉本松山さん流のインサイトの探し方とは。

松山N1(たった一人のお声)を大事にし、深堀りすることです。これは以前働いていた会社で教わったことなのですが、例えば、N1を20人くらい、それぞれ徹底的に深掘りし、1人につき畳3帖分くらいのツリーを作っていくんですね。すると、ものすごくナレッジがたまる。手に入れるべき仮説が全て手に入るんです。これを、定量調査と融合させるという方法を自分なりのやり方にしています。「アサヒ ザ・リッチ」に関しては、これをそのまま採用したわけではないのですが、スタッフには、調査で何かに強く反応したお客様がいたら、その裏にはまだ顕在化していないものすごく大きなチャンスがあるかもしれないという視点を持ち、お客様の心が本当に動くものを、常識にとらわれない発想で探し、掘り下げ、見つけてきてほしいと話しました。そうして出てきたのが、“プレミアムビールのような上質感を味わえる贅沢新ジャンル”というキーワードだったのです。でも、このやり方を貫くのは意外と難しい。これまでアサヒビールは、商品が主役のマーケティングを長く続けていましたから、マネジメント会議で『N1でこんな話がありました』と言っても、定量を見ながら進めることが多くありました。ですが、今回私はマーケティング本部長として、『定量は最後に取るから、まずはお客様が主役の、そして本当に自分たちが自信の持てるものを思い切り作ろう』と、『香り、コクなど本気で“ライバルはプレミアム”を目指そう』と、掛け声をかけ続けました。

ストップ!20歳未満飲酒・飲酒運転。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。ほどよく、楽しく、いいお酒。のんだあとはリサイクル。