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先輩後輩対談 - 新たな人材が自動車業界の未来を拓く - 伝統と革新の融合で挑むダイハツ新世代のクルマづくり

ITの進化によってクルマに求められる機能や性能も大きく様変わりし、ユーザーの暮らしも、自動車業界を取り巻く環境も急激な変化を遂げつつある。そんな中、「DNGA」や「ダイハツコネクト」といった新たな取り組みで好調な販売台数を維持しているのが、ダイハツだ。課題とされていたモビリティー革命に対応するべく、キャリア採用にも積極的に取り組む。ダイハツのクルマづくりの原点である「お客様の暮らしに寄り添ったモノづくり」を、静かに加速させている。

顧客に寄り添ったモノづくり
それがDNGAの基本

 「CASE※1」や「MaaS※2」といった新しいクルマの概念の進展によって、今、世界の自動車メーカーは“100年に一度”と言われる変革期に直面している。このモビリティー革命は単にクルマのつくり方を変えるだけでなく、これからの自動車メーカーの“あり方”そのものを大きく変えてしまう可能性も秘めている。

 ダイハツも、CASEやMaaSに対する将来戦略が後手に回っているという危機感から、新たな時代で生き残るための変革を迫られていたという。そんなダイハツが2016年から全社一丸となって取り組んできたのが、「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」という新世代のクルマづくりの仕組みだ。

佐藤 氏
ダイハツ工業株式会社
コネクティッド戦略室
兼 製品企画部
エグゼクティブ・チーフ・エンジニア
佐藤 耕

 DNGAは、ユーザーに扱いやすく高品質なクルマを手ごろな価格で提供することを目的にしたダイハツの新たな挑戦であり、「良品廉価」という理想の下で1㎜・1g・1円にこだわり続けてきたダイハツらしい考え方が、随所に散りばめられている。

 「お客様にどのような価値を提供できるのかという戦略を親会社であるトヨタと共有しつつ、役割分担を明確化することで、将来を見据えたCASEやMaaSにも対応したクルマをお客様にお求めやすく提供するのが狙いです」と話すのは、DNGAの基本構想にも携わったコネクティッド戦略室 兼 製品企画部 エグゼクティブ・チーフ・エンジニアの佐藤耕氏だ。

 「お客様の暮らしに寄り添ったモノづくり」というダイハツのクルマづくりの原点に立ち返り、コネクティッド(車両情報通信)の分野に注力することの重要性を会社に提案。社内横断組織が結成され、プロジェクトがスタートした。

※1 CASE:Connected(コネクティッド)・Autonomous(自動運転)・Shared & Service(シェアリング&サービス)・Electric(電動化)の頭文字をつなげた言葉

※2 MaaS:Mobility as a Serviceの略で、移動すること自体をサービスとして捉えるという考え方

スマホとクルマがつながる
ダイハツコネクトを提供開始

多田 氏
ダイハツ工業株式会社
コーポレート本部
コネクティッド戦略室
副主任
多田 延明

 しかし、未知の分野への挑戦だけに、ビジョンを描けても社内の人材だけではプロダクトアウトができない。そこでダイハツでは新たなノウハウや知見を求めて、17年からキャリア採用を開始。数十人の人材が新たにプロジェクトに加わったことで、19年11月に発売されたコンパクトSUV『ロッキー』には、スマートフォンとクルマが連携する新サービス『ダイハツコネクト』が初めて搭載された。

 「あえて通信機を車載せずにスマートフォンを活用したのは、機能的にも価格的にもユーザーの負担を少なくするためです。普及してこそ意味があるというのが、『先進技術をみんなのものに』というダイハツの価値観ですから」と佐藤氏は言う。

 ダイハツコネクトでは車内に設置したWi-Fiルーターで通信をサポートするサービスも提供するが、これを担当したのが19年3月にキャリア入社した多田延明氏だ。IT関連の経歴を買われ、コネクティッド部門のWi-Fi担当になった。

 「チームリーダー同士の意見のぶつかり合いなど、前職とは全く異なる初めての環境に最初は戸惑いましたが、逆に言えば本気のダイハツをデビュー戦で経験することができたのかなと。たとえ入社半年の人間の意見でも、佐藤さんのような上の役職の人が柔軟に受け入れてくれる企業文化があるので、モチベーションが上がります。自分でも別人と思えるくらい、この1年で成長できたと思います」と多田氏は言う。

新たな人材の力を活用して
ダイハツらしい取り組みを加速

 開発も終盤に差し掛かったタイミングでWi-Fiシステムが抱える問題点について危機感を感じていた多田氏は、思い切って直接考えを伝えた。佐藤氏はすぐにモニター車で2日間、使い勝手を確認すると、Wi-Fiのシステム変更を提案。

 「あそこで判断していなければ商品化に間に合わなかった」というほどきわどいタイミングだったが、現場レベルでこうした決断を下せるのも実にダイハツらしいエピソードだと佐藤氏は振り返る。

 「たとえ意見がぶつかり合っても、お客様にとってこっちがいいよねとなると、すぐにみんなが理解してくれるという風土が当社にはあります。普通は会議などで1カ月近くかかる決定が、ダイハツではすぐにキーマンが集まってその場で決めてしまうなんていうこともよくあります。会社の規模が小さく一人ひとりの守備範囲が広いため、お客様は何がうれしいのかということを全員が想像できるというのも当社の強みです。そこに新しい知見を持った人たちがうまく融合してくれれば、CASEやその先の技術開発も必ず実現できるという手応えを感じています」

 勝ち残りを懸けて始めた改革では順調なスタートを切ったが、今後はクルマだけでは解決できない困りごとに対応するMaaSの取り組みも加速させなければならない。そのために必要となるのが、クルマ以外の多様な知見を有する人材だ。

 「お客様の暮らしに興味を持てる人なら、ダイハツの中には必ず活躍の場がある。多田さんたちと仕事をして実感しました。こうすればもっと暮らしが豊かになるという発想力と、それを実現するパワーのある人と一緒に働きたい。いろいろな人が混ざった方が絶対に楽しく仕事ができますから」。そんな佐藤氏の言葉に、多田氏が大きくうなずいた。

カーライフを安全・快適にする
ダイハツコネクトとは

クルマとスマートフォンを接続することで、ユーザーが手軽にサービスを受けられるのが「ダイハツコネクト」だ。①事故や故障時の安心を提供する「つないでサポート」、②クルマとドライバーを見守る「見えるドライブ」、③クルマの状況をスマートフォンから確認できる「見えるマイカー」、④メンテナンスをサポートする「つないでケア」という4つのサポートを受けられるほか、車内に設置したWi-Fiルーターによる通信サポート「ダイハツWi-Fi」も提供。また、「スマホアプリ連携」を使えば、普段利用しているアプリを車内でも快適に利用できる。

ダイハツコネクトとは