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職住融合、リスク対策などニーズや課題を取り込んだニューノーマル時代の住宅職住融合、リスク対策などニーズや課題を取り込んだニューノーマル時代の住宅

大和ハウス工業は、「家で働く」を支えるテレワーク空間として新たな提案を発表した。プロジェクト立ち上げから短期間で発表できたのは、転用できる既存商品や技術、情報を有する強みと、市場のニーズやお客様の声を吸い上げてスピーディーに商品・サービスに反映するDNAがあるからだ。ニューノーマル時代を見据えた住宅事業の戦略とは。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のために発令された緊急事態宣言によって、通勤電車やオフィスでの3密を避けるべく、多くの企業がテレワーク、特に在宅勤務に移行した。緊急事態宣言が解除されると、オフィスへの出社が再開されたが、テレワークをそのまま継続する企業も少なくない。テレワーク環境でも、社員間の情報共有やコミュニケーション、意思疎通に支障がないことに気づいたからだろう。

 一方で、自宅で仕事をすることでさまざまな課題や悩みが浮き彫りになったのも事実。大和ハウス工業で住宅事業を担当する、取締役常務執行役員の大友浩嗣氏はこう語る。「当社は今でも社員の多くがテレワークをしています。ただ、当社の社員に限らずテレワークをされている方にとっては、仕事に集中する部屋やスペースが自宅内になかったり、Web会議や電話中に子どもの姿や声が入ってしまったりと、在宅勤務をするうえでさまざまな悩みがあるようです」。家は「生活する」ことが主目的。そのため、オフィス勤務をしていた人が自宅で毎日仕事をするのは、自分も家族も決して快適ではない。

 「『家族に気を使わせている』と考えると余計に気疲れしてしまいます。感染拡大防止のためにテレワークが推奨されていますが、実行するとなるとどの家庭も悩みは尽きないのではないでしょうか」(大友氏)。

■ダイワハウスが新たに提案した2つのテレワークスタイル■ダイワハウスが新たに提案した2つのテレワークスタイル/快適ワークプレイス/つながりワークピット

■ダイワハウスが新たに提案した2つのテレワークスタイル快適ワークプレイスつながりワークピット

社員の多くがテレワークに移行 市場ニーズを捉えてすぐに商品化

 これからは何事においても“ニューノーマル”が求められる。大友氏も「自宅でいかに快適に暮らし、かつ仕事をするかという点では、ワークライフバランスではなく、これからは『ワークライフミックス』、つまり職住融合が重要視されるようになるでしょう」と語る。そう見立てて同社は今年6月、テレワークスタイルを実現する住まいとして「快適ワークプレイス」「つながりワークピット」というコンセプトを発表した。

 「快適ワークプレイス」は防音仕様のクローズド空間で、自分の声は室外に漏れず、壁の外の生活音なども抑えられる。また、同社独自の音響システム「コーナーチューン」を角に設置することで、Web会議や電話でも音声がクリアになるという。防音でありながら、高速のインターネット通信も可能。3光色切り替えが可能なLEDダウンライトによって、一日中どの時間帯も快適に過ごすことができる。

大和ハウス工業 株式会社
取締役常務執行役員
大友浩嗣 氏
Otomo Hirotsugu

 「単に書斎や個室のようなスペースをつくるだけなら、どの住宅メーカーや工務店も施工できます。しかし、当社にはこれまで培ってきた商品や知見、技術力があります」(大友氏)。実際、ミュージシャンや楽器愛好家向け、あるいはシアタールーム用に「奏でる家」という防音室がある。今でも高い評価を得ているこの家庭内防音室を、新商品の「快適ワークプレイス」に活用した。

 もう1つの「つながりワークピット」は、リビングやダイニングに隣接するセミクローズドの空間。子どもや家族の気配を近くに感じられるので、仕事と家事・育児を両立したい人には“ゆるやかな距離感”が心地いい。もちろん、仕事だけでなく、家事スペースとしても活用できる。

 ダイワハウスがこれらのテレワークスタイルの住まい提案をしたのが今年6月1日。つまり、緊急事態宣言の発令中(4月7日〜5月25日)にプロジェクトを進めていたことになる。住宅のような大きな商品であれば、通常もっと長期の企画開発期間を要するにもかかわらず、発表に至るまでのスピーディーな取り組みには驚いた。

 大和ハウス工業東京本社では、新型コロナウイルスの感染が拡大しつつあった3月からテレワーク移行に乗り出した。そんな中、大友氏の号令でプロジェクトを立ち上げ、テレワークで情報共有を進めた。

 また、社内アンケートも実施。「仕事専用の空間が欲しい」「電話中の音漏れが気になる」「家族が気を使わなくていい空間が欲しい」「子どもの様子を見ながら仕事ができる空間が欲しい」といった要望や声も、今回のテレワークスタイルにきちんと反映している。「社員を含めて市場の声を広く深くリサーチし、その時代の社会問題や課題の解決に貢献する商品・サービスを提供する。こうした姿勢や精神がダイワハウスのDNAに刻み込まれています」。大友氏はこう胸を張る。

今にも通ずる「家事シェアハウス」創意工夫で社会課題解決の住宅を

 「快適ワークプレイス」「つながりワークピット」は、新築や建て替え、リフォームの際に間取りに取り入れることができる。「評判も上々で、リリースからわずか1カ月間で首都圏を中心に56件もの契約を獲得した」(大友氏)。ただ、これは偶然のヒットではない。これまで市場のニーズ、お客様の要望や意見に地道に耳を傾けてきた賜物であり、必然の結果といえる。

 同社は、変化していく家族のカタチに合わせて多様な住まい方を提案する「これからの住まい方プロジェクト」を展開しており、今回の提案はその第5弾。2016年に発表した第1弾「共働き世帯のための戸建て住宅『家事シェアハウス』」は、間取りや動線などを工夫することで、「名もなき家事」を含めて家族で自然に家事をシェアするというコンセプトの住宅だ。「玄関の自分専用カタヅケロッカーに靴やコートを各人で片付ける」「玄関から洗面所に直行して手洗いし、部屋着に着替えてリビングに入る」などの習慣づけは、ウイルスを家に持ち込まないという意味で今のコロナ禍にも有効な考え方といえる。

 「気候変動や異常気象による水害、地震が多く、全国には地理的リスクの高い地域も少なくありません。安心して働き生活できる、社会課題の解決に貢献するような住宅をこれからも創意工夫して提供していきます」。大友氏はこう締めくくった。

ダイワハウスのテレワークスタイル
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