日経ビジネス電子版スペシャル

今、なぜディップは「デジタルレイバー」に注目するのか

「バイトル」「はたらこねっと」など求人情報サイトを運営するディップ株式会社が
デジタルな労働力を提供するデジタルレイバーフォース事業に参入した。
なぜ、ディップが今「デジタルレイバー」なのか。
代表取締役社長 兼CEO冨田英揮氏と取締役COO志立正嗣氏に話を伺った。
(聞き手:フリーアナウンサー中野美奈子氏)

時代の変化をチャンスに変えなければ
新たな進化はない

ディップ株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 冨田 英揮 氏

中野

最近、AIやRPAを生かしたデジタルレイバーを提供されていますが、その経緯から伺えますか。

冨田

当社は創業から常に時代の変化を進化に変えてきました。インターネットの黎明期に、将来は求人の在り方もネットに移行すると考えて、いち早くインターネットの求人情報サイトを立ち上げました。当時は紙の求人情報誌しかなく、求人広告枠も小さなものでしたが、インターネットに移すことで求人情報の在り方が大きく進化しました。

その後、YouTubeが出始めた頃には、将来、動画の時代が来ると確信し、職場を動画で紹介する機能を取り入れました。ユーザーには職場の雰囲気がよく分かると評判になりました。当時としては斬新で、ようやく時代が追い付いたなと感じます。

そして近年のAIやRPAといった技術の発展を受け、新たな進化を実現しようと乗り出したのが、デジタルレイバーフォース事業なんです。デジタル技術によるレイバー(労働力)、つまり人間ではなくロボットを提供する事業です。具体的には、職場のパソコン上で、定型の作業を自動でこなすソフトウェアを提供します。

中野

時代の変化を進化につなげてきた会社なんですね。

冨田

はい、特にAIは第4次産業革命の原動力でもあり、この変化の波を捉えなければ、新たな進化はないと考え、2016年から日本初・最大級のAI・人工知能専門メディア「AINOW」(AIナウ)を開始し、AI関連情報を発信しています。さらに、AI分野のベンチャー企業を育成・支援するため、「AI.Accelerator」(AIアクセラレーター)というインキュベーション事業も運営しています。すでに1000社以上のAIベンチャーと面談し、有望なベンチャーを支援しています。このようにディップには、AIに関して最先端の知見が集積されています。デジタルレイバーフォース事業も、こうした知見に裏打ちされています。

人とデジタル両面のソリューションを提供する「労働力の総合商社」へ

人とデジタル両面のソリューションを提供する「労働力の総合商社」へ

中小企業こそデジタルレイバー導入を

ディップ株式会社 取締役 COO 志立 正嗣 氏

中野

企業側はデジタルレイバーを使った場合、どのような効果がありますか。

冨田

実は、サービス化する前に自社で試しているんです。2018年から営業業務の定型作業を自動化したところ、年間約20万時間の削減に成功しました。今では、すべての営業担当者に秘書がついているような状態で、有望見込み客をデジタルレイバーがアドバイスしてくれることもあり、働き方も大きく効率化し、働く環境が格段によくなりました。社員自ら導入効果を実感できたため、お客様にも自信を持って勧めています。

中野

どういう仕事がデジタルレイバーに向いているのですか。

志立

中小企業やお店でも、情報を検索して表にまとめるとか、受発注の処理とか、パソコン上での定型業務はいくらでもあります。そういう単純作業はデジタルレイバーに任せたほうが、人件費の面でも効率の面でもはるかにメリットがあります。

中野

今、デジタルレイバーの導入はどのくらい進んでいるんですか。

志立

デジタルレイバーの中でも主流のRPAは、大企業では半数ほどに導入されていますが、中小企業の場合、使い方が難解、コストが高い、社内に専門家がいないといった理由であまり導入が進んでいませんでした。業務分析・システム設計など開発に多額の費用や期間がかかるし、導入後の保守にも専門的な知識や費用が必要でした。

中野

楽にしてくれる道具なのに、導入や活用のハードルが高いのでは、本末転倒ですよね。

志立

そこで当社では、業界ごとに多くの企業に共通する定型作業を自動化したデジタルレイバーを開発し、「コボット」という愛称で提供しています。手作業で何十時間もかかる作業が、コボットならわずか数十分で完了します。

この3月にはベトナム最大のIT企業であるFPTソフトウェアと業務提携し、さらに高い技術で低コストのサービスを提供できるようになりました。初期費用や保守費用が不要で月額2万円から、というコボットもあるので、中小企業でも安心して使え、販売開始から1年3カ月余りで、すでに6000社以上の導入実績があります。

中野

2万円ならアルバイトを雇うより安いですね。

志立

ええ、中小企業でも十分に手が届きます。しかも24時間文句言わずに働いてくれますからね。店長さんしかいないような小さなお店でもすぐに使えます。

冨田

大企業がこういう技術を駆使して低コストで迅速・大量に定型作業を処理できるようになっていく中、中小企業が時給1000円以上もかけ、従業員に任せていては勝負になりません。逆に言えば、こういう道具を使うことで、大企業との競争に負けない体質を今のうちに仕込んでおくチャンスとなります。だからこそ、当社は中小企業やお店が導入してすぐ使える高品質なデジタルレイバーを安価に提供しているんです。

定型作業をデジタルレイバーに任せて
人には人らしい仕事を

フリーアナウンサー 中野 美奈子 氏

中野

ところで、求人情報サービスで長らく人を扱ってきたディップが、なぜデジタルレイバーなんですか。

冨田

今後20年で仕事の半分がデジタルレイバーにシフトするといわれる中で、ディップは自らその流れをいち早く取り入れ、今や全社員の年間労働時間80万時間削減計画を掲げるなど、デジタルレイバーの先進企業と言えます。毎月40万件以上の求人情報を取り扱い、さまざまな業界や仕事の内容に精通している立場から見ていると、「人間にこんな定型作業を任せずに、もっと別の仕事をやってもらったほうがいいのでは?」と思う場面がたくさんあります。長年、人を扱ってきたからこそ、人の大切さを誰よりも理解しています。家庭に洗濯機、食洗器が入ってきて家事が楽になりましたよね。おかげで、主婦が社会進出しやすくなったし、子育てや趣味に時間を割けるようになりました。同様に、パソコン上の仕事にも自動化できる部分がたくさんあるので、そういうルーティン作業はデジタルレイバーに任せて効率化し、人にはその方の能力を発揮できる仕事を任せたほうが職場も生き生きとし、労働環境もよくなっていきます。そうなれば、従業員は長く定着してくれて熟練度も高まります。やがて生産性は向上し、結果的に企業の競争力強化につながります。

中野

人間には人間らしい仕事をしてもらうためのデジタルレイバー導入という考え方は素敵ですね。

冨田

ええ、中小企業にも労働環境を改善していただくためには、デジタルレイバーは簡単に導入できなければならないと考えます。洗濯機のように、簡単で安くなければ中小企業には使ってもらえませんから。その点、コボットは、人手不足で困っている中小企業やお店にこそ、使ってもらいたいサービスなので、徹底的にコストを抑え、保守費も専門家も不要のサービスへ進化させたと自負しています。人間対デジタルレイバーという構図ではなく、業務に合わせて、適材適所で人材かデジタルレイバーによる労働力を提案することにより、労働に関わる課題を総合的に解決したいのです。

デジタルレイバーフォース事業と、これまでの「バイトル」等の求人情報サービスをヒューマンワークフォース事業へと名称を変え、この2事業で“Labor force solution company”を目指します。いわば“労働力の総合商社”です。

人間がもっと人間らしい仕事に取り組み、会社の生産性も業績も上がる。何よりも仕事が楽しく、幸せを感じられる世の中にしたい。そのためにも、ディップは常に新しい時代の変化を見逃さずに捉え、進化に変えていきます。ぜひご期待ください。

中野

今後の展開が楽しみです。本日はどうもありがとうございました。

お問い合わせ:ディップ株式会社

 TEL. 03-5114-1177 
https://www.dip-net.co.jp