三井住友海上火災保険株式会社
人事部 企画チーム
課長
荒木 裕也氏
三井住友海上火災保険株式会社
データマネジメント部
次長 サイバーチーム長
上村 征広氏
コロナ禍によって、多くの企業がテレワークの導入に踏み切った。三井住友海上火災保険も、この間、従業員約2万人の在宅勤務体制を整備。「社員の感染防止」「生産性を下げない」「ナレッジの共有」、そして「新しい働き方へのチャレンジ」をポイントに置いて取り組みを行った。
もともと同社は、2016年以降、働き方改革を推進する中で、テレワークの導入も進めてきていた。「これまで、いくつもの壁に直面してきました。それは『必要性を認識する壁』『仕組みを導入する壁』『効果を出す壁』などです。それらの壁を1つずつ克服するためにシステムの導入・強化はもちろん、在宅勤務にかかわる制度面の整備、マネジメント層の意識改革、行動指針の策定などを進めてきました」と同社の荒木 裕也氏は振り返る。
今回、従業員約2万人の在宅勤務体制を速やかに整備できたのも、このような一連の積み重ねがあったからといえる。
とはいえ、もちろん、2万人規模、しかも緊急対応ともなると様々な新しい課題をクリアする必要があった。
例えば、ハード面について同社は、数年前からシンクライアントを導入し、外部からVPN経由でクライアントにアクセスできる環境を整備してきた。「しかし、今回は在宅勤務の対象者が比べものにならないくらい広く、既存のインフラでは力不足だという問題が浮上。急遽、システムの性能を増強する対策を講じました」と同社の上村 征広氏は語る。
また、テレワークで欠かせないコミュニケーションツールについて、対応するWeb会議ツールの種類を増やしてほしいという現場の要求に対応したり、従業員の利便性を考慮して個人所有のスマートフォンでもWeb会議に参加できるようにしたり、随所で柔軟な判断で決定。「個人所有のスマートフォン利用については、意見が割れましたが、この環境下では多少のセキュリティリスクはとっても事業継続性を優先すべきと判断されました」と上村氏は言う。
さらに注目が、ソフト面での取り組みだ。
同社は、かねてテレワークの円滑な利用や業務の生産性を担保するための要諦を「虎の巻」として作成し、従業員やマネジメント層に対して公開してきたが、今回、新たにセキュリティを確保するためのチェックリストも作成。「Web会議ではファイル共有や録画などの機能を使わないといった使い方から、Wi-Fiの設定まで細かく記載し、それに準じてテレワークを行うよう周知しています」(上村氏)。
これらの取り組みが奏功し、同社は大規模なテレワークへの移行と、その後の業務継続をうまく乗り切った。利便性とセキュリティのバランスを自由に判断し、ハードだけでなく、ソフト面からもアプローチして体制・環境を整えるなど、テレワークの定着とセキュリティを考える上で、同社の取り組みは大いに参考になるはずだ。