「スマートエネルギーストア」を目指す
環境配慮モデル店舗で実証実験を繰り返すローソンの挑戦

2020年度までの省エネルギー中期目標として、1店舗当たりの電気使用量を2010年度対比で20%削減を掲げ、地球温暖化対策や省エネなどの実証実験に取り組んでいるローソン。近年では 機器のIoT化による節電制御や要冷蔵機器の完全ノンフロン化などにより、電力使用量を既存店より60%削減を目標とする店舗もオープンした。これを可能にしたのは毎年1店舗のペースで開く環境配慮モデル店舗。ローソンはここで最新のシステムや技術をいち早く取り入れ、検証を繰り返しながら未来にあるべき店舗の実現を目指している。

樋口 智治(ひぐち・ともはる)
1996年にダイエーコンビニエンスシステムズ(現ローソン)入社。97年に建設部関東、2007年に中四国建設施設管理、14年に省エネ・環境推進部を経て、15年から現職。

写真:菊池 一郎

ローソンが展開する環境配慮モデル店舗の最新となるのが、2019年9月に慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス内でオープンした慶應義塾大学SFC店(神奈川県藤沢市、以下「SFC店」)だ。一見、通常の店舗と変わらないが、注意深く店内を見回すと、ある違いに気づく。

おにぎりやサンドイッチ、サラダなどが並べてある商品棚。エアカーテンによる温度管理でオープンになっているのが一般的だ。ところが、SFC店の商品棚には、扉が付いている。

あえて扉を付けた狙いは、電気使用量の削減のためだ。エアカーテンではなく、物理的に締め切ってしまうことで、「電気使用量は30~35%ほど抑えられる」とローソンの樋口智治・開発本部建設部シニアマネジャーは話す。これは、ローソンによる、さまざまな節電の取り組みの一例である。

ローソンは2016年から慶應義塾大学SFC研究所とともに、経済産業省が行うVPP(バーチャルパワープラント)構築実証事業を通して店舗のエネルギーコントロールに取り組んでいる。VPPとは、家庭やビル、店舗などに点在する複数のエネルギーリソースを、IoT(モノのインターネット)により遠隔で統合制御し、1つの発電所のように機能させて需給バランス調整に活用する技術のこと。樋口シニアマネジャーは、環境配慮モデル店舗を手がける中心メンバーの1人だ。

ローソンではSFC店も含め、現在、東京電力と関西電力管内の約500店舗を対象にVPP構築実証事業を実施している。具体的には、店内やエアコン、冷蔵庫の照明、加えて一部店舗の蓄電池などの機器を、インターネットを介して外部から一元管理。基本的には電力需給のピーク時に、照明の照度を下げたり、エアコンの温度設定を変えたりといった制御を一斉にかけている。

明るさや温度の制御にひと工夫

もっとも店舗を運営するオーナーにとって、店内の明るさや温度は、入りやすさや居心地、商品がおいしそうに見えるといった来店者の購買意欲につながる大事な要素という側面がありそうだ。本部の判断で店内を暗くしたり、夏に冷房を抑えたりといった一律制御で売り上げに悪影響を及ぼすといったデメリットは起きないのだろうか。

こんな疑問に対し、樋口シニアマネジャーは「照明の調整やエアコンの温度制御には工夫あります」と明かす。

「照度を一気にパッと落とすと、多くの人は気づきます。それに対して、時間をかけて少しずつ照度を変えていくと、お客さまも店舗で働いているスタッフもほとんど気がつかないのです。ですから、ゆっくり照度を落とすように制御をかけています。エアコンについては、温度設定を外部制御で変更しても店内温度が急に暑くなったり寒くなったりすることはありません。1時間の制御が終わる頃になって、少し寒さや暑さを感じる人がいるかなというぐらいの変化だと思ってください。実証事業の4年間で、外部制御に『不快感を覚える』といったご意見は少数です」

実証事業に参加する約500店舗には、VPP専用のタブレットを置き、制御をかける前にはタブレット画面に店舗ごとの制御をかける対象機器や開始・終了時間を音と画面で通知する。しかし、店舗によっては日にちや時間、利用客の入り方によって、「今日はやめてほしい」というタイミングもある。そこで、店舗の判断で、タブレットを使って簡単に外部制御を中止することが可能だ。

樋口シニアマネジャーは、こう説明する。「ローソンの事業はフランチャイズビジネスですから、オーナー様の協力を得て一緒に実証事業を行っていますので、強制ではありません。ただし、これまで4年間、ほとんどの店舗で制御の拒否はなく、営業や売り上げに支障を来さない形で電力の負担を減らすことができています」。現在、節電量は1店舗当たり2~5kWほど。今後、VPP対応の店舗を増やし、制御時間を伸ばせば、節電量も大きくなる。店舗数を持つコンビニエンスストアならではの強みだ。

EVの蓄電機能に着目する

SFC店では、環境配慮のために、ほかにも新たな取り組みを開始している。

例えば、店舗のオーナーにアドバイスを送るスーパーバイザーが使用する社有車に、EV(電気自動車)を導入した。そのEVを、店舗に設置した専用充放電機に接続し、IoTによる外部からの制御でEVから店舗へ電力を融通することで店舗の消費電力制御に活用する。

「蓄電池は、節電を実現するうえで必要不可欠だと考えています。これまでも、蓄電池を取り入れようと試していたのですが、費用対効果の観点でなかなか難しいのが実情です。でも、EVであれば、社用車として、蓄電池として、VPP対応としての3役が期待できます」と樋口シニアマネジャーは話す。

店舗に設置した太陽光パネルから生み出される電気でEVに充電し、それでスーパーバイザーが回れるようになれば完全にクリーンエネルギーが実現可能となる。ローソンには将来そんな世界を実現したいという思いがある。さらに言えば、台風などの自然災害が起きたときに、EVによる給電という支援が話題になった。コンビニエンスストアは、地域の安心・安全という点で、社会インフラの機能も求められている。ローソンのEV導入は、こうした面でも期待される取り組みとなりそうだ。

節電に加えて、地球温暖化をもたらすとされる二酸化炭素(CO2)排出削減にも乗り出している。ローソンでは、既にノンフロンに対応した要冷機器を約3600店舗(2019年8月末時点)に導入している。SFC店ではさらに一歩進め、店内で使用するすべての冷蔵庫と冷凍庫の完全ノンフロン化を実現した。

課題は加盟店にメリットを還元できる仕組み

ローソンの環境配慮モデル店舗がスタートしたのは2008年。SFC店以前では、2018年オープンの館林木戸町店(群馬県館林市)、2017年オープンの小平天神町二丁目店(東京都小平市)などがある。館林木戸町店では構造や内装に断熱性の高い国産杉のCLT(直交集成板)を使用したり、夜間にCO2冷凍機を運転させて氷を作って昼間に要冷ケースを冷却するウルトラエコアイスを導入したりしている。小平天神町二丁目店では、天井に除湿や空調効率を向上させる除湿式放射パネル空調や床下空間にたまった地熱を店内換気に活用するシステムを取り入れている。どちらも通常店より消費電力の60%削減を目指しているという。

モデル店舗の導入ペースは年1店舗ほど。その年ごとに新しい省エネ設備や創エネシステムを導入し、実験検証で省エネ効果の高かった機器や得られたノウハウを既存店へ導入している。現在、LED照明はほぼ全店に、太陽光発電システムは約2000店舗(2019年8月末時点)に設置されている。

環境配慮に取り組むローソンだが、課題も残る。樋口シニアマネジャーは「単に節電や省エネを訴えるだけではなく、フランチャイズのオーナー様にベネフィットを還元できるようなビジネスモデルをつくっていかなければ続かないと思っています。今後は、例えば、電力需給のピーク時に制御に協力したことで何かメリットがあるような仕組みとか、蓄電した分を自分の店舗に使用するだけでなく他に供給して売り上げにつなげるとか、新たなエネルギーマネジメントやエネルギー利用の最適化を図りたい」と話す。

言うまでもなく、実証実験に失敗はつきものだ。それでもローソンがさまざまな取り組みを続ける背景には、「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」という企業理念があるからだ。実証実験に参加し、実店舗として継続してやってみる。そうすることで国やメーカーとローソンが一緒に考え、よりよい社会に向けて何か役割を果たしていく。

環境配慮モデル店舗の展望、そしてその先にあるローソンが目指すゴールとは――。

それは「スマートエネルギーストア」だ。

樋口シニアマネジャーは、こう夢を語る。「再生エネルギーである太陽光にしても、EVにしても設備投資をかけるほどゼロエネルギーを実現できます。しかし、大事な点は持続可能なエネルギーマネジメントで、使う量を最適に抑えて、その分だけの電気を仕入れ、需給のバランスをしっかり取る。これが、今の私たちにとって目指すべきところではないかと考えています。理想は“ゼロエネルギーストア”ですが、まずは限りなくゼロに近い『スマートエネルギーストア』が目標です。日々進歩している技術やシステムを利用しながら検証を繰り返して理想の店舗を目指します」。

COLUMN

第3の省エネターゲットは複合機/プリンター

ローソンが店舗の照明のLED化や照度調整、空調の温度調整などで省エネルギーに取り組んでいるように、多くの企業で照明と空調に関する省エネルギーの取り組みが進んでいる。これらはオフィスでのエネルギー消費量の1、2位を占めるため、省エネ対策としてよく知られている。では次のターゲットはというと、エネルギー消費量で続くのがPC、複合機/プリンターだ。

エネルギー消費量3位のPCの入れ替えは、1台あたりの消費量も限られるため大量入れ替えをしなければ効果も薄い。それに対して複合機/プリンターは、より1台あたりの効果が高い。

その際考えたいのは、スピードや印刷品質と省エネ性能の両立だ。性能が高くてもエネルギー消費量が高くては、SDGs時代の企業の備品としては褒められたものではないし、逆の場合は間違いなく社員から不満が出る。

エプソンのスマートチャージは、印字プロセスに熱を使わないインクジェット方式だから、レーザー方式に比べて圧倒的な省エネルギーを実現。構造がシンプルなので、定期交換部品も少なく環境にやさしい。1分間に100枚の高速印刷と美しい印刷品質を実現しており、省エネルギーと高性能を両立している。

※ LX-10050MFシリーズA4横片面の場合。

省エネルギーと高性能を両立させた、エプソンのスマートチャージとは!? 以下をチェック!

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