人口分布やインフラ網、物流、店舗、売上高、競合他社の動向など、さまざまなデータをコンピューター画面の地図上に展開し、直感的に分析してビジネスに生かすGIS(Geographic Information System)の活用が広がっている。データを地図上に展開することで、数字を見るだけでは気づかない現象や課題を見える化できるのが魅力だ。その最新トレンドと企業の活用事例などについて聞いた。

国内で2万5000組織が活用国内で2万5000組織が活用

新型コロナウイルスの感染状況を、世界で最も正確に報告しているといわれる米国ジョンズ・ホプキンス大学のWebサイト。1日に30億を超えるアクセス数があるという(下記囲み内の記事参照)。ESRIジャパン(エスリジャパン)は、ここで使われているGISのプラットフォームを提供している米Esri(エスリ)社の日本法人だ。

GISとは、地形や地質、気象、人口分布、インフラ網、企業の店舗や売上高、物流に関する情報など、さまざまなデータをコンピューター画面の地図上で可視化し、直感的かつ深い分析を可能にするシステムのことだ。

Esri社はこの分野でトップクラスの技術と実績を持ち、「ArcGIS」シリーズとしてさまざまな製品やサービスを提供している。世界で約35万社の企業や団体に利用され、国内でもすでに約2万5000組織のユーザーを抱える。

ESRIジャパン株式会社
コンサルティングサービスグループ 部長
穐本 勝彦 氏

「当社のGISは長く使われてきましたが、クラウドGISサービスが普及したことで、一気に使いやすくなりました」とESRIジャパン株式会社 コンサルティングサービスグループ 部長の穐本(あきもと)勝彦氏は語る。

ESRIジャパンのクラウドサービスでは、人口・世帯数等の統計・推計データや気象情報、災害情報、避難場所、道路の混雑状況、衛星画像など、汎用的に使える多数のデータが提供されている。また、SNSやGPSの情報など、リアルタイムに更新されるものもある。ユーザーは必要なデータを自由に選んで地図上に重ねながら、自社のデータと関連づけて分析できる。

数字では見えにくい現象や課題を見事に可視化数字では見えにくい現象や課題を見事に可視化

国内でESRIジャパンのGISを導入している約2万5000組織のうち、民間組織は約1万ほどある。その業界や活用目的は実に幅広い。

たとえば、小売・サービス業界では、商圏分析を中心にGISが利用される。たとえば大手ドラッグストアのスギ薬局では人口分布や顧客分布、競合他社の情報などを地図上に展開し、新たな出店場所や店舗の統廃合などを検討している。

GISによる商圏分析のイメージ。
GISによる商圏分析のイメージ。
データを地図上に展開すると、さまざまな課題が浮かび上がる。

「複数のデータを地図上に重ねると、数字では見えにくい現象や課題が見事に可視化されます」(穐本氏)

商圏分析そのものは昔から行われてきたが、最近では、商圏の微細な変化をクラウド上でいち早く把握し、経営に生かしたいと考える企業が増えている。定時的な状況だけでなく、その推移を把握して商品やサービスの改善に生かす。

たとえば、全国にレストランを展開するサイゼリヤがそうだ。店舗ごとの来客数や売上高、客単価などの情報をデイリーに分析し、迅速かつ精度の高い経営判断につなげている。

一方、物流業界では、担当エリアや配送システムの最適化にGISを活用している。データを地図上に展開すると、担当エリア内に飛び地が見つかったり、非効率な配送ルートがあぶり出されるという。たとえばアスクルグループの物流会社 ASKUL LOGISTでは、配送拠点の負荷を平準化し、配送ルートを最適化している。

東京海上グループの東京海上日動リスクコンサルティングは、自然災害のリスクデータをGIS上に展開し、社内向けのWebサービスとして活用する。また、鹿島建設や大和ハウスグループのフジタでは、クラウドGISから提供される最新の災害情報と自社物件の位置情報を組み合わせ、リスク分析などに用いている。建設業界では、CADの3DデータとGISの連携がいち早く進んでいる。モノのインターネット(IoT)が発達する製造業界では、位置情報を利用したユニークな用途でGISが活躍しているという。

たとえば、本田技研工業では、開発車両の位置や稼働状態をGISでモニタリングし、開発効率の向上に役立てている。また、別のメーカーでは、製造現場にある素材や仕掛品の位置情報をセンチ単位でGIS上に展開し、倉庫内の運搬効率の向上やサプライチェーンマネジメントの強化に用いているという。

優れたコミュニケーションツールとしての活用も優れたコミュニケーションツールとしての活用も

GISは分析ツールとしてだけではなく、コミュニケーションツールとしての活用も進んでいる。数字データを地図情報に展開し、より直感的な理解を支援することで、コミュニケーションの質を向上させているのだ。

ESRIジャパンは、新製品として2020年冬に「ArcGIS Urban」、「ArcGIS Indoors」をリリースする予定だ。都市や建物内の空間を3Dモデルでコンピューターの地図上で可視化し、その中をユーザーが仮想的に移動できるようにする。これにより、建物の配置やデザイン、景観に与える影響などをリアルに確認し、共有可能になる。クラウドGISは今後も進化を続け、活用の幅が広がっていく。企業競争力の源泉として、欠かせない存在となっていくだろう。

画像をクリックで実際のダッシュボードを見る

新型コロナウイルスの感染状況をリアルタイムに表示

新型コロナウイルスの感染状況を国や地域ごとに確認できる米国ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)のダッシュボードは、数多くのメディアで取り上げられている。世界保健機関(WHO)を含む各国の保健組織からデータを集め、集計し、地図とグラフを連動して表示している。初期のダッシュボードは「ArcGIS」のクラウドサービスを使用した2人の研究者の手によってわずか数時間で完成されたという。この活動は2020年7月に行われた「Esri User Conference 2020」において「Making a Difference Award」を受賞した。

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www.esrij.com