日経ビジネス電子版スペシャル

ニューノーマルにおける人材開発・組織マネジメント|ニューノーマル時代の成長戦略 ~新たな長期的価値の創造~

ニューノーマル時代の成長戦略 ~新たな長期的価値の創造~ニューノーマルにおける人材開発・組織マネジメント

新型コロナウィルスの感染拡大で大きく変容した世界。
「ニューノーマル」の時代に企業やビジネスパーソンはどう適応し、成長戦略を描いていくのか。
日本を代表する大手企業トップ、著名有識者がライブで本音を語り、視聴者の質問にも答える、
「日経ビジネスLIVE」のWebセミナー(ウェビナー)シリーズ。
今回は「ニューノーマルにおける人材開発・組織マネジメント」をテーマに開催された議論の模様をレポートする。

こちらの動画でWebセミナーの全編を
ご視聴いただけます。

(2020年7月22日開催)

リモートワークでますます重要になっている明確な発信力と共感力 リモートワークでますます重要になっている明確な発信力と共感力

コロナ禍でリモートワークが普及するニューノーマルの時代に人材づくりやマネジメントはどうあるべきか。マイクロソフトの杉田氏が最近の気付きとして、「シニアリーダーがこれまで以上にケア、エンパシー(共感)、インクルージョン(全従業員の参画・活躍)といった言葉を頻繁に使うようになった」点を挙げた。EY Japanの鵜澤氏は、「当社の顧客企業は、働き方改革やグローバルビジネス、リーダーシップ開発といった積年の課題を加速させようという雰囲気」になっているという。

では、こういう時期にリーダーに何が期待されるのか。

「クラリティ(明瞭さ)とエナジー(元気付け)を部下に与える必要性が高まっている」と杉田氏。何を優先すべきか明確にメンバーに伝え、「大丈夫か」と気遣う配慮である。例えば会議では、初めに「最近、どう?」などの声かけが増えたほか、「会議の時間を短縮して頻度を増やし、進む方向をきめ細かく揃えていく努力が見られる」という。

佐々木氏も同感で、「リーダーがサイコロジカルセーフティ(メンバーが安心して発言・行動できる状態)に注力し、意識的に雑談を増やして解きほぐしの機会を確保している」という。ノバルティスファーマでは、2018年にカルチャー変革の一環でアンボス(UNBOSSED)という考え方が導入された。これは“Bossの除去”という意味の造語で、社員自ら主体的に考え、権限委譲を受けて自ら動く働き方だ。このアンボスがリモートワークとも相性がよく、「リーダーが方向性を示し、社員を元気付けて、目的を与えてやらせ、結果は対話しながら修正し、意欲を高めるプロセスが日常になじんできた」と佐々木氏。

「有事だからこそ、方向性のビジョンを迅速に示すのがリーダーの役割」というのは、鵜澤氏だ。ただ、焦る必要はなく、ロングタームバリュー(長期にわたる持続的価値)にも目を向けるべきだと鵜澤氏。「例えば2050年に日本が世界のリーダーに返り咲くにはどうあるべきかといった長期的価値で考えれば、今掲げるべき方針も見えてくる」と提言する。

中間管理職こそ力を発揮すべき時代に 中間管理職こそ力を発揮すべき時代に

リモートワーク時代の中間管理職不要論については、「不要どころか、中間管理職こそが社員にエネルギーを与え、明らかな方向性を示す存在」と佐々木氏。だが、リモートワーク環境下で「俺の背中を見てついてこいといった態度は通用しません。思いをはっきり言語化し、対話を通じて部下に腹落ちさせるプロセスが重要です。管理職自身も、360度フィードバックなどで“痛い矢”を受けながら自己変革を続けることも必要」と提案した。

杉田氏も「中間管理職は一層重要になります。当社では、社員のモデルとなり、コーチングして、ケアすることをマネジャーに求めている」と強調した。

鵜澤氏は、マネジャーのキャリアパスについて「役員を目指すか、専門職を極めるかという選択肢しかなかったが、従業員の価値観が変容していて、社長を目指す人もいれば、あえて遠回りしながら経験を積みたい人もいるし、今は家庭に重きを置きたい人もいる」と指摘。一人ひとりがテクノロジーを上手に生かしながらキャリアパスをカスタマイズしていく時代になり、会社側もそれに応えなければならないと提言した。佐々木氏によれば、グローバルでは、仕事自体もフルタイムだけではなく、作業を分割して、いろいろな仕事の部分部分を担いながら成長していく人も現れ始めている。

次にグローバル化時代の働き方について杉田氏は、「当社の事業エリアは国単位とは限らず、何カ国にもまたがるエリアもあり、日常業務がすでにクロスボーダーで、普段から目の前にいない人々と仕事をしている」という。当然、メンバーに明確に伝え、モチベーションを高める力がなければ仕事が進まない。その能力はリモート環境でも威力を発揮すると説明する。

鵜澤氏が勤務するEYは150カ国に26万人の社員を擁し、テクノロジーを生かしたリモートワークが日常になっている。「現在はコロナ禍で、現地・現物に触れるような体験はお預けですが、その代わり、リモートワークを通じて、プロジェクトマネジメントや業務の見える化、正確なフィードバックなど、言葉や文化の壁を超えて一緒に仕事するすべを身に付けるトレーニング期間と前向きに捉えて取り組むべき」とアドバイスする。

「人材として、学びの在り方自体を変えよう」と呼びかけたのは鵜澤氏だ。誰かが教えてくれるのを待つのではなく、自ら考えて学ぶラーニングの姿勢を社会人になる前から身に付けておきたいと提言。杉田氏は「外資系企業では学びについて個人差が大きい。社内外のリソースを活用してどんどん学ぶ人は大きく伸びる」と説明する。

最後に3人にアドバイスを求めたところ、杉田氏は、「コロナ禍は不幸な出来事だが、立ち止まって考え直し、何かを変えるいい機会。これが結局は近道になる」という。鵜澤氏は、「多くの人は一つのコミュニティにしか帰属意識がないが、一つだけでは、うまくいかないときに孤独を感じやすい。副業でも地域活動でもいいから、もう一つ帰属コミュニティを増やしてはどうか。変化のきっかけにもなる」と提言。佐々木氏は、「自分がどう思い、どうありたいのか、はっきり表明すれば、周囲から反応やフィードバックが来る。そうやって会話の絶対量を増やし、擦り合わせていく姿勢が大切ではないでしょうか」と新時代の心構えを助言した。

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