日経ビジネス電子版スペシャル

ニューノーマルにおける人材開発・組織マネジメント|ニューノーマル時代の成長戦略 ~新たな長期的価値の創造~

ニューノーマル時代の成長戦略 ~新たな長期的価値の創造~ニューノーマルにおける人材開発・組織マネジメント

新型コロナウィルスの感染拡大で大きく変容した世界。
「ニューノーマル」の時代に企業やビジネスパーソンはどう適応し、成長戦略を描いていくのか。
日本を代表する大手企業トップ、著名有識者がライブで本音を語り、視聴者の質問にも答える、
「日経ビジネスLIVE」のWebセミナー(ウェビナー)シリーズ。
今回は「動き始めた新しい消費」をテーマに開催された議論の模様をレポートする。

こちらの動画でWebセミナーの全編を
ご視聴いただけます。

(2020年7月30日開催)

コロナ禍で大きく変わった消費動向 コロナ禍で大きく変わった消費動向

コロナ禍で消費行動はどのような影響を受けたのか。アウトドア用品販売やキャンプ場運営などを手掛けるスノーピークの山井氏によれば、4月から6月半ばまで店がまったく開けず、キャンプ場も閉鎖せざるを得なかったという。そこで「“おうちでスノーピーク”と銘打って、自宅でキャンプ用品を使って楽しむ体験を提案。また、ユーザーとのつながりという意味では、オンラインでのチャットなどを充実させて、エンゲージメント(つながり強化)に力を入れた。そのかいあって、自粛が解除になった後の7月の4連休はキャンプ場も予約でいっぱいになった」という。

メイドインジャパンの衣料を販売するファクトリエの山田氏は、もともとオンライン販売を中心にしていたが、コロナ禍で店舗が休業の際には、オンラインコンシェルジュを全面的に活用し、いかに顧客との接点を絶やさないかを考えた。「もともと、当社は、提携先の工場と一緒にゼロから商品を作って売るスタイルで、クラフトマンシップを大切にするため、商品を製造する工場の名前を前面に出し、各工場の希望する価格で売っている。顧客を招いて定期的に実施していた工場ツアーは、オンライン版に切り替えて顧客とのつながりを維持した」と山田氏。

先進的な技術力で衣類やプラスチック製品などのリサイクルを手掛ける日本環境設計の岩元氏は、コロナによる変化について「これまで環境に興味のなかった人たちが、リサイクルに関心を持つようになった。断捨離した服はどこに行くのかとか、リサイクルに主体的に参加したいという問い合わせが多かった」と指摘する。

消費財メーカーのコンサルティングを多く手掛けるEY Japanの小林氏は、「消費者が流行に惑わされて消費するのではなく、自分にとって本当に大切なもの、価値あるものは何かと問い直すきっかけになった」と指摘したうえで、これにメーカーや小売りは応えていかねばならず、大きなシフトだと説明する。

今後のトレンドになりそうな動き 今後のトレンドになりそうな動き

一連の変化の中で、今後のトレンドになりそうな動きも見えてきた。山田氏は、「作り手の顔が見えることが顧客の購買理由になっている」点に気付かされたという。そこで商品を購入した顧客がウェブサイトで直接、作り手にコメントを送り、作り手がそれに返信できる機能を用意した。「5月だけでコメント数は6000件。1工場100件ほどが寄せられた計算で、工場の人たちもめちゃくちゃ喜んでくれた」という。作り手にとって大きなモチベーションになる一方、返事をもらった顧客もまさか作った本人から返事が来るとはと感激している。こうした動きについて山田氏は、「“心の温度”を求めている方が多い」と分析する。

顧客が商品の前段階や後段階まで関心を持つようになった傾向については、岩元氏も同意する。「これまで環境に興味のなかった人たちが振り向いてくれるようになった。リサイクルに出して終わりではなく、その先はどうなっているのかといった質問を多く受けるようになった」という。だからこそ、これからはリサイクル全体の流れも「見える化」して、何度リサイクルをして、今、どんな商品に生まれ変わったのかを明示することが大切になる。消費者からは今、自分が手放すものをどうしたらリサイクルできるか、リサイクルしたものがどんなすてきな商品に変わったといった情報も求められ始めている。こうした動きについて、「消費者が主体的にリサイクルに参加している実感を求めようとしているのではないか」と説明し、「消費者が主役の循環型社会を目指すことが大切」と話す。

「外に出られない日々を過ごした人々に2つの傾向が見られる」と話すのは山井氏だ。「1つ目は都市という過密空間から逃れて地方への可能性を感じる人が増えている。2つ目は、自然の力で自分の人間性を回復したいというニーズが感じられる」という。

小林氏は、「そのように考えると、消費する者と書く『消費者』という呼び方自体が古くなっている気がする。刹那的な売買ではなく、その商品がどう作られたのか、あるいは使い終わった後でどうなっていくかにも関心を持って消費行動を起こすようになっている。いわば、作り手の世界観や価値観への『共鳴者』というほうが適切ではないか」と説明する。

新たな変化に企業はどう応えるのか 新たな変化に企業はどう応えるのか

こうした消費者の新たなニーズに企業はどう応えていくのか。「サプライ側は、理念や哲学に裏打ちされたサービスを作らないといけない」と指摘したのは山井氏だ。「顧客が主体的に参加できるようなオープンなプラットフォームになる必要がある」としたうえで、企業単独だけでなく、アライアンスも組みながらムーブメントを起こしていくことも大事だと提言する。また、「物語のあるモノや精神的価値のための消費がより強まる。消費者はライフスタイルよりもライフバリューを選択していく」との展望を語った。

岩元氏は、単なる消費にとどまらず、その先のリサイクルを含めた持続可能なものづくりまで見据えた消費が本格化していく点を踏まえ、「魅力あるリサイクルの推進」を提言した。「消費者、産業界、国が協力しなければ実現しない。メーカーとしては、サステナブル素材でとにかく魅力あるすてきな商品を作り続け、楽しく演出していくことで、加速度的に循環型社会が続いていく。ワクワクするすてきな商品でないと買ってもらえないし、サステナブルな社会も成立しない」と語る。そして「今や1個のペットボトルから1個のペットボトル、1枚のTシャツから1枚のTシャツがリサイクルできるだけの技術が確立されている(*)。大事なのは、皆さんの参加だ」と訴えた。(*厳密には原料に対して9割の生産量のため、LサイズのTシャツを原料にした場合はMサイズができるリサイクル率。)

小林氏は、「心理面で変化が先行しているのではないか。20代では地方移住を考えるようになった人が増えている。都市から地方への流れだ。また、企業がどういう世界観を持ってビジネスをしているのか興味を持ち、それを応援する消費者も増えている。こういう消費者の目があることで、企業に緊張感が生まれ、ミッションなり目的なりをはっきりと掲げるようになる」と説明した。

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