日経ビジネス電子版 Special

不確実性の時代こそ成長のチャンス 転換期を迎えるスタートアップ市場

メルカリやBASE、ラクスルといった上場スタートアップにいち早く目をつけ、創業初期から投資を行ってきた、独立系ベンチャーキャピタル(VC)のグローバル・ブレイン。その特長は、徹底したハンズオン支援にある。数々の起業家と伴走し続けてきたこの20年で、EXITに導いた企業は65社、運用総額は1524億にも上る。スタートアップ支援をライフワークと捉え、さらなるサポート体制を固める同社代表取締役社長・百合本安彦氏に、スタートアップを取り巻く現状についてうかがった。

chapter 01

スタートアップ支援は生涯のライフワーク 起業家が最も輝く瞬間を分かち合いたい

——2001年からVC事業をスタートし、数多くのスタートアップ企業を育ててこられた百合本さん。この事業を始めたきっかけをお聞かせください。

銀行に勤めていた頃、スタートアップ向けの融資を担当していた時期があったのですが、そこで会う経営者はだれもが目をキラキラと輝かせ、かつ起業力やリーダーシップにあふれる魅力的な人たちばかり。彼らを支援するうちに、もっとたくさんこういう人たちと仕事をしたいと考え、これをライフワークにしようと決めました。

グローバル・ブレイン株式会社
代表取締役社長
百合本 安彦(ゆりもと やすひこ)

グローバル・ブレイン株式会社
代表取締役社長
百合本 安彦(ゆりもと やすひこ)

京都大学法学部卒業後、富士銀行(みずほ銀行)、シティバンク・エヌ・エイ企画担当バイスプレジデントを経てグローバル・ブレイン株式会社を設立し、代表取締役社長に就任、現在に至る。
自ら起業し、ネットバブル、リーマンショックを乗り越え、日本を代表するVCに育ててきた経営者としての経験を活かし、ベンチャー企業経営者の良きアドバイザーになっている。各国の政府機関、海外の各大学、VC、ベンチャー企業等と強いネットワークを保有し、投資先企業の海外進出も徹底サポート。シンガポール国立大学(NUS)ではEnterprise Global Mentorも務める。その他、出資先の社外取締役、社外監査役を兼任。

——その想いをかたちにしたのが、1998年に設立されたグローバル・ブレインですね。社内にはどんなメンバーがいらっしゃるんですか。

社員は現在60名を超え、そのうち金融出身者は3名ほど。最も多いのは、ソニーや三菱電機、キリン、花王といったメーカー企業出身で、あとはマッキンゼーやBCG出身のコンサルタント、リクルートや楽天、オリックスなど事業創出に長けた企業の出身者で構成されています。またキャピタリスト以外にも、弁護士や弁理士、会計士など、バックエンドをしっかり固めてくれるメンバーも揃えています。社員の女性比率が30%以上と、女性が活躍している会社でもありますね。

——スタートアップ経営者と親和性の高い技術系のキャピタリストを揃え、バックエンドを含めたチームで徹底的にハンズオン支援をされているわけですね。

当社では、基本的に主担当と副担当の2名で投資先企業を支援していますが、キャピタリスト個人の知見やネットワークには限界もあります。そこで、企業のニーズや成長段階に応じて各領域のスペシャリストや外部パートナーを活用し、チームとして企業の成長を支える支援チームを設立しました。「Value Up Team」もその中の一つです。この体制により、戦略立案から実行、新規事業開発、採用、IPO戦略、法務、知財、ファイナンス、PRまでの幅広い支援を実施しています。

——投資件数は年間でどれぐらいになりますか。

1年に5000案件ほど検討し、最終的に投資するのは70社ぐらいですね。決まればその後はスピーディーで、経営者にお会いしてから約1カ月半で投資を実行します。

——投資の判断基準はどこにあるのでしょうか。

事業の内容や成長性はもちろんですが、何より重視しているのは経営者本人の資質です。スタートアップは最初からうまく行くケースは少なく、大抵はピボット(事業転換)を繰り返したりするのですが、そこで資金の底が見える「死の谷」を経験することもある。そういう時期にも歯を食いしばって這い上がってくることのできる、“耐性”のある人を見極めて支援しています。

——スタートアップ支援の際に、百合本さんが大切にされていることは?

ライフワークとして始めた仕事なので、スタートアップ支援は私の生きがいでもあります。20年経った今でも楽しくてやめられません。その理由は、人生を賭けて起業するという、経営者が最も輝く瞬間をともに分かち会えるからです。その大切な時期を任せられるわけですから、我々も期待と信頼に応えていかなければなりません。同じ船に乗り、一緒にオールを漕いではるか向こう岸まで渡っていく覚悟で支援させていただいています。スタンスとしては投資家というより、伴走者。いいときも悪いときも、経営者のみなさんとは常にイコールパートナーでありたいと考えています。

chapter 02

コロナ禍に見るスタートアップの機動力 今アクションを起こせる企業は必ず伸びる

——新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、スタートアップを取り巻く状況も変わってきました。まずは御社に生じた変化をお聞かせください。

当社はスタッフや家族の安全を最優先に考え、1月末からリモートワークに移行しました。それでも業務効率や業績が低下することはなく、むしろ移動時間がなくなった分、スタートアップの面談件数は前年比180%でした。リモートワークでも十分仕事ができるとわかったので、この状況が収まったあともリモートとリアルをハイブリッドさせた働き方を基本としていく方針です。

——一方で、スタートアップ市場の情勢はいかがでしょう。

規模の小さな会社は倒れているのではないかとみなさん心配されているようですが、そんなことはありません。スタートアップは機動力に優れているので、対応がものすごく速いのです。窮地に立たされている観光業や飲食業であっても、ビジネスモデルを転換するなど機転を利かした立ち回りで生き残っています。なかにはこの状況を追い風にするところもあって、ECやeラーニング、クラウドファンディング、フィンテック、ロボティクスなどの分野は急速に伸びていますね。

——変革期をチャンスと捉えることができるのも、スタートアップの強みかもしれません。

振り返ってみれば、SlackやUber、Squareなどが生まれたのも、2008年のリーマンショックの時期。市場の転換期をうまく利用した好例です。どういうことかというと、未曾有の事態に大企業が動きを取れなくなることで、いったん市場に隙間が空くんですね。そこをくぐり抜け、一気に駆け上がることができるのもスタートアップの底力といえるでしょう。だから、先行きの見えない状況でも「座して待つ」のではなく、リスクマネジメントをしつつ、ビジネスチャンスを的確に捉えていく姿勢が肝心です。それができる会社は、必ず伸びる。起業家にとって今は最大の好機であると、私は見ています。

chapter 03

転職志望者にとってもチャンス到来! 今こそスタートアップは狙い目

——スタートアップ企業への転職を考えている人へのアドバイスをお願いします。

転職者にとっても、今はチャンス。多くのスタートアップ企業が、ここぞとばかり積極的に採用をかけているからです。また、こういう時期に入社することで、状況を打開しようと試行錯誤する経営者の姿を間近に見ることができるし、それを助けることで自分自身の力もつく。将来に資する大きな学びと経験を得るうえでも、スタートアップで働くことはものすごく良い経験となるはずです。

——スタートアップで働く魅力やメリットはどんなところにありますか。

今申し上げたように、経営者の近くでそのスキルや経営マインドを学べるというのがひとつ。加えて、スタートアップには優秀な人が集まるので、そういう人たちと働くことも自身の成長の糧となります。もし将来起業を考えているのであれば、その人たちが仲間として支えてくれるメリットもある。いずれにしても、日々めまぐるしく動き、新しいことに挑戦できるスタートアップに身を投じることは、人生の貴重な経験となるはず。若いうちにリスクテイクをしてでも、冒険してみる価値はあると思います。

——スタートアップ企業に求められる人材像について教えてください。

まず、チャレンジ精神が旺盛であること。また、スタートアップには当然浮き沈みもあるので、どんな状況でも克服できる耐性力も必要です。スタートアップ企業では、歯車のひとつではなく、重要な一戦力として働くことが求められます。それを体現するためにも、経営的なマインドをもって主体的に行動し、何が何でも事業の成長に貢献していくのだという強い意志を持ち続けてほしいですね。

——自分に合うスタートアップ企業を見つける秘訣は?

入社前に十分に経営者と話し合うことです。面接では、その会社の状況や経営方針、経営者の考え方を徹底的にヒアリングしましょう。当社の採用では、ミスマッチが起こらないよう、まず私が面接をします。そこで1時間かけていろんな質問をしてもらうんですが、そうすることで会社や私のことはだいたいわかってもらえる。どんなスタートアップを選ぶにしても、人生の一時期をその会社に預けるわけですから、遠慮することなくどんどん経営者を質問攻めにし、心底納得したうえで決めるのが賢明です。

——最後に、11月21日のオンラインマッチングイベントに向けたメッセージをいただけますか。

繰り返しになりますが、不確実性の時代といわれる今だからこそ、スタートアップにも転職希望者にもチャンスが到来しています。その好機をしっかり捉え、スタートアップ企業の成長に貢献するとともに、自分自身が大きくステップアップする転機を狙ってみてはいかがでしょう。きっと大企業では得られない、貴重な体験が待っているはずです。

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